私立中高一貫3校長座談会 ~問題解決能力を養う~

私立中高一貫3校長座談会 ~問題解決能力を養う~

自ら調べ 考える授業を

 グローバル化が進む社会で、知識の量だけでなく、正解のない問いに向き合う力が求められている。文部科学省は2020年度から、大学入試センター試験に代えて思考力・判断力・表現力を問う新テストを実施することを目指し、例題も公表した。アクティブ・ラーニングや、キャリア教育など独自な教育を展開する私立中高一貫校の校長3人に、問題解決能力を育む取り組みや課題について話し合ってもらった。=司会は教育コンサルタントの森上展安氏=

(この記事は2月21日の読売新聞朝刊に掲載されたものです)


 

◆対人取材 総合学習に導入

――「自ら課題に取り組み、解決する力」を育てるため、どのような取り組みを?

 

柴田澄雄(しばた・すみお) 海城中学高等学校校長。早稲田大政治経済学部経済学科卒業後、三菱商事に入社。韓国など、海外に駐在。国際教養大特任教授を経て、2015年より現職。65歳。

田中 自ら課題を解決する力というのは知識の詰め込みではなく、人間が生きていく上で必要な知性を磨く過程で得られる。そうした能力を育てるために教師は子供をよく見て、よく知ること。そして興味、感動、好奇心を起こさせる種をまいて、生徒が自ら取り組み、思考を深めていく協働的な学習にすることだ。教科領域の学習とアクティブ・ラーニングの両輪で、課題解決の力とコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、他者との違いが生まれていく。全ての教科領域、中学1年から高校2年まで行う。

 

竹鼻 課題解決の力は教科教育だけに求められているわけではない。学年の違う生徒がいる中で、お互いに刺激し合うことで、教科以外で取り組んでいる。今年度は、コイルと磁石、乾電池を利用したクリップモーターカーを作って技術者と競争するという課題に、チームを組み、取り組んだ。教師が仕掛けを作って生徒をやる気にさせる。生徒たちは楽しがってやる。そうした種まきは重要だ。

 

柴田 問題解決能力は、次の六つの作業を可能にする能力の統合体と考える。「問題の発見」「課題の設定」「情報収集」「分析、熟考」「価値評価、判断」「表現」。代表的な取り組みの一つは、社会科の総合学習だ。毎学期、あるテーマについて一連の作業を行い、中学1、2年を通して6回リポートを書き、中学3年で卒論を書く。必ず対人取材、フィールドワークをする点がポイントだ。偏った価値評価に陥らないよう、プレゼンテーションや討論で他者の意見を聞いてバランスを取る。さらには、チームで問題を解決する体験学習にも取り組み、コミュニケーション能力やコラボレーション能力を高めている。

 

田中 例えば、社会科であって社会科でない学習。史実を生徒が調べて再現動画などを作成、オーストラリアや米国へ修学旅行に行った時、その成果を発展させ英語で発表するなどの取り組みだ。社会科で得た見識を英語で発表しディスカッションする授業がそれを支えている。

 

竹鼻 教科の中で課題解決の力をつける例として、中学1年生の場合、冬休みの数学の宿題に「算額をつくろう」というコンクールがある。絵馬に問題作成から解法まで書いて、数学全体を見渡すもの。図の色にも女子特有の工夫を凝らし、取っかかりは良い。中学の幾何の授業では、グループ学習・反転授業が行われている。生徒同士の学び合い、教え合いを重視、解法や考え方の多様性を感じさせるのが目的だ。

 

 

◆「アカデミック・デイ」で各自が研究・報告

――アクティブ・ラーニングの課題と展望は?

 

竹鼻志乃(たけはな・しの) 豊島岡女子学園中学校・高等学校校長。筑波大第二学群生物学類卒。民間企業を経て、母校の豊島岡女子学園中・高の理科教諭となり、2013年より現職。49歳。

柴田 先ほど説明した取り組みで、もう少しグローバルな課題に展開することや、グローバルな取材をさせたい。その際、これからはアジアの時代だと思うので、欧米だけでなくアジアへの関心を広げる機会を増やしたい。

 

竹鼻 今年度からアカデミック・デイというのを設けて、希望する生徒が各自で決めたテーマで研究して報告するという、刺激の場をつくったが、それを続けたい。それには教師の高い指導力が必要だ。教師も学ぶことが好きで、生徒とともに学んでいく、成長していくという雰囲気が学校全体にあるといい。

 

田中 本校のアクティブ・ラーニングは、部活、教科、「20年後の履歴書」を書かせるなどのキャリア教育、宿泊を伴う校外アクティブ・ラーニングの4本柱である。自分が好きなものを研究して知識と課題を広げ、解決していく活動だが、それを展開していくと、私たち教師は解決する力を育てるため、逆に知識がもっと必要になると気づいた。

 

柴田 アクティブ・ラーニングは、授業だけではない。部活動や学校行事、地域活動にも積極的に生徒が参加し、多様な人間関係をつくることが学びの意欲につながる。

 

 

◆身近な課題を解決しどんな世でも生きていける人材を育てたい

――2020年度に導入の新テストをどう考えるか?

 

田中淳子(たなか・じゅんこ) 栄東中学校・高等学校校長。同志社大英文学科卒。通訳、京都市・静岡県・埼玉県の公立中英語科教諭、埼玉県公立中校長などを経て、2008年より現職。75歳。

田中 公表された英語の例題は、英語が読める、書ける、聞ける、話せるだけではなく、普段からさまざまな角度から幅広い知識を得ようとしていないと解けない。新テストでは、思考力を必要とする問題を増やしたらいいとは思うが、2次試験で、各大学がアドミッションポリシーに合わせた特色ある入試問題を作成し、自分の大学で育てたい子供たちを選抜するというやり方に賛成だ。

 

竹鼻 英語は4技能測定型の外部試験を利用するシステムを作ってくれるといい。数学の例題は、自然現象を扱う問題で非常に面白い。数学、理科、音楽、芸術などが絡んだ問題もできると思う。

 

柴田 国語、数学、英語といずれも、バランスの取れた非常にいい問題だ。その中で、国語の三つの例題に関しては、PISA(国際的な学習到達度調査)読解力テストの記述問題に通じる例題も提示されていて幅の広さを感じた。

 

――中高一貫校は子供の成長を長い間みるのが特徴だ。どんな子供に来てほしいか。

 

司会 森上展安(もりがみ・のぶやす)

柴田 どういう子供を求めているかというより、どういう子供を育てたいというのはある。一番は、余裕を持っている子、伸び伸びしている子を育てたい。しなやかな、そしてユーモアを持っている子。グローバル社会で圧倒的に日本人に足りないのはユーモアのセンスだからだ。

 

田中 身近な課題を解決していって、それがよりどころとなって、どんな世でも生きていける、そういう人材を育てたい。そのために実社会に出て対応できる知識の量も増やしたい。

 

竹鼻 女子校だが、しなやかにたくましい子に育ってほしい。自分が思うように生きられる基礎・基本となる力を身につけさせたい。どんな逆境にも、「こんな勉強をしてきたから大丈夫」と思える自信を育てて送り出したい。

 

◆「楽しくやる」を大切に

 アクティブ・ラーニング(AL)を長年実践している京都造形芸術大の本間正人教授に聞いた。

 自ら主体的に学ぶアクティブ・ラーニングは、文部科学省が学習指導要領に入れて注目を集めているが、背景には二つの要素がある。圧倒的に一方通行の授業が多く、子供たちが受け身になっているのに対し、「主体的な人間」を要請する産業界の声がある。二つ目は、授業が加速度的にeラーニングにとって代わられていることだ。一方通行の授業もeラーニングも、知識を効率よく伝授するが、思考力やコミュニケーション能力が伸びるのか、探究心や好奇心が満たされるのか、極めて疑問だからだ。

 一方通行の授業を減らし、ディベートやロールプレイ、体験学習などを取り入れようという動きは、ALの形式的な導入だが、アクティブ・ラーナーをつくるという表現はおかしい。本来の目的は「そもそも人間はアクティブ・ラーナーだった」ことを再発見するところにある。そのためには「楽しくやる」ことが鍵になる。

 

◆3月20日 進学相談会

 読売新聞東京本社は、受験を控える小中学生や保護者向けに中学・高校進学相談会「よみうりGENKIフェスタ2016」(特別協賛・SAPIX、協賛・家庭教師のトライ、大和証券、花王)を開催する。

 首都圏を中心とした約200の中学・高校が参加し、個別の進学相談に応じる。開成中学校・高等学校校長の柳沢幸雄氏による講演、日本テレビアナウンサーの鈴江奈々さんらによるトークショー、2016年度の入試分析をはじめとするセミナーなど多彩なイベントを行う。詳細は特設サイト>>で。

 

【日時】 3月20日午前10時~午後4時(入場は午後3時30分まで)

【場所】 東京ドームシティ・プリズムホール ※昨年と会場が異なります

【お問い合わせ】 よみうりGENKIフェスタ事務局(電話03・3360・6008=平日午前10時~午後6時)。

(2016年2月29日 14:30)
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