「非正規教員」を考える

 全国の公立小中学校で「臨時的教員」と呼ばれる非正規の先生の数は約4万人、全体の7%を占めています。担任を持ったり、部活の顧問をしたりして、一見、正規採用の先生と区別ができないにもかかわらず、非正規教員は給料が低くおさえられるなど、不安定な立場で働いています。なぜこういう先生がいるのでしょうか。この問題について、読売新聞紙上で今まで取り上げてきた記事をまとめました。
archive14. 教育ルネサンス[7]読者の声「理不尽」「正規より立場弱い」(2017年10月20日)

 


教育ルネサンス[7] 読者の声「理不尽」「正規より立場弱い」


2017年10月20日 読売新聞朝刊 掲載


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 公立小中学校で非正規として働く教員の現状を伝えた連載「非正規教員」(9月27日~10月6日、計6回)に、読者から多数のメールや手紙が寄せられた。自らの体験に基づき、非正規教員の処遇の低さや不安定な立場の問題点を指摘するケースも目立った。

 

■負のスパイラル

 連載では、小学校で非正規の常勤講師を務めながら、教員採用試験を受けている男性が「多忙で受験準備にあてる時間がほとんどない」という事例を紹介した。

 「非正規教員になると正規教員になりにくくなる"負のスパイラル"に、私もはまった」。東海地方の40歳代の男性は自身の体験をメールで寄せた。

 大学卒業後、関東地方の公立中学校で常勤講師として働いた。正規教員と同様にクラス担任や部活動の顧問を務めながら、採用試験を受けたが、不合格が続いた。受験先を東海地方の県に変えて合格し、正規教員になったのは数年前だという。「少子化の中、教育委員会が正規教員の採用数を抑えたいことは理解できなくもないが、採用試験で不採用とした人を、一方で非正規として平然と雇用し続けることに矛盾を感じざるを得ない」と男性は訴えた。

 「長年の慣行が改まっていないのは残念」と指摘したのは、関東地方の高校に勤める男性教諭(60)だ。

 妻が公立小学校で常勤講師を務めていた30年以上前、年度末などに一時、任期切れになる「空白期間」中も、仕事があれば「ただ働きするのが当たり前だった」。子育てが一段落し、妻は数年前から公立小で常勤講師として再び働き始めたが、状況はほとんど変わっていないという。「非正規教員は立場が弱く、声をあげられない。真剣に議論されるべきテーマだ」と男性教諭は話す。

 

■研修は自腹で

 連載では、音楽や美術など特定教科を担当し、主に授業時間に応じて給料が支払われる非常勤講師も取り上げた。

 公立中学校で非常勤講師を務めた福岡県内の女性(62)は「非常勤講師は、学校の勤務だけでは食べていけず、ほかにアルバイトをすることも珍しくないが、受け持ちの授業が終わってもなかなか帰れない」と実情をつづった。

 勤務先では、若手の非常勤講師が授業時間外も残り、学校の事務作業などを手伝わされていたという。

 教員採用試験で合格を目指す場合、「学校で悪い評価を受け、試験に影響が及ぶことを恐れるため、頼まれると断れない。仕事を頼む正規教員の側も、多忙で追い詰められていた。教員の働き方改革とつながる問題だ」と女性は強調した。

 東北地方の公立中学校に勤める20歳代の非常勤講師の男性は、「正規教員と同じ職務内容でも、雇用期間や賃金に差があるのはその通り。私は『教育予算がないなら仕方がない』と割り切ることにしている」とメールに記した。

 公立中2校を掛け持ちし、専門教科ではない英語などの授業で指導の補助に入る。「研修によって自分の力量を上げ、子供たちに還元したい」と思っている。だが、非常勤講師の立場で参加できる公的な研修はなく、県外の民間の研修会に自腹を切って参加しているという。

 「非正規教員の立場が不安定では、子供たちに悪影響が及びかねない」といった意見を寄せたのは、群馬県太田市の元公立小学校教諭の大沢進一さん(69)。自身も大学卒業後の3年間、非正規教員を務めた。「産休・育休で欠員が生じた場合などに非正規の教員が必要なのはわかるが、子供たちの成長、発達のためにも、(非正規教員の)正規採用への道や生活の保障、研修の機会などに配慮はできないのか。教育は『国家百年の計』です」などと、はがきにつづった。

 

●読者から寄せられた意見・感想

 身内が教員をしていて人ごととは思えない。教員は持ち帰り残業が多く、有給休暇もなかなかとれない。さらにひどい環境があると知って驚いた。

大阪府 団体職員女性(31)

 正規と比べ、給料などの待遇面に格差があると理解して就業したとしても厳しすぎる。自分も公立幼稚園などで臨時職員として働いた経験があり、非正規の理不尽さにはあきれる。

兵庫県 保育士40歳代女性

 講師にやりがいは感じているが、授業の準備や片付け、他の教員との情報交換、成績処理や教材づくりなどの時間を考えると、最低賃金も下回ってしまうのではないか。採算を考えてできる仕事ではない。

東京都 高校非常勤講師40歳代男性

 年々、非正規の教員を見つけるのが難しくなっている。教育委員会に申請しても、なかなか見つからず、本当に苦労している。

神奈川県 小学校長女性

 保育園や幼稚園でも同様の問題は起こっている。人件費削減のため、現場では可能な限り、正規から非正規に切り替えられているといっても過言ではない。

埼玉県 保育施設職員40歳代女性

 

【公立小中学校の正規、非正規の教員】

■正規

○正規教員(約54.2万人)...教員免許取得、教員採用試験に合格

■非正規教員

○常勤講師(約4.1万人)...教員免許を取得。採用試験合格は必要なし。仕事は正規教員とほぼ同じ。クラス担任や部活動の顧問を務める場合も

○非常勤講師(約0.7万人)...教員免許を取得。採用試験合格は必要なし。特定教科の授業を担当。給料は主に時間給

 

※人数は文部科学省の昨年度調査に基づく。常勤講師は出産育児休業の代替教員除く。非常勤講師は勤務時間を合計し、週40時間勤務で1人と換算。


 

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