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開催迫る!「AI時代に生きる 私たちの命」溝上敏文氏・宮野 悟氏 プレ・フォーラム報告(1)(2019年6月20日)

 医療と先端テクノロジーが融合した未来には、どんな世界が広がっているのか――。7月6日(土)に開催されるフォーラム「AI時代を生きる 私たちの命」では、渋谷教育学園渋谷高等学校(東京)と大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎(大阪)が10代代表として発表する。2校の生徒たちは、フォーラムに登壇するAIとゲノム解析のスペシャリストや、臓器移植コーディネーターの出前授業を受けて発表の準備を行っている。

 

>>フォーラム「AI時代を生きる 私たちの命」の詳細、参加お申し込みはこちらから

 

溝上さんの授業は「難しくて、面白い」。必死についていった生徒たちだが、笑顔も!

 

未来は、もはや過去の延長線上にはない


溝上敏文 氏(日本IBMワトソンヘルス事業部長)

@渋谷教育学園渋谷高等学校(東京)

 

 フォーラム「AI時代を生きる 私たちの命」に先がけて5月18日、東京・渋谷にある渋谷教育学園渋谷高等学校で特別授業が行われ、フォーラム参加を希望する1年生38人が参加した。

 講師はAIのスペシャリストとして招かれた日本IBMワトソンヘルス事業部長の溝上敏文さん。日本IBMは現在、東京大学医科学研究所と提携してAIを使った「がん最適治療法」の臨床研究を進めている。

 

■医療の未来を変えるAI

 2007年、アメリカのクイズ番組で人間のクイズ王に勝利して一躍有名になったIBMのAI「ワトソン」。日本でも金融や法曹など幅広い分野で導入が進み、新卒採用の選考まで行っているという。このAIは、どのような未来を私たちにもたらすのだろうか。

 

 「ワトソンはビッグデータを読み解き、利用者が必要とする情報を抽出して、その判断を助けることを目的としたクラウドサービスです」と溝上さん。

 

 この技術を医療分野に応用した注目例として紹介したのが、がん診断支援システム「Watson for Oncology」。1500万ページもの医療論文を学習しているため、医師が患者一人ひとりに最適な診療法を提示するのをサポートできるという。

 

Watson for Oncologyによる診断支援の流れ

(1)がん患者の電子カルテを読み込み、診断に必要な情報を抽出

(2)ワトソンが診療ガイドラインに沿って、治療方針の候補を選択

(3)それぞれの候補に対し、臨床試験結果等のエビデンス情報を探す

(4)臨床エビデンスに応じて、治療方針の候補をランキング

 

 なぜ、がん研究と医療にAIが必要なのか。理由は、医療分野の情報量にあると溝上さんは話す。

 

 「がん研究は日進月歩。次々と新薬が開発され、臨床試験が世界中で行われている。医療論文などは年20万報にもなり、多忙な医師が読める量を遥かに超えている。でも、ワトソンのようなAI技術を使えば、大量な情報の中から患者一人ひとりに関連する情報を短時間に集めて医師を助けることができるのです」

 

 診断するのはあくまでも人間の医師。医師をサポートして患者のQOL(クオリティオブライフ)を高めるのがコンセプトだという。

 

初めて知る極小の世界。真剣な表情の生徒たち

 

■創薬でも期待 次世代計算機「量子コンピューター」

 未来を変えるには、より高速なコンピューターも欠かせない。溝上さんは、コンピューターのCPU(中央演算処理装置)を進化させてきた半導体技術、そして、微細なトランジスターを作るナノ・テクノロジーにもスポットライトを当てた。

 

 では、トランジスターとは何か?

 「電流を流したり止めたりする整流作用を持つ小さな素子で、高度に組み合わせれば様々な計算や制御を行うことができる」と溝上さん。1枚の半導体チップにより多くのトランジスターを搭載できるほど、CPUは高性能化・高速化するとも話し、「その数は大型コンピューターが登場した1970年代には4500個程度だったが、2000年代に5億個を突破しました」

 驚異的なペースで微細化しているのだが、教室で紹介した最新のナノ・テクノロジーは強烈だった。例えば、2018年発売のスマホに使われている約9ミリ四方のチップ。搭載トランジスターは69億個にもなるというが、これは2010年の世界の人口に匹敵する数だ。

 

 ただし、この微細化にも限界があるという。いずれ原子という「大きさの壁」にぶつかるからだ。

 

 「半導体とコンピューターの進化はここで止まるのか、止まらないのか? あるいは全く新たな方法で発展していくのでしょうか」

 こう語りかけた溝上さんは、その先にある「新たな方法」にも踏み込んだ。世界各国が注目する次世代計算機、量子コンピューターだ。計算速度は飛躍的にアップ、創薬の候補物質を探す確度が高まり、医療を変える可能性があるという。

 

 「みなさんが世の中に出るときには量子コンピューターが実用化され、より賢いAIも出てくる。未来は、もはや過去の延長線上にはないのです」

 こう話すと、溝上さんは生徒たちにエールを送って授業を締めくくった。

 

 「海外には量子力学を理解して、革新的なコンピューターを作ろうという野心的な10代もいる。みなさんもぜひ海外に出て、見聞を広めてください」

 

授業後、溝上さんを囲んで記念撮影

 

 物体が同時に2か所に存在したり、粒子が壁をすり抜けることができたり......。講義が原子、電子など極小の世界を支配する量子力学になると、「そんなこと可能なの?」「難しい」と顔を見合わせる生徒も。

 授業後には次々と質問の手があがり、質疑応答は1時間に及んだ。妻鹿涼介(めが・りょうすけ)さんは「未来は既に始まっていた。変化をキャッチするため自分の感度を高めないといけない」、田北智夏さんは「情報と教養が新たな価値になる。世界は変わるのだと実感できた」と話した。

 

>>プレ・フォーラム(2)宮野 悟氏 を読む

 

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