「ものづくり教育」車の開発で連帯感と向学心 山口東京理科大学

2013年に製作したレーシングカーを囲み、大会に向けた戦略を練る貴島教授(前列右から4人目)と学生たち(2014年2月26日、山口東京理科大で)

工学の深さ知り充実の日々

 授業も終わり、学生の姿もまばらなキャンバスで、一際存在感を示すオレンジのレーシングカー。冷たい雨の音をかき消す、力強いエンジンサウンドが、腹にズシンと響いた。

 2014年2月下旬、山口東京理科大学(山口県山陽小野田市)にある「ものづくり工房」。様々な工業機械をそろえた作業場に学生15人が集まり、9月に開かれるカーレース「全日本学生フォーミュラ大会」に向けて黙々と作業に打ち込んでいた。


 工学部を持つ同大に、学生フォーミュラチームが結成されたのは10年。マツダでスポーツカー「ロードスター」の開発を担当し、熱烈なファンを持つ貴島孝雄氏が、教授に呼ばれたのがきっかけだった。

 「車をつくってみないか」。貴島教授が誘った。ものづくりの楽しさを知ってもらい、社会で即戦力として活躍できる技術者を育てよう。そんな思いに応え、学生たちが次々に集まった。

 出走する車の設計から製作まで学生が行うのが、大会のルール。教員は工学の知識などを指導できるが、車両の設計・製作を手伝ってはいけないと厳格に決められている。単に速さを競うだけではなく、製造コストに関する1000ページものリポート提出が求められたり、販売する場合の戦略のプレゼンテーションも課されたりするなど、ものづくりの総合力が問われる。

 基本的に課外活動で、大会前は徹夜の作業が続く。授業やアルバイトとの両立の難しさから、途中で脱落する学生も少なくない。

 「何度も失敗を乗り越え、大会で勝つという目標をチームで共有できた時、学生は自ら学ぶようになる」と貴島教授は語る。


 13年の総合成績は、参加77チーム中57位。チームリーダーだった森崇裕(たかひろ)さん(機械工学科4年、当時)は「目標の35位以上が達成できず、ショックだった」と悔しさを隠さない。森さんは第1志望の国立大に落ち、同大に進学。やりたいことが見つからず、漫然と学生生活を送っていた時に学生フォーミュラに出会ったという。

 「就職活動もしながらチームをまとめるのは大変だったが、やればやるほど分からないことが増える工学のおもしろさを知った。今はこの大学で良かったと思っている」。きっぱりと言い切る姿がすがすがしかった。

 「チーム内の役割分担を通して責任感が身についた」と話すのはサブリーダーだった荒巻秀治さん(同)。仲間たちと困難を乗り越える濃密な日々を、満足げに振り返るその姿から、「アルバイトばかりしてはバイクにつぎ込んでいた高校時代」を想像することは難しい。

 森さんからチームリーダーを引き継いだ石本和聖(かずきよ)さん(機械工学科3年)は「リーダーという器ではないと思うが、引き受けた以上は責任をもってやりたい。完走して総合成績30位以内を目指す」と話し、静かに闘志を燃やした。

 レーシングカー作りという仕掛けが、学生たちの学ぶ意欲に火をつけ、大きく成長させている。(保井隆之)


(その後)リーダーの役割実感 2014年の成績は>>


全日本学生フォーミュラ大会 学生にものづくりのおもしろさや厳しさなどを実感してもらおうと、自動車技術会が2003年から開催する。学生が企画・設計・製作したレーシングカーを、走行性能だけでなく様々な観点から評価。審査種目には①車検、②静的審査(コスト、デザイン、プレゼンテーション)、③動的審査(加速試験、周回路走行など)があり、総合得点を競う。

(2015年1月28日 09:29)
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