「英語と大学教育」テーマに議論 第15回読売・大学広報懇話会(上)

第一部で対談を行うオックスフォード大学教授の苅谷剛彦さん(左)とオックスフォード大学日本事務所代表のアリソン・ビールさん(7月24日、東京都千代田区で)=米田育広撮影

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 大学関係者らの情報交換と交流の場である「第15回読売・大学広報懇話会」が7月24日、読売新聞東京本社(東京都千代田区)で開かれ、大学、高校の関係者や文部科学省の担当者、英オックスフォード大の苅谷剛彦教授、アリソン・ビール同大日本事務所代表が、大学における英語教育や、2021年1月から始まる「大学入学共通テスト」で導入される英語の民間試験などをテーマに議論を交わした。その詳報を伝えるとともに、第2部の議論に先駆け、第1部で行なわれた苅谷教授とビール代表の対談における両者の発言要旨を紹介する。

 

「英語力高める"アーギュメント"必要」アリソン・ビール氏


 

アリソン・ビール オックスフォード大学日本事務所代表

オックスフォード大学セント・ヒルダズ・カレッジ卒業。JETプログラムで来日後、18年にわたって国際交流や文化交流に従事。中国、トリニダード・トバゴ、日本でブリティッシュ・カウンシルの管理職を歴任後、2009年から12年まで、日本のブリティッシュ・カウンシル副代表。同年から現職。

 

 グローバル化によって、英語の重要性がますます高まっている。ただ、そのスキルとレベルは、その人が将来どのような職に就きたいか、どのような人材になりたいかによって、違ってくる。外交官を目指すなら、高度な語彙が必要だし、学者になりたいなら、スピーキングの能力に増して、リーディングの能力がより求められる。一般的な基礎教養にしても、英語を学ぶことで、いろいろな新しい考え方を手に入れることもできる。

 

 オックスフォード大学には、チュートリアル(個別指導)という伝統的な授業スタイルがある。学生は週に1時間、先生と1対1、もしくは学生2人に先生1人といった形で、授業を受ける。事前に課題テキストが10冊程度渡され、それを読んで自分の意見を8~10ページのエッセイとして書き、それを元に先生を相手にアーギュメント、つまり自分の意見を主張し、相手を説得し、自分の考えを発展させる。英語のスキルも重要だが、アーギュメントの力と英語のロジックがわかるということも必要だ。

 

 オックスフォードが世界の大学ランキングでトップなのは、特にそれを意識してやったからではない。長い歴史の中で、常にエクセレンスを目指してきた。一番優秀な学者、一番優秀な学生を集め、一番良い環境を整えて、学者も学生も自由に学問させたことによって自然とトップになった。日本の大学は、それぞれが目指していることを、一番エクセレントな方法で実践していくことが大事だ。

 

 

「英語と日本語のロジックの違いに気づかせる」苅谷剛彦氏


 

苅谷 剛彦 オックスフォード大学教授

1955年東京都生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了、ノースウエスタン大学大学院博士課程修了(社会学)。2008年よりオックスフォード大学社会学科・ニッサン現代日本研究所教授。専門は社会学、現代日本文化論。著書に「オックスフォードからの警鐘 グローバル化時代の大学論」(中公ラクレ)など。

 

 アリソンさんから説明があったアーギュメントは、日本の英語教育を考える際に、一つの鍵になるフレーズだと思う。課題テキストをそのまま要約するのではなく、そこに示された知識を駆使し、自分の意見、考えをまとめ、自分なりに表現することが求められる。教える側は、わざと少し意地悪い質問をしたり、理解が間違っているのではないかと仕掛けたりしたりして、学生の反論を待つ。

 

 そのようなアーギュメントの仕方は、日本人が議論や討論をするという時の論理、ロジックの組み立て方とは明らかに違う。日本語の議論は、最近の流行語で言うと、忖度の上に成り立っている。露骨な対立点を出さないで、お互いが合意できる方向に議論をもっていく。日本で英語を、大学レベルで教えるということは、そうした英語と日本語のロジックの違いに気づかせるということなのかもしれない。

 

 オックスフォード大学の当事者は、自分たちはワールドクラスの大学なのだから、ワールドクラスの問題に立ち向かっているという意識がすごく強い。世界トップの大学だから、常にチャレンジするという役割を担っていると思っている。日本の大学とは、歴史も文化的背景、強みも弱みも違っており、それを前提に置いて問題を考えないと、いくらスーパーグローバル大学といっても、世界に太刀打ちできない。

 

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(2018年9月10日 10:00)
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