やあ、こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤク先生だよ。きょうは、いろいろなやり方で新聞紙面を比べる実践を行ってきた村山正子先生(東京学芸大非常勤講師)にその取り組み例を聞いてみたよ。実感のある災害対策にもつながっているんだって。
ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。
国内で発行されている新聞の題字を切り抜いて地図に貼る取り組み(2018年、神奈川県座間市立図書館で) |
早い版と遅い版を比べて違い探し
村山先生は、神奈川県内の中学校でずっと国語の先生をしていて、今は東京学芸大で本や新聞など情報メディアの授業をしているんだ。新聞紙面を比べることはずっと大切にしていて、例えば同じ日の読売新聞でも、大きな災害が起きた時は、早く作られる版と遅く作られる版を見せて教え子たちに話しかけるようにしているんだって(新聞は、ちゃんと明け方にみんなの家に朝刊が配達されるように、同じ日の新聞でも、印刷工場から遠い地域に運ぶ締め切り時間の早い版と、印刷してすぐ運べる締め切り時間の遅い版がある。印刷の早い順に12、13、14版と3種類の版があるよ)。
東日本大震災から1年を伝える新聞各紙の一面を貼った新聞コーナー。紙面下には、生徒が付せんで感想を貼ることができるスペースもある(2012年、神奈川・鵜森中で) |
刻々と変わる「情報」というものに気づく
大きな災害が起きた時、遅い時間に作られた版は、早い時間に作られた版の紙面より、被害者の数が増えることが多い。災害は刻々と被害状況が明らかになるものだからね。昨年秋に北海道地震が起きた時は、遅い締め切り時間のものほど被害者の数が増えるなど、刻々と変わる災害という「情報」に触れ、多くの学生が「情報って答えが1つ載っているものじゃないんだ」と驚いたんだって。東日本大震災については、毎年3月11日の新聞各紙の朝刊一面を並べて「どこが違う?」「どれが好き?」って聞くことも多くて、扱う大きさとか、記事の視点とか、いろいろな違いに気づいて、「正解って1つ決まっているものばかりじゃないんだ」と、教え子たちはびっくりするんだって。
東日本大震災から1年を伝える新聞各紙の1面が貼られた廊下(2012年、神奈川・鵜森中で) |
ちょっとした時間・場所を有効活用
こうした取り組みは、村山先生の場合、授業の冒頭や朝の会などちょっとした時間を見つけて行うことが多いんだって。中学の先生時代には、廊下に新聞コーナーを作って、修学旅行で行く京都に関する新聞記事を集めて貼ったことも。「感想を書いて貼ろう」なんていうメッセージが添えられていることが多くて、多くの生徒たちが意見を書いた付せんを、どんどん自然に貼ってくれていたんだって。
京都への修学旅行前、「文化財防火デー」をテーマに廊下に設けた新聞記事コーナー。寺の防災訓練のニュースに多くの生徒が見入った(同中で) |
福祉・職業体験でも活躍
授業では、「福祉体験」「職業体験」などをテーマにした総合学習で、本や新聞を使った学習に取り組んでいて、それぞれのテーマで気になった記事を切り抜くなんてことをよくやっていたんだって。教え子たちはプロ野球選手の記事やパティシエの記事など、それぞれがいろいろ選んでいたけれど、とにかく自分で探すよう指導した。村山先生は、日常的に新聞を身近に感じる環境を作ることで、「報道にどう接したらいいか、情報に踊らされない人間を育てたいと思っている」と話していたよ。
福祉体験学習で、新聞を広げて身体の不自由な人に関する記事を探す生徒たち(同中で) |
災害記事を地図に落とし込む
ちなみに村山先生は、日本新聞博物館(横浜)で、新聞を使ったワークショップも時々開いているよ。この間は、過去20年間に神奈川県内で起きた大小さまざまな災害の記事を集め、地図に落とし込むワークショップを行ったんだって。土砂災害、倒木、火災など、20年間に起きた災害を地図に落とし込んでいくと、津波被害が予想される海岸沿いの街だけでなく、高台でも堤防決壊などの危険性があると気づくなど、多くの参加者が災害を自分ごととして考える貴重な時間になったんだって。
過去20年間に神奈川県内で起きた災害に関する記事のタイトルを付せんに記し、神奈川県の地図に落とし込んだ防災ワークショップの作品 |
村山正子先生
同じ日の新聞で、印刷時間の早いものと遅いものを読み比べる実践を授業にとり入れています。新聞を活用した学習は、自分の街で起こる、実感のある災害対策になっています。
早い版と遅い版、複数の新聞社の一面・・・いろいろ比べて読む方法があるんだね。実感のある災害対策になるって、大切なことだね。
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