SDGsトーク 特別編 9/9「枠を壊した先に生まれるもの」

 国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を達成するための方策を教育の面から探る「SDGsリレートーク『じぶんごと』からはじめるために」。新渡戸文化学園小学校・中学校・高等学校(東京都中野区)の山藤旅聞先生と、田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザーとの対談・最終回は、SDGsなど社会的な課題に取り組むために必要なことについて考えました。

 

まとめ:住吉由佳(教育ネットワーク事務局)


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山藤 SDGs教育をお願いしますって言われたら、先生たちって「1学期は何やりますか」「2学期は何をやりますか」と決めたがるんですよね。でも、本当の世の中の仕事の生まれ方って、コミュニケーションから始まり、事業のしくみを作り、続けていくためにどう利益を生み出すかの議論が入って、理想から少しずれるかもしれないけれど動かしていく。その対話をみんなでやって生まれるもの。

 それが地域に貢献できる本当のプロジェクトであればあるほど、その活動の方向性が見えてくるまでにおそらく1年ぐらいかかると思う。そのための無駄と思えるかもしれないコミュニケーションを続けていくのは、大事ですよね。

 

田中 無駄じゃないと思う。

 

山藤 それが、1年間の総合学習でSDGsやらなきゃいけなくて、1学期はこれ、2学期はこれ、3学期はこれ、成果発表はこれってもう決まっていると、できません。

 

田中 そうそう。SDGsも、最初に目標立てて、ではできないものだっていうことなんですよね。そこが一番大事なところ。

 

山藤 毎日、クリエーションですよね。

 

田中 でも、この考え方を理解するのは難しい。総合的な時間の始まった頃は、ゆとりの時間もあったし、時間がわりと自由に使えて、子どもたちに「きょう何やりたい?」というところから始めることができたんですよね。思えば僕の、今のような教科横断的なプロジェクト型学習に変えることが必要だという考え方が芽生えた始まりだったと思うんです。

山藤旅聞先生(左)と田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザー

 

ゆっくりと対話して「自分事」にする

 

山藤 まだまだ子どもたちも保護者も、いままでの学校のイメージを持っているので、それをキャンセルしてもらって、「本当に自由にしていいんだ、この1日は」って、徐々に枠を壊したい。

 今はゆっくり、絶対急がせちゃダメで、「きょう何なんだろう、この1日」っていう日ぐらいあってもよくて、だけど僕らがいて対話して、そのうち僕らがいなくなって大丈夫なようになるように、学び方の手法だけは伝えていきたい。

 こういう機会だからこそ、ゆっくりと生徒と対話しながら授業を作り、社会課題に自分事として向かっていける、そんな生徒を育てたいと思っています。

 

田中 これだけずっと一緒に教科の枠を超えたプロジェクト型学習を小中高でやっていれば、タームが全部終われば、その時はたぶん、子どもが動かしますよ。

 

山藤 ですね。それは、実は第2フェーズって思っていて、その時にはたぶんこの学校の今の面白さはもう終わって、全部、生徒主導で動く学校になった時に、僕たちは去ることができるんですね。

 

田中 ただ、それができる教員が将来も続けて来るのか、ということも大事。教員も育てないといけない。

 

山藤 私学が拠点となるなら、残そうと思えばずっと残せます。だから、僕らは所属はここにいて授業を持ちつつ、いろんな学校のアドバイザーになって、活動していけたら、それが理想かなあと思っています。次の10年の自分の働き方の理想かな。一生現役で(笑)。

さんとう・りょぶん

1980年生まれ。東京都立高校・附属中学などで生物教師を15年間務め、2019年度から新渡戸文化小学校・中学校・高等学校生物科教諭。授業やカリキュラムなど高校全体の教育をデザインする高校教育チーフデザイナーと、統括校長補佐を兼任。一般社団法人「Think the Earth」のSDGs for schoolアドバイザー。2017年に未来教育デザインConfeito共同設立。SDGsを取り入れた出前授業や講演を全国で行い、生徒が進める100を超えるプロジェクトを支援。東京・檜原村の耕作放棄地でオーガニックコットンを育てて里山保全に取り組むプロジェクトでは、環境省グッドライフアワード環境大臣賞受賞(2019年、学校部門)

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(2020年8月28日 16:30)
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