ぬまっち先生コラム

大好評のぬまっち先生コラムが待望の再開です! 前年度に3年3組のタンニン だった沼田晶弘先生は、4月から4年3組のタンニンに。小さな成功体験を積み重 ねて、子どもの自ら成長する力を引き出し、自己肯定感を高めていく「ぬまっち 流授業」は相変わらず絶好調。ユニークで型破りな教室に、これからの教育を考 えるさまざまなヒントが詰まっています。コラムは毎週月曜日に更新します。
ぬまっち先生コラム88 セルフラーニング(3)(2017年10月16日)

沼田 晶弘


<<第87回 セルフラーニング(2)


 

■SLAは自習のライセンス


 ボクのクラスで、子どもたちの何人かは、机の隅に「SLAカード」というものを貼っています。

 ラミネートでコートされ、ふくろうのイラストが入った、ちょっといかしたカードです。SLAとは「セルフラーニングアドバイザー」の略。要するに、友だちの自学自習をサポートする役です。ボクは1学期から、これはという子どもたちにSLAライセンスを発行しています。

 ボクは〈5代目・世界一のクラス〉の5、6年生をタンニンしていた時から、「週に一度以上、新聞記事を自分で選んでノートに貼って、サマリー(要約)と自分のオピニオン(意見)を書いて」と子どもたちに言ってきました。特に宿題というわけではなく、自分で気になる記事を見つけてね、という感じでした。

 

■MDノートは何でもノート


 ノートとは、おなじみの交換日記で使うノートのこと。3年生の時はDiscoverノートでしたが、4年3組ではMotto!Discoverノート(MDノート)と呼んでいます。

 ボクが毎日子どもたちと交わすノートは、日記だけ書いてあるわけではありません。ワードバンクや計算ドリルなどは別のノートですが、自主的に行う勉強、つまりSL(セルフラーニング)については、すべてMDノートに書くよう推奨しています。後でも説明しますが、「新聞オピニオン」や漢字練習などにもこのMDノートを使います。

 なぜかというと、あまりノートの種類を増やすと、家や学校に忘れやすくなるからです。さあSLしよう!と思った時にノートがないと、とたんにやる気がなくなりますよね。1冊にまとまっていると、ボクも子どもたちの努力を把握しやすいし、コメントもしやすい。漢字練習をチラシの裏でやるのもいいけれど、捨てちゃうと努力の跡が残りません。MDノートで練習すれば、使い終わったノートが増えて、自分の頑張りを可視化することができる。SLを頑張る子は、どんどんMDノートが貯まっていくわけです。

 彼らはノートが新しくなる度に、ばっちりナンバリングしています。1年で10冊目指す!という子もいます。もちろん、ノルマなんてありませんよ。彼らはノートを貯めることそのものに、楽しみを見いだしているんですから。

 

■新聞オピニオンのススメ


 4年3組をタンニンしてから、ボクは新聞記事を使ったSLをもっと意識してやるようになりました。最近は新聞を取ってない家も多いので、そんな子には、読売教育ネットワークが毎週会員に配信している「読売ワークシート通信」を子どもたちに配って、記事のサマリーとオピニオンをMDノートに書かせています。もちろん、新聞を取っている家の子は、新聞を読んで自分で記事を見つけてきます。スポーツ記事で戦力分析する子もいます。

 オピニオンは「意見」ですが、ただ「詳しく調べること」と勘違いする子もいます。ウィキなどから大量に引き写してきて、「だからすごいと思った」で終わったりする。「それだけではダメ」とボクは口を酸っぱくして言います。

 「調べることは確かに勉強だけれど、それは情報を受け取っただけで、自分からアクションしたことにならないでしょ」

 とにかく、記事から「課題」を発見してほしいとボクは言います。そして、その課題に対して、必ず自分なりの解決策を示してほしいと。それはムリでも不可能でもいい。自分が考えた意見であることが重要なんです。

 そしてボクは、そんな子どもたちの意見に対しては、必ずコメントやアドバイスを返すことにしています。

 

■調べ学習にハマる子どもたち


 そんなことを続けるうちに、びっくりするくらい、自分で深く調べる子たちが現れてきました。

 最近すごいと思ったのは、「台湾は日本と国交がない(国と認めていない)のに、なぜお互いのパスポートやビザで旅行できるのか」について疑問を持った子が、自分で調べて解答を見つけてきたことです。簡単に言うと、国交を管轄する外務省と、入国審査をする法務省の対応が違うからなんですが、大人でも答えに詰まるようなことを猛烈に調べる子が出てきたのです。

 また、新聞から著名人や各国の首脳が写っている写真を切り抜いてMDノートに貼り、その人物の「手」にマルをつけて、「この人は記事ではこう言っているけれど、手の動きを見ると、本当はこう考えてるんじゃないか」と推理してきた子もいました。そういう心理学的研究が実際にあるそうですが、その子はそれを知らないで、オリジナルの分析で書いている。その子に「心理学をちゃんと勉強してみたら?」とコメントしたら、本当に心理学の本を読み始めたそうです。

 そのほか、毎日MDノートに3ページもびっしり調べたことを書いてきて、親から、「そんなに調べることが好きならば、パソコンを買ってあげる」と言われた子もいました。そんな子どもたちは、学校の授業でなく、自分で勝手にテーマを見つけて、勝手に調べて意見を書くこと――SLにすっかりハマっているのです。

 

これが「SLAライセンス」と「KTKライセンス」。2枚ゲットしている子もいます

発売中!

『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』

(中央公論新社、本体1400円)

 夢の豪華遠足を実現した2015年度の6年1組のエピソードを中心に、この連載コラムを大幅に加筆修正。沼田先生のユニークな授業法や教育論をたっぷり詰め込んだ、読み応えある1冊になっています!


>>第89回

 

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