<コラム>「ありのまま」を映す再履修

大学を専門に取材する記者のコラムです

 

 電車内などでオープンキャンパスの広告が目に付く季節となった。名物教授による模擬授業などが多い。それ自体、意味なしとは思わないが、オープンキャンパスはあくまで「お祭り」。大学を知るには、やはり日常の「ありのまま」の姿を見てもらいたい。「大学の実力」調査によると、通常の授業を公開する大学は33%。ほぼ100%の大学が催すオープンキャンパスに比べれば、少数派だ。インターネット上での講義の模様の配信となると、さらに少ない6%。晴れ着は見せても、普段着にはためらいがあるのだろうか。

 

 通常の授業の中でも、その大学の「実力」を雄弁に物語るのは、単位を落とした科目を再び受講する「再履修」の授業だろう。学習意欲が乏しい学生に力をつけるための大学の熱意と工夫が一目でわかる授業なのだ。中でも、英語の授業見学をお勧めしたい。

 

 「英語力がつく」を看板にしているある大学は、新入生を習熟度別にクラス編成している。ところが再履修クラスでは、レベルが異なる学生を同じクラスにまとめ、同じ教材で非常勤教員に受け持たせる。いきおい、各々の学生がどこでつまずいているか把握できないまま授業が進むことになり、学生のやる気にスイッチは入らない。「とりあえず単位が取れれば......」というつぶやきを聞いた。

 

 一方、ある私立大学では非常勤の女性教員が「歌って踊る英語」を展開していた。両手でハート型をつくり「love」、大きく両腕を振って「walk」といった具合に、初級の単語や文法を体全体で覚えさせる授業。教材は手作りプリントで、受講者の名前や趣味も問題文に引用するキメの細かさだ。解ければ、「○○君、できるじゃない」と旧知の間柄のように褒められる。「この授業で初めて英語が面白いと思った」と言う男子学生は、今では街角で外国人に話しかけ、英語力の向上を図るようになったとか。「学生はみんな学びたがっている。その方法がわからないだけ」と教員。

 

 新学期が始まった。受験生に見学をお勧めできる再履修の授業はないか。すてきな出会いを求めて、また大学を歩こう。(専門委員 松本美奈)

(2015年4月10日 15:00)
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