ぬまっち先生コラム78 号泣リレー(2)

リレーではネットくぐりで苦戦。それでも頑張って走る!(5月27日、世田谷小で)

沼田 晶弘


<<第77回 号泣リレー(1)


 

■3連勝してみせろ!


 「運動会でプロジェクトを立てるぞ! プロジェクト名は『3SW』だ!」

 3SWとは「スリー・ストレート・ウィニングス」です。フラットレースの後、運動会までに、リレーのリハーサルが2回あります。1回目は練習レース、2回目は運動会直前の予行演習です。

 「練習レース、予行演習、本番レースで3連勝してみせろ!」とボクは言いました。

 子どもたちはさっそく、勝つたびに一つずつ星を書き込めるプロジェクトシートを作って教室の壁に貼りました。言い忘れましたが、4年3組では、かつて〈5代目〉6年1組でやったのと同じ「花畑プロジェクト制」を採用しています。3連勝を達成すれば、そこに紙の花が咲くわけです。

 4年3組は昨年からの練習の成果もあり、尻上がりに強くなっていました。練習レースでは1位―2位と1位―4位。予行演習では1位―2位と1位―3位。これでプロジェクトの星二つゲット。フラットレースを入れれば破竹の3連勝です。

 彼らの究極の目標が、ただの優勝でなく、2レースとも1位2位を独占しての「完全優勝」であることは前回書きました。しかし、そのためにはABCD4チームが、すべて学年トップクラスでないといけない。実現はかなり難しいだろうと、子どもたちもボクも思っていました。しかし、勢いに乗る彼らの心の中で、その夢が急に現実味を帯びてきた。ボクも「本当にイケるかもしれない」と、期待が湧き上がってきたのです。

 

■3組に気持ちの緩みなし。しかし......


 5月27日の運動会当日は、最高気温が27度を超える暑い日でした。

 4年生のリレーは、開会式セレモニーの直後でした。4年3組の子どもたちは開会式の前から校庭で自主ウォーミングアップを始め、空いたスペースで走りこみに余念がありません。気の緩みはまったくなし。「みんな、できることは全部やってるな」と感心したくらいです。

 これまでは、いつもみんながみんな一所懸命だったわけじゃありません。友だちに引っ張られて何となく練習している子もいました。でも、1レース勝つごとにみんなの一体感が高まり、運動会当日、全員が進んでウォーミングアップするほどに、それが頂点に達したのです。

 ボクは、これから真剣勝負に挑む子どもたちを「羨ましいなぁ」と思って見ていました。と同時に、いつものことですが、カントクとしてハンパない緊張感に襲われてもいました。走れるものなら、自分で走るほうがラクだなぁと思うくらいです。

 開会式が終わり、いよいよ4年生の出番となりました。

 「さあ、行こう!」

 気合を入れるつもりで叫んだボクは、振り返って子どもたちを見渡した時、軽いショックを受けました。

 みんなの顔がガッチガチだったんです。

 

■勝利に黄信号! ボクの迷いと選択


 あれほど難しいと思っていた完全優勝が、手の届くところまで近づいた。「イケるかも!」と思うがゆえのプレッシャーに、子どもたちは襲われているのでした。

 ボクの頭の中に黄色信号がともり、二つの選択肢が火花を散らしました。

 ――ここで、このプレッシャーを少しでも解いておくべきか。

 ――それとも、自力で乗り越えさせるため、このまま放っておくべきか。

 もしプレッシャーを取り除くなら、ニッコリ笑ってこう言えばいい。

 「いーんだよ、もうここまで来たら、勝っても負けてもオレの責任だからさ! レースを楽しんでこい!」

 しかし、その時、実際にボクの取った行動は後者のほうでした。

 「頑張れよ!」

 ただそれだけ言った。子どもたちに、何も救いの手を差し伸べなかったのです。

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>>第79回 号泣リレー(3)

 

(2017年8月 7日 10:00)
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