ぬまっち先生コラム

子どもの「自ら成長する力」を引き出すユニークな授業を展開し、教育界のみならずビジネス界からも注目されている小学校教諭、「ぬまっち」こと沼田晶弘さんの連載コラムです。沼田先生の教育法は、掃除の時にダンスしたり、クラス中で賞金稼ぎに挑んだり、子どもが先生の代わりに教えたりと、一風変わったものばかり。そんな型破りな教室で、子どもたちは自己肯定感を高め、自らチャレンジする力を育てていきます。その様子は2016年5月5日の読売新聞社説でも紹介されました。沼田先生が「世界一のクラス」と呼んだ6年生の子どもたちが今春卒業、沼田先生は現在、新しい3年生クラスを「世界一」にするため日々奮闘中。コラムは毎週月曜日に更新します。
ぬまっち先生コラム73 英語についてボクが思うこと(2017年3月27日)

沼田 晶弘


第73回 英語についてボクが思うこと


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♥「外国語活動」に先生は不安いっぱい

 2020年度から実施される小中学校の新学習指導要領案が2月14日に文部科学省から公表されました。あれほど焦点になっていたアクティブ・ラーニングという言葉が「多義的でまだ概念が確立していない」という理由で消えたことにはびっくりしましたが、子どもたちからは「ぬまっちがコラムで『お料理クッキング』みたいだなんて書くからだよー」と言われてしまいました。いやまさかキミたち、ボクにそんな力はないから!(笑)

 それよりも、現場の先生の関心事は、小学校3年生からに早められた「外国語活動」の方かもしれません。5年生からは教科化され、この結果、3年生から6年生までの授業時間は年間35コマずつ増えることになります。前回の質問コーナーにもありましたが、今すでにいっぱいいっぱいになっている先生たちの悲鳴が聞こえてきそうです。さらに「自分の英語力で子どもを教えられるのか」という不安も大きいことでしょう。

 

♣5年生の算数を英語でやったことがあります

 実はボク、2014年に5年生をタンニンしていた時、3学期の算数授業を英語でやったことがあります。ボクも子どもたちも全部英語で話すのがルール。

 いや、大変でした(笑)。算数って専門用語が難しいじゃないですか。ボクは一生懸命英語で説明し、どうしても必要な単語は、黒板に英単語コーナーを作ってそこに日本語を書いたりしました。子どもたちも算数だから答えはわかるんですよ。でも英語で言えない(笑)。不等号の授業で「アンサー、ファイブ、エイト、エイト、ビッグ!」とか。

 それを見ていた教育実習生(高校の英語の免許を持っていました)が感動して言っていました。「これが私たちがやりたかった授業なんですよ!」。ボクと子どもたちはお互いに「英語で伝えたい、伝えられたい」と強く思っていた。その気持ちが伝わってきたのだそうです。

 「出川イングリッシュ」ってご存知ですか。お笑いタレントの出川哲朗さんが「世界の果てまでイッテQ」という番組でやっているんですが、ほとんど英語が話せない出川さんが、いきなり外国の街角に放り出されて、人に道を聞きながら目的地にたどり着けるかどうかという名物コーナーです。出川さんと相手との会話はたどたどしいなんてレベルじゃなく、そこが笑いを呼びます。しかし大事なことは、出川さんが毎回、最終的にはほぼ目的を達していることです。まともな英語を話せなくても、相手に通じているのです。出川さんが必死に「伝えよう」としているからです。

 

♦「出川イングリッシュ」で見習うべきこと

 新指導要領案で「外国語活動」の3、4年生の目標を読むと「『聞くこと』『話すこと』を通じてコミュニケーションを図る素地となる資質・能力を育てる」とあります。じゃあ、コミュニケーションの基礎となる「伝えたい」という気持ちを育てるという意味では、小学校は「出川イングリッシュ」を見習うべき部分があるんじゃないか? とボクは思うわけです。「ファイブ、ファイブ、エイト」だって算数の授業は成立していたんですから。「うまく話せないから」と最初からコミュニケーションを尻込みするよりずっといい。

 高校で英語の偏差値が30以下だったボクが、なぜアメリカの大学院に留学することになったかのいきさつについては、『子どもが伸びる「声かけ」の正体』(角川新書)に詳しく書いていますが、正直、ボクの英語力だってひどいものでした。それでも4年間アメリカで生活し、スポーツ経営学の修士論文まで書けるようになったのは、お世話になったホストファミリーに、徹底的に言葉についての疑問をぶつけたからです。「ボクが小学生のつもりで教えて!」としつこくお願いしました。ボク自身が「出川イングリッシュ」だったんですよ。でも、その恥ずかしさを乗り越えたからこそ、生きた英語を身につけることができたと思っています。

 

♠PPAPだって最高の教材になります

 だから今、「I have a pen,I have an apple.のピコ太郎さんはすごいぞ!」と子どもたちに言うことができるんです。 have って日本の教科書的には「持つ」だけど、実に広い使い方と意味がある。「食べる」という意味もあります。だから、あの歌を活用していろいろな文が作れる。子どもたちは、楽しい曲に乗せて替え歌してるだけで、自然と英語に親しめるようになる。そういう意味では、PPAPは英語でアナザーゴールを達成するための最高の教材です。

 

♥英語嫌いを増やさないような工夫を

 ボクは小学校で英語を教えること自体に反対ではありません。そのためにコマ数が増えるのもやむを得ないところがあるでしょう。「小学生のうちにいろいろな可能性を広げたい」という考え方には基本的に賛成します。

 でも、これまでもここで何度も書いてきたことですが、小学生は、みんながみんな「勉強したい」と意欲に燃えて学校に来ているわけではありません。学んでみて楽しいなと思えばすぐにのめり込むんですけど。

 だから、これまで中学校などで普通に行われてきたような、現実にはあまりなさそうな定型の会話や、あまり使わない例文を暗記するだけの授業を小学校に前倒ししても、英語嫌いをさらに増やすだけではないかと心配になります。自分の英語力に自信がない先生が多いとなればなおさらです。新指導要領で子どもに教えたいのは、受験的な英語力というより、出川さんが発揮しているような、異文化でも通用するコミュニケーション力の方ではないですか? 小学校の先生たちを猛特訓して、みんな英語ペラペラにすればいいっていう問題でもないはずです。

 

♣先生にもっと元気に働いてもらうために

 いっそ、小学校の英語は専科にしてもいいんじゃないかとボクは思います。国立大学付属の小学校の中には全教科を専科にしているところもありますが、ベース科目はタンニンが教えるほうが良いというのがボクの意見です。実験をする理科や図工など、専門的技能が必要な科目を専科にして、他はタンニンが持てばよい。国語、算数、社会(総合に入りやすいので)はタンニンが教えたい。体育、音楽は専科にしてもいいし、得意ならタンニンがやってもいい。英語も専科オプションに含めるのです。

 そうすれば、授業コマ数が増えても先生の負担を増やさずに済みます。それどころか、今より減らすこともできるかもしれない。その時間を、授業準備や他の業務に使うことができるのです。公立校でもこうした専科オプション制度が一般化すれば、1月に報道されたように、小中学校の先生の7、8割が週60時間超の勤務なんてことにはならないはずです。4割は80時間超えというデータさえあるようです。完全に過労死レベルでしょう。これでは先生になりたい若い人も増えようがありません。今回の指導要領改訂は良い機会だと思います。文科省の方は真剣に考えていただけないでしょうか?

 

♦「カリキュラム・マネジメント」も怖くない

 新指導要領で、アクティブ・ラーニングに代わってクローズアップされてきたカタカナ言葉は「カリキュラム・マネジメント」かもしれません。でもこれも別に新しい概念ではなく、各教科を横断的に結びつける授業は、今でもやっている先生は多いでしょうし、ボクもかなり意識的にやってきています。

 そう、まさに「算数の授業を英語でやる」というのもそうだし、「何かわからない言葉があったら、どの教科であれそこで辞書を引く」というワードバンクも、国語と他教科との融合です。ほかにも、算数と体育の融合(運動会リレーです!)とか、たくさんの実践例をこのコラムで書いてきていますので、ぜひ探してみてください。


さて、今週は春の大サービス。引き続き第74回も同時更新です!

第74回 世界一になったキミたちへ《3年生編最終回》 を読む>>

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