ぬまっち先生コラム82 中学生がやってきた(1)

愛知県から珍しいお客さま。ボクの授業を熱心に聞いてくれました(5月31日、世田谷小で)

沼田 晶弘


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■愛知県からのお客さま


 5月、ボクたちの教室に、珍しいお客さまが来ました。

 愛知県の市立中学校の3年生4人。修学旅行で東京に来ていて、ボクの授業を見学したいというのです。保護者とか他校の先生とか、大人のお客さんはよく来ますが、中学生とはボクも初めてです。

 「どうしてボクの授業が見たいと思ったの?」と彼らに聞くと、「テレビで『勝手に観光大使』をやってるのを見て、スゴイ先生がいるなと思ったんです」と、女の子が答えます。

 この中学校の修学旅行には、職業体験プログラムがあって、東京で「会いたい人」や「見たい職場」を選び、実際に足を運んでレポートを書くのだそうです。生徒たちから電話をもらったのは約半年前。その後、詳細を書いた手紙を送ってきてくれて、今日の訪問までしばらくやりとりしていました。小学校を選んだのはこのグループだけとか。普段見慣れない、白シャツの男の子とセーラー服の女の子に、4年3組の子どもたちは興味津々です。

 じゃあ、いつものように、そろそろ授業を始めましょうか。

 

■直角って何で90°なの?


 1限目は算数でした。4年生になると初めて三角定規を使い、「角度」について学ぶことになっています。そこで、ボクに素朴なギモンがわいてきたのです。

 「直角って何で90°なんだろうね? 何で100°じゃダメなの?」

 いきなりのボクの根源的な問いかけに、子どもたちは「ぬまっち、また始まったよー」みたいな顔をしたのですが、それからの展開がなかなか面白かった。

 ただ、ここで詳しく説明すると、それだけで一つの章になってしまいそうなので、今回は端折ることにします。この授業については、前後の流れも含めて改めて書きますので、ちょっと待っていてください!

 

■東京観光大使に「勝手に」就任!


 2限目は社会。この日、ボクたちのクラスでは「KTKT」プロジェクトが正式にスタートしました。

 KTKTとは「勝手に東京観光大使」。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目指してやって来る国内と世界の観光客のために、東京の魅力をPRしようというプロジェクトです。5年生の社会では「日本について調べよう」ですが、4年生では「自分の住んでいる地域について調べよう」なので、「勝手に観光大使」の東京特化版というわけです。

 「みんなの先輩がやった『勝手に観光大使』では各都道府県の知事に送ったけれど、今回のファイナルゴールは小池百合子都知事と、安倍晋三総理だからね!」とボクは宣言します。「最初にやった2012年度の5年生の時も、14年度の5年生の時も、東京の『勝手に観光大使』はいなかったんだよね。4年3組が東京をチームでやればスゴイことができるさ!」。これは、ボクの本当の気持ちです。

 「今日は愛知県の中学生が来てくれています。彼らは明日、修学旅行で東京スカイツリーに上るそうです。この中でスカイツリーに上ったことのある人、どれくらいいる?」

 東京に住んでいると、いわゆる東京の観光地ってなかなか行かないものです。観光地人気ナンバーワンの東京スカイツリーに上ったことのある子どもも、意外に少ないのです。手を挙げさせてみるとクラスの3分の1程度。

 「ということは、まだスカイツリーに上ってない子は、今日中に行かないと彼らに負けちゃうわけだ! 東京に住んでるのに~?」

 ここでボクが感じてほしかったのは、「最初から東京に住んでいるキミたち」と「他の地域や外国から遊びに来るお客さん」とでは、興味の対象や行きたい場所にギャップがあるみたいだね、ということです。

 「ひょっとして、キミたち東京に住んでるのに、東京のこと意外と知らないんじゃない?」

 まずは子どもたちにこう認識してもらうことが「勝手に東京観光大使」のスタート地点です。東京に住んでいると、当たり前になりすぎていて「東京のよさ」には気づきにくい。よく、「外国に住んでみて、初めて日本のよさに気づいた!」という話を聞きますが、それと同じですね。ただし、「こうなればもっとよくなるのに」という課題は、住んでいる人はよく知っているんですけどね。

 

■コンビニが近くていいなあと思う


 せっかく地方からお客さんが来てくれているのだから、授業を手伝ってもらいましょう。

 「後ろの中学生たちにも聞いてみようよ」とボク。「東京でいいなあって思うところある?」

 いきなり振られてビックリしたと思いますが、「コンビニとか、ご飯屋とか、花屋とか、近くていいなあと思います」と、男の子の一人が答えてくれます。

 この答えが、子どもたちにとっては結構新鮮だったらしい。この辺に住んでいると、コンビニなんて数百メートルおきにあるからです。生活圏にコンビニがあまりない地域が東京以外では結構あることを、初めて知った子も多かったはずです。

 「そう、キミたちが当たり前だと思っていることが、実は当たり前じゃない。『勝手に東京観光大使』は当たり前との戦いだから、そこをちゃんと考えてね!」

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『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』

(中央公論新社、本体1400円)

 夢の豪華遠足を実現した2015年度の6年1組のエピソードを中心に、この連載コラムを大幅に加筆修正。沼田先生のユニークな授業法や教育論をたっぷり詰め込んだ、読み応えある1冊になっています!


>>第83回 中学生がやってきた(2)

 

(2017年9月 4日 10:00)
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