「非正規教員」を考える

 全国の公立小中学校で「臨時的教員」と呼ばれる非正規の先生の数は約4万人、全体の7%を占めています。担任を持ったり、部活の顧問をしたりして、一見、正規採用の先生と区別ができないにもかかわらず、非正規教員は給料が低くおさえられるなど、不安定な立場で働いています。なぜこういう先生がいるのでしょうか。この問題について、読売新聞紙上で今まで取り上げてきた記事をまとめました。
archive16. 教員、保育、福祉...公務員 急増する非正規 (2017年12月14日)

 


[解説スペシャル]公務員 急増する非正規 20年給与上がらず 副業で過労


2017年12月13日 読売新聞朝刊 掲載


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 小中学校の教員だけでなく、福祉分野の相談員や事務職など全国の自治体で非正規公務員が急増している。こうした事情を受けて、総務省は初めて、自治体に年内をメドに非正規公務員の実態調査をするよう指示した。問題の背景にある実情と打開策を探った。(社会保障部 大広悠子)

 

増え続ける非正規公務員(総務省調査。ただし、雇う期間が6か月以上など一定の条件を満たした人のみ)

■クラス担任

 関西地方のある公立保育園で担任をしている非正規の女性保育士(58)は、約20年前から週5日、フルタイムで働く。雇用期間は1年。これまで約20回再雇用を繰り返してきた。地方公務員法などが非正規の期間を原則として1年以内としているためだ。

 毎年クラス担任をしているが、給与はこの間ほとんど変わらず、手取りで月17万6000円。退職金もない。近くの保育園で正規の保育士として2年目の娘に追いつかれて、処遇の低さに驚いたという。

 勤務先の保育士は14人中、12人が非正規。5クラス中、4クラスは非正規が担任を務める。女性は「格差はおかしいと思っていたが、子育てをしながらでは、他の仕事もなく、言い出せなかった。命を預かる仕事がこんな状況でいいのでしょうか」と話す。

 

■「これ以上は無理」

 給与の低さから副業をする非正規公務員も多い。

 生活保護受給者らの就労支援を15年以上続けている女性(49)は、常に3~4種類の副業をこなし、シングルマザーとして2人の子どもを育ててきた。

 公務員としての勤務は週4日。正規の週5日より1日少ないため常勤扱いにならず、ずっと手取りは月15万円にも届かない。無理がたたって倒れたこともある。「懸命に困窮者を支えながら、自分の家族も養えないなんて。これ以上働き続けるのは無理」と嘆く。

 女性と同じ仕事をする非正規の男性(53)も家族を養うため、残りの週3日、特別養護老人ホームで働く。「受給者を支援する仕事は、仕事の紹介だけでなく、借金、病気、家族関係など複雑で多岐にわたる。小遣い稼ぎの感覚で取り組める仕事ではない」と話す。

 

■厳しい財政事情

 総務省が「雇用期間6か月以上、4月1日時点」などと一定の条件を付けて調べた非正規公務員は2016年で約64万人。2005年調査の約46万人から急速に増えていた。一般事務、教員、保育士、福祉分野の相談員など職種は多岐にわたった。

 背景には、厳しい財政事情のほか、人口減少で業務の減少が見込まれることがある。こうした中、特に、福祉分野や教育分野などで新たなニーズが生まれ、人手が必要になった時に、自治体が、非正規の雇用を進めてきた。解雇が難しく、人件費もかさむ正規職員の雇用を避けようとしたためだ。

 同省は今回の調査で、雇用期間などの条件を初めて撤廃。6か月未満の人も含め、各年度中に雇用する非正規公務員すべてを対象とするよう自治体に求めることにした。

 

不自然とみられる非正規公務員の処遇の一例
(このほかに)何年勤めても、退職手当がない/年次有給休暇がない/通勤手当がない/正規より勤務時間を数分短く設定され、常勤扱いにならない

●雇用ルール 民間より遅れ

 今回の調査で非正規公務員の実態が把握できるかを疑問視する声もある。同省が示した調査項目が「雇用期間」「勤務時間」など形式的なものにとどまっているためだ。短期雇用を繰り返している人の数や、正規との仕事内容の差を尋ねるなどしなければ、実態が分からず、処遇改善にはつながりにくい。

 実際、一部で「2か月以内の雇用で、何度も再雇用を繰り返すため、厚生年金など社会保険の加入対象にもならない」、「勤務時間を正規職員より5分短く設定し、それを理由に常勤扱いをしない」といった慣行が横行している。しかしいずれも、非正規公務員の雇用ルールが未整備なために、直ちに違法とは言えない状態となっている。

 民間で働く非正規労働者を守る労働契約法は、短期の雇用を避けるよう求めている。また、働く期間が通算5年を超えると、期限のない「正規」雇用になる権利が労働者に発生するが、非正規公務員は対象外だ。

 長崎県の元臨時職員の女性が14年、県や外郭団体に雇用主を変えて6年半で計67回も短期雇用を繰り返されたのは「労働契約法に反する」などとして県を相手に長崎地裁に提訴。1審は、一部に違法な取り扱いがあったなどとして、県に約40万円の慰謝料を支払うよう命じたが、「労働契約法は地方公務員には適用されない」などとして、退職金の支払いなどの訴えは退けた。

 今年2月に和解が成立し、県が解決金50万円を支払うことになった。女性は「私たちは公務員としてだけでなく、非正規労働者としても守ってもらえない」と話す。

 現状のままでは、働く人の不利益になるだけでなく、なり手が見つからずに、結果として住民サービスの低下を招く恐れもある。

 水町勇一郎・東大教授(労働法)は「企業が非正規の処遇改善に取り組む中、『公務員だから』という理由で、何もしないのは通用しない。企業も予算が限られる中で努力している。業務を整理して無駄をなくし、必要な業務には適正な処遇とするよう、雇用ルールを整える必要がある」と話している。

 

[MEMO] 非正規公務員の実態調査

 総務省が今年8月、全国の自治体に指示した。すべての非正規公務員について、雇用期間、勤務時間、給与などを調べるよう求めている。正規と非正規の格差是正などを狙って、今年5月に改正された地方公務員法(2020年施行)などに基づくもので、各自治体は年内に結果をまとめる予定。調査結果などを踏まえ、同省は、処遇改善策を検討する方針。


 

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