<コラム>「とりあえず進学」はつまずきやすい

大学を専門に取材する記者のコラムです

 

 8回目を迎えた読売新聞「大学の実力」調査では、初回の2008年以来、退学率を掲載している。大学選びに当たり、4年間(医、歯学部などは6年間)の学生生活が具体的に想像できるという点で、偏差値や知名度などよりはるかに重要な参考データだと考えるからだ。

 今回調査によると、退学率の全体平均は8%で、3%台の国公立に対し、私立は10%と高かった。つまり10人に1人が退学していることになる。せっかく入った大学を、どういう人がどんな理由で去っていくのだろう。

 

 それについて、厚生労働省所管の独立行政法人、労働政策研究・研修機構が興味深い調査をまとめている。2014年8~10月、ハローワークを利用した40歳未満の大学などの退学者約1000人に理由を聞いたところ、 半数以上の人が「勉強に興味関心が持てなかったから」と答え、しかもその大半が「目的はあまり考えずに、とりあえず大学に進学」したと明かしたというのだ。

 確かな目的があるわけでもない受験生は、とりあえず大学に進ませたい親や高校の思惑、事情が相まって入学したものの、結局、学ぶ意欲がわかず、つまずき、道を見失って退学する。同じ調査で、正社員の経験の有無を尋ねたら、20歳代前半の男性で経験者は33%、女性17%。20歳代後半でも男性47%、女性38%に過ぎなかった。同機構が12年に行った調査では、大学や大学院を卒業した20歳代の6割が正社員に定着している。退学者の低い数字は、新卒一括採用が一般的な日本で、さらに2人に1人が大学進学を選ぶ時代にあって、世間の風当たりが相当に厳しい実態を物語っている。それは、調査への自由記述にも如実に表れていた。

 

「経験や能力があっても大卒でないため、応募できないことがあった」(32歳男性)

 

「中退=仕事もろくに続けられないのではという先方の思いが見て取れるような企業もあり、大学中退より高卒のほうが有利なのだと思い知らされた」(28歳女性)

 

「世間のイメージが想像以上に悪い。就職活動では高卒より下に見られる」(22歳男性)

 

 では、過酷な現実にどう対処すべきか。未来は霧の中の18歳に、「目的意識をしっかり」と言ってもおのずと限度はあるだろう。そこで、大学の出番となる。

 「とりあえず入学」の学生をまずはありのまま受け止め、さまざまな工夫でその心に火をつけようと奮闘する教職員は少なくない。次回から、そんな現場の「実力」を紹介していきたい。(専門委員 松本美奈)

(2015年7月10日 10:00)
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