就活ON!〈4.学生コラム〉時給と誇り

大学のトイレ。意外にきれいです。

vol.4 〈学生コラム〉


時給と誇り


題材記事:12月24日朝刊経済面「アルバイト・パート 平均時給1000円超」


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 観光施設のトイレ掃除は簡単ではありません。

 

 私は大学1年から3年近く、都内の観光施設でエレベーターボーイのアルバイトをしています。主に窓から見える景色を案内するのですが、繁忙期には清掃員が足りず、トイレ清掃も行います。場所によっては1時間に3回、ピンク色のゴム手袋をつけて見回り、消毒液で便座や手すりを磨きます。便器の汚れがひどい時は、ブラシでゴシゴシこすります。床に飛び散った液体は手にした雑巾でふき取ります。お客さんから、赤ちゃんの使用済み紙オムツをそのまま手渡された事もありました。

 

 昨年12月24日の読売新聞朝刊の経済面(東京本社版)に、首都圏や関西、東海地方で11月のアルバイトやパートの平均時給が1000円を超えたという記事がありました。平均時給が上がった理由は「人手不足が続いている上、年末の繁忙期に向けて賃上げして人員確保する動きが強まった」からだそうです。 人手不足は、私も実感しています。昨年、バイト先の更衣室には「12月24・25日は時給アップ」と、赤字で書かれた張り紙が出されていました。(結局、クリスマスイブの夜は、普段10人程度いるアルバイトが、私を含めて5人しか出勤しませんでした...)

 

 繁忙期になると、修学旅行の学生や家族連れで、トイレにも長い列が出来ます。2015年の春休み、私は男子トイレの個室で便器を磨いていました。清掃を終え、扉の外に出ると、若い男性に「うわっ、よくこんな仕事やれるな」と、ひどい言葉を吐かれました。聞こえない振りをして、すぐに立ち去りました。でも、悔しくて泣きそうでした。

 

 数日後、地下鉄のトイレを利用した時の事です。掃除の行き届いたトイレで、小便器の前に立つと、目の前に貼り紙がありました。「いつも綺麗にトイレを使ってくださり、ありがとうございます」。横には空き瓶に白い花が刺さっていました。清掃員が一生懸命、床や便器を磨いている姿が目に浮かびました。普段私たちが気持ちよくトイレを使えるのは、清掃する人の働きがあってこそ。そう実感してからは、トイレ掃除に誇りを持って取り組めるようになりました。掃除をした後、笑顔で帰るお客さんを見るとホッとします。

 

 時給が高いバイトは、ほかにもたくさんあります。けれど、私が3年間もこのバイトを続けてこられたのは、人の役に立っていることを実感できる職場だったからです。時給が上昇するのは嬉しいニュースです。でも、現場が人手不足にならないためには、時給を高くするだけでなく、やりがいや誇りを持てる職場環境にすることも大切だと思います。

(日本大学4年 史成)


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(2017年2月10日 12:00)
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