スタートは「なぜ大学」 ~「大学の実力2016」から(1)

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Q(受験生パンダ):「大学の実力2016」を見たよ。一覧表に数字がたくさん並んでいて驚いた。で、基本的なことだけど、ここからどう選んだらいいの?

 

A(大学レンジャー):そうか、基本的なことを忘れていたね。きちんと説明しなくてごめんなさい。まず、あなたはどうしたいの? そこから考えよう。

 

Q:食べることが好きだから、食べ物に関する勉強がしたいなあ。

 

:もっと具体的にイメージしてみて。栄養士さんかな。世界から珍しい食べ物を集めてビジネスにするのかな。それとも食べ物の安全を守るのかな。そこからさかのぼってして、夢を実現するために何を学んだらいいのかを考えていくんだよ。

 

Q:どんな学部で学ぶかを考えるんだね。

 

:そうだよ。いくつか候補が上がってから、この「大学の実力」データを使うといいよ。 実はパンダさんのように、「とりあえず進学」と決めてはみたものの、選べなくて困っている受験生は多いんだよ。

 

Q:あ、前に聞いた、学部の名前が多すぎるってことだね。

 

:そうなんだ。学部の名前は難しいし、入試方法はいろいろあって、なかなか選べない現実があるんだよね。だからこそ、「なぜ大学なのか」、そこが問われるんだよ。

 

 そんな人たちのために、二人のプロに助言してもらったんだ。まず日本学術振興会理事長で慶応義塾元塾長の安西祐一郎さん。2020年に行われる大学入試改革に取り組んでいる先生だよ。

 もう1人は、全国高等学校進路指導協議会の事務局長、千葉吉裕さん。たくさんの生徒たちと向き合っている、進路指導の大ベテランだ。

 

エネルギーぶつける場所を探す

安西祐一郎さん 69

日本学術振興会理事長 慶応義塾前塾長、中央教育審議会前会長

 

 大学を選ぶのなら、まず自分によく問いかけてください。なぜ大学か、と。

 私?自分をぶつける場所を探していたのです。高校時代はそれが見つからず、記憶にぽかんと穴が空いている。エネルギーは有り余っていたのに、夜ごと、天体望遠鏡で星を眺めている自分しか思い出せないぐらい。

 もともとは、エネルギッシュな子どもではなかったのですよ。小学校時代は、丸っこくて、ぼーっとしていた。走るのが遅いから、運動会がいやでね。

 中学校では一転して、学級委員を引き受け、剣道部に入ったことで急に自信がつきました。そうなると、勉強も楽しくなるんです。特に英語には力を注ぎました。日本は世界と肩を並べる日がきっと来ると思って。毎日、日本の昔話を英語に訳したのです。「桃太郎」とかをね。文法の力がつきました。

 大学では応用化学を専攻しました。星を見るうちに、科学にあこがれるようになっていたので。学問とともに、4年間、ラグビーの練習にも打ち込みました。地べたをはい回る練習はきつい。それでも朝4時には起きてリポートを仕上げ、9時の締め切りに間に合わせるといった全速力の日々でした。

 つらくて、何度も「もうここまで」と思いました。でも、やめなくて良かった。ぶつける場所を見つけ、限界を一つひとつ乗り越えた経験が、社会に出てからの自分を支えてくれたと確信します。

 自分の現状に満足していない人にこそ、大学を目指してほしいと願っています。大学で自分を磨いて、未来を切りひらいて幸せをつかんでほしい。そんな人たちのための大学・高校教育、入試の改革です。応援しています!

 

「入学したつもり」で時間割づくり

千葉吉裕さん 54

全国高等学校進路指導協議会事務局長、東京都立晴海総合高校教諭

 

 大学選びは、自分を知ることがスタート地点です。変化の激しい時代、自分はどう活躍したいのか。そこから逆算して、自分を成長させることができる大学を、自分で選んでください。

 大学を調べるのは、その次です。おすすめは「擬似入学」。その大学に入ったと仮定して、実際に時間割を組むのです。

 大学は高校までと違って、自分で時間割を作ります。どんな科目があるのか、大学のホームページでシラバス(授業計画)を確認しましょう。自分は何をしたいのか考えながら作ってください。受けたい授業が少ない大学はやめた方がいい。シラバスが見あたらないような大学もだめ。この程度の情報公開ができない大学は、要注意です。

 次に、実際に授業を見に行きましょう。直接行っても、事前に電話をしてもいい。その時の大学側の対応も要チェック。いずれにしても「見せられない」という大学は勧めません。

 いくつか候補が出てきたら、入試方法別の退学率や卒業率、就職の状況などのデータを見比べて。ここで最後の選別をします。

 「入れる大学」ではなく、「入りたい大学」を選んで、人生の幅を広げてほしいと願っています。

 

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>>「大学の実力2016」(中央公論新社)はこちらから

 

(2015年10月 7日 12:25)
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