大学入試改革で中高の学びはどう変わる~読売グローバル教育フォーラム(上) 基調講演

第一回 読売グローバル教育フォーラム 「大学入試改革で中高時代の学びはどう変わるか」

 教育を取り巻く現状や課題について読者と共に考える「読売グローバル教育フォーラム」が、5月11日、東京・大手町のよみうり大手町ホールで開催されました。

 第一回のテーマは、「大学入試改革で中高時代の学びはどう変わるか」。

 これは、昨年12月に文部科学省の中央教育審議会がとりまとめた答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(以下、「高大接続答申」)を受けたもので、有識者による講演とパネルディスカッションを実施。活発な議論が交わされ、約700名の聴衆は熱心に聞き入っていました。(主催:読売新聞東京本社広告局 /特別協賛:SAPIX)


 

■基調講演

「21世紀における高大接続の在り方について」

 鈴木 寛 氏

 東京大学/慶應義塾大学 教授(文部科学大臣補佐官)

 

 OECDでは15歳を対象とした学習到達度調査(PISA)を実施しています。一時期、日本の生徒の成績が低下し、「PISAショック」として話題になりましたが、2012年の調査では34加盟国中、読解力と科学的リテラシーが1位、数学的リテラシーが2位で、総合1位に復活しています。このように世界トップの21世紀型学力を備えている15歳を、その後の高校・大学で伸ばしきれているのか。「高大接続答申」はその問題意識に端を発しています。

 

 私は、書を読み、友や師と語り、仲間と何かを為すことに、青春のエネルギーを注ぐのが、高校・大学生活のあるべき姿だと考えています。

 ところが、小学生は1カ月に平均11冊読んでいるのに、高校生になると1.6冊です。1カ月に1冊も本を読まない生徒の比率は、小学生は3.8%ですが、高校生は48.7%にのぼっています。

 また、中学校では、生徒同士が話し合い、調べ、まとめて発表する授業が充実しています。けれども、本来、「熟読・熟議」が重要なはずの高校で、そうした活動が十分に行われていません。

 その結果、現行の学習指導要領で「基礎的な知識はもとより、それを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力」の養成が謳われているにも関わらず、その力が不足しているのが実状です。

 

 もちろん、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)、SGH(スーパーグローバルハイスクール)の指定校をはじめとして、グループワーク、ディスカッション、調査研究、プレゼンテーションなどを充実させ、仲間と共同して問題を解決する力を育んでいる高校もたくさんあります。けれども、それがメインストリームになっていないのです。

 

■丸暗記、マークシート偏重からの脱却をめざす

 その最大の要因は、多くの受験生が受ける大学入試が丸暗記、マークシート偏重になっていることです。最低限の知識を問うことは大切で、けっして全面否定はしませんが、それに偏りすぎている状況を是正したいのです。

 1つ具体例をあげましょう。日本学術会議では、歴史用語の暗記力を問う出題形式を改め、歴史的思考力を試す論述式の出題を増やすことを提言しています。その背景には、大学入試で出題される重要用語が、20~30年前の約2000語から、現在では約4000語に増加しているという事情があります。知識を詰め込まないと対応できないようでは、書を読み、友と語る時間がとれるはずもありません。

 

 ですから、新しい大学入試がめざす方向性は、一言でいえば「脱丸暗記」ということになります。一定の暗記は必要ですが、単純に暗記した知識を吐き出すのではなく、文脈や、問題解決の中で知識を再構築する力を問うべきです。その意味で論述式の試験が有効になるでしょう。

 また、マークシートの弊害は、与えられた選択肢の中から選ぶ勉強ばかりしていると、それ以外の選択肢をひねり出したり、自分なりの論を立てたりといった力が高まらないということです。大学入試で論述式の試験を増やすとともに、高校の授業でも、仲間と議論する機会が豊富に設けられることを期待しています。

 

 なお、今回の改革の大きな特色は、高校教育、大学入試、大学教育の一体的改革をめざすという点です。たとえば、高校でアクティブラーニングを推進しても、大学の授業が従来通りだったのでは、何の意味もないからです。各大学がアドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)を明確に示し、それに則した入試を行い、答申に掲げられた「確かな学力」を、高校・大学が一体となって高める──そんな改革を推進していきたいと考えています。


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(2015年7月 8日 14:45)
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