就活ON!〈3.記者コラム〉公衆電話 ひっそりと

最近見かけない公衆電話。昨年、行方不明の少女が助けを求める際に使い、その価値が見直されもした

vol.3 〈記者コラム〉


公衆電話 ひっそりと


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 めっきり数が少なくなり、その存在を気に留めなくなってしまった公衆電話。

 

 ピークだった1985年には、全国に93万台ありましたが、昨年3月時点では17万台に。就職活動中、自宅以外から電話をかける際は、「周囲の雑音が入りにくい公衆電話ボックスが望ましい」というアドバイスを目にし、かつての記憶がよみがえりました。

 

 携帯電話が普及していない頃、財布には当たり前のようにテレホンカードが入っていました。待ち合わせ時刻を過ぎても友人が現れない時、駅の公衆電話から友人宅にかけて確認しました。すぐに連絡を取り合えないので、今よりも「時間厳守」でした。

 

 親に聞かれたくない話は、相手とあらかじめ時間を決め、近所の公園の公衆電話ボックスからかけたという記憶も。特に公衆電話ボックスは、外の世界と遮断された狭い空間で、他人に声を聞かれる心配がない。不思議と落ち着いた気分になれました。

 

 一番の思い出は、高校3年の大学受験の時です。どうしても行きたい大学があり、その大学だけで5学部を受験しました。しかし、次々と突きつけられる不合格の事実に、家族と顔を合わせるのを避け、部屋に閉じ籠もるようになりました。食事も皆が寝静まった後に冷蔵庫をあさって空腹をしのぐだけ。

 

 

 最後の合格発表の日も、掲示板に私の受験番号はありませんでした。自分の口から親に報告しなくてはならないが、自信がない。最寄り駅に着いたものの、足は自宅に向かない。改札前の公衆電話ボックスに逃げ込むように入りました。

 

 「落ちました」――。冷たい受話器を握り締め、このひと言が精いっぱいでした。「そんなことより、ご飯食べてるの?」。母は息子の合否よりも体調を気に掛けていました。帰宅後、久しぶりに温かい食事を口にしました。

 

 あの当時、ケータイを持っていたら、私の思い出はどのように変わっていたのでしょうか。

(就活ON!担当 松本将統)


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(2017年2月 1日 17:00)
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