山形・新庄市でのビブリオバトル、読売記者も挑戦「火喰鳥」紹介

本の魅力を一生懸命に語る山田記者(17日、新庄市小田島町で)

 おすすめの本の魅力を伝える書評合戦「やまがたビブリオバトル」が5月17日、山形県新庄市の市立図書館で開かれた。記者も「バトラー」として参加し、書評の難しさや本を通じた交流を体験した。(山形支局新庄通信部・山田優芽)

 

選書から戦いは始まっている

 2024年から実行委員会が山形県内各地で行っており、4回目。約30人の聴衆を前に、4人が持ち寄った本を紹介した。

 

 記者が選んだのは、新庄藩の火消しが活躍する小説「火喰鳥(ひくいどり) 羽州ぼろ鳶(とび)組」(今村翔吾)。壊滅した火消し組を立て直し、江戸の大火に立ち向かう物語。主人公が過去のトラウマを乗り越えながら、放火犯を追い詰めていくところが見どころだ。

 

 「その本は誰か選ぶだろうと思って、あえて避けたのよ」。こそっと教えてくれたのは、バトラーの庄内町の阿部和恵さん(53)。「どこの図書館でも読めるものを」とギリシャ古典文学「オイディプス王」を選んだという。選書から戦いは始まるようだ。

 

先が気になるところで「あっ、これ以上話すと...」

 「火喰鳥」を取り上げた理由は、5月に新庄通信部に赴任し、市内の至るところに作品のパネルやポスターが貼られていることに驚いたからだ。

 

 いざ本番の紹介では、市民の「火喰鳥」に対する熱意への驚きを交えながら、「登場人物一人一人に物語があって引き込まれる」と言葉にした。5分間という時間制限がある中でみんなに注目されると、事前に原稿を作り込んでおいたとはいえ、緊張で言葉をつなぐので必死。芝居じみたしゃべり方であらすじを伝えてみる。先が気になるところで止めて、「あっ、これ以上話すとネタバレになるので、ここからは作者のエピソードを!」。終わった時には息が上がっていた。

 

本を通じた交流にわくわく

会場を沸かせる珍田さん

 作り込みすぎず、本音で語ってみるスタイルで臨む人もいる。野球部を追ったノンフィクション「金足農業、燃ゆ」を紹介するために秋田市から来た珍田浩平さん(46)は、あらすじを差し置いて、ひたすら野球部のすごさを語る雄弁さで聴衆の心をつかんだ。「野球のルールを知らなくても読めるか」という質問には、「わからないと面白くないです」とばっさり。書評が「本のセールス」ではないからこその面白さだ。

 

 「ちょっと紹介しづらい真面目な本も、ここでは興味を持って聞いてもらえてうれしい」。現代評論の「AはアセクシュアルのA 『恋愛』から遠く離れて」を紹介した山形市の二藤部怜愛さん(25)は語る。自分の好きな本を受け入れてもらえる温かさがあり、聞き手にとっても何が出てくるのかというわくわく感がある。参加者の年代や背景もバラバラ。本が新たな居場所やつながりを作ってくれた。

 

 投票の結果、優勝の「チャンプ本」に選ばれたのは「オイディプス王」だった。ビブリオバトルのキャッチコピーは「人を通して本を知る。本を通して人を知る」。県内では11月に高校生の大会が予定されている。ビブリオバトルの魅力に、はまりそうだ。

(2026年5月29日 18:45)
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