SDGsトーク2(中)目指すのは「ゼミ方式」

 SDGs(持続可能な開発目標)を達成するために、教育でできる方策を探る「SDGsリレートーク『じぶんごと』からはじめるために」。正則学園高校(東京都千代田区)の本川太郎先生と、今年3月まで現役の小学校長だった田中孝宏・教育ネットワーク・アドバイザーとのトークは佳境に入り、SDGsと教科教育のあり方に議論が移ります。

 

聞き手:田中孝宏(教育ネットワーク・アドバイザー)

まとめ:吉池亮(教育ネットワーク事務局長)


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──正則学園全体でのSDGsの取り組みは、どのように取り組まれているのですか。

 

本川 本校ではSDGsについては、たとえば企業連携のプログラムをやる場合、有志となるような生徒の存在があって、そういう子たちを引き連れていくという、希望を募ってやるという方式をとってきました。でも、今年度からは学校全体でやろうということになったんです。これについては、学校内でも先生方の理解も得て、生徒から学びたいテーマのアンケートをとり、それぞれのテーマを1コマの授業として「教科横断方式」でなおかつ複数の教員でやろうと準備をしています。

 理科と情報の担当は私になりますが、これにたとえば日本史の先生にも入ってもらい一緒に江戸時代の科学をテーマにした授業を完成させる、そんなイメージです。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、当初予定していた内容が延期や中止になってしまっているということもあるのですが、逆に若い先生からベテランの先生まで巻き込んで、会議を繰り返して夏から始めようという機運になっているんです。学校全体でカリキュラムとして取り組んでいくということを目指しています。

 

正則学園高校の本川先生

 

──学校ではどういうカリキュラムで取り組まれているんでしょうか。

 

本川 本校は普通科なので、SDGsの実践となるとどうしても教科を超えた授業になりますね。本校がある東京・神田地区は、企業がとても多いエリアですから、もっと企業の方に授業に加わってもらったり──。大学のゼミ形式のように、もっとプロジェクト探求型にしたいと思っています。教科を超えた授業をやりたいですね。

 

──ゼミですか、それはすごい。それこそ大学のような取り組みですね。高校でそういうやり方というのは、私もはじめて聞きました。

 

本川 神田地区では新興のベンチャー企業も多いので、そういうところに協力をしてもらってということも考えています。たとえば、私の担当でいうと「情報」があるのですが、これはプログラミングが必修になっても私だけで授業をやるのは限界がある。どこかで学んでくればいいではないかと言われるかもしれませんが、そうなると知識量の問題だけでなく、プログラミングに割ける授業数も限られてしまう。だったら、いっそのこと企業の方にも加わってもらい、放課後や夏休みを利用して子どもたちに教えてくれれば、いい取り組みになると思いました。

 

──そういうやり方にすれば、企業での就業体験的な、いわゆるインターンシップにもつながりますね。なるほど、神田地区にはそういう土壌もあるんですね。

 

本川 神田地区では企業と学校がいっしょに取り組んで「学びの場」を提供するという試みが数年前から始まっているんです。そういうのを生かしていきたいですね。

 

──やはりSDGsの実践では、どうしても「教科」という枠が大きな縛りになってきてしまいますよね。

 

本川 なってますね。理科だったら理科と決められた年間計画があるわけですけど、子どもたちが興味を抱くことはもっとグレーゾーン的な部分だったりもするわけです。理科と別の教科との横断的な、そういうエリアですね。しかし、私のイメージでは小学校の方がもっとそういうところに積極的に踏み込んでいるイメージがあるのですが。

 

──いや、正直言って私も小学校の校長時代にはもっとそういうことをしたかったんですけどね。もっとプロジェクト型にして、いわゆる教科という枠組みを壊したかったんです。でも、教科は教科でそれなりに強い縛りもあって、先生方みんなの意識を突き崩すのもなかなか難しい。だからこそ、SDGsはいいなと思ったんですよ。これは使えるし、おもしろいと。要するに目標に応じて考えていくと、教科を横断して考えなければならなくなりますからね。

 

田中孝宏・読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

 

本川 確かにSDGsは何にでも使えるという便利さの一方で、そればかり意識しすぎてもいけないという意見もよく聞きます。無理やりこじつけのようになっているのではないか、という意見ですね。たとえば、SDGsの取り組みは能動的な要素が入ってくるわけですけど、そうなると発表の場、活動の場とかが必要になります。でも、先生方の中には、何もそこまでやらなくてもいいんじゃないかという声もないわけではないですね。

 

──たとえば「アクティブ・ラーニング※」なんかはどうでしょう。高校ではもっと体験的なことまで含めて取り組むべきではないかということになっていますか。そんなことをしなくても、教科教育の中で十分取り組めるという声は、私が校長をしていた時代にもありましたから。

 

本川 目指すべきはそこだろという先生は増えつつありますね。でも、まだみながそこにまで至っているかというと、そうではないでしょうね。すべての教科で、単元でアクティブ・ラーニングを導入できるというわけにはいかないでしょうから。

 でも、その一方で、高校のいいところは生徒たちの年齢が高いから、授業プラス放課後講習を行うこともできます。夜の時間の活用は小学生ではなかなか難しいと思います。そういう時間の活用ができるところが、高校は恵まれているといえるかもしれませんね。

アクティブ・ラーニング

生徒が議論を通じて思考力や表現力などを身につけることに重点を置いた学習の進め方。知識偏重に対する反省から注目されるようになり、2021年度から適用される中学校の新学習指導要領にも盛り込まれた。

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(2020年7月 1日 09:30)
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