楽しくNIE[9]「心と心つなぐ新聞プレゼント」高千穂町立上野小(宮崎県)

やあ、こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤク先生だよ。きょうは、子どもたちが、近所のお年寄りに読み終わった新聞をもらいに行って宿題に役立てている取り組みを紹介するね。お年寄りとの会話もはずんで町が生き生きしているようだよ。

ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。

 

5年生の新聞スクラップが貼られた黒板

 

●高千穂町立上野小(宮崎県)


おばあちゃんとおしゃべり 新聞もらう

 「こんにちは、新聞をもらいにきました!」

 九州の山あいにある宮崎県高千穂町。ここは農業が盛んで、牛を飼っている農家もいっぱいあるところ。上野(かみの)小の5年生が、近所のおじいちゃん、おばあちゃんの家をたずねていたよ。

 「今日はこれから剣道の練習です」と男の子が付け加えると、「新聞を読んで勉強頑張ってね」とおばあちゃんが元気づける。「今度、持久走大会があります」と男の子がさらに話しかけると、おばあちゃんは、「そういえば亡くなったあなたのおじいちゃんは、足が速かったよ」と微笑みかけ、男の子も笑顔に。しばらくおしゃべりした後、男の子は新聞を1部もらって、家に帰ったよ。

近所のおばあちゃんから新聞を受け取る子

 

もらった新聞でスクラップの宿題を

 上野小の5年生がこうやって近所のお年寄りをたずねるのは週1回。毎週末、田崎香織先生が、気になった記事をノートにはって感想や要約を書く宿題を出していて、そのために必要な新聞を、家で新聞をとっていない子たちが近所のお年寄りの家を訪ねて集めているんだ。高千穂町は高齢化が進んでいて、お年寄りは、夫婦二人だったり、一人暮らしだったりしている人が多く、町の4割が65歳以上。子どもたちの家は、両親が働きに出ていて、家に帰っても誰もいないことも多い。それで、「新聞をもらいに行くことで、地域の交流を図れれば」と田崎先生が、2年前の高千穂小の先生だった頃に始めたんだって。参加した5年生も最初は新聞をもらうだけだったけど、毎週行くと、お手伝いをしたり、学校や新聞記事のことを話題におしゃべりしたりするようになって「高齢者の方を元気づけるために行っていたつもりだったけど、元気をもらうのは子どもたちのほうでした」と田崎先生。町ごと生き生きする取り組みになっていたんだね。

 

週明け、クラスで発表、議論

 5年生は週末、全員が新聞を読んで記事を選び、ノートに貼って感想と要約を書いて、週明け学校に持っていく。学校では1日に1人が、朝か帰りの会でお披露目。スクラップした記事を見せながら、なぜこの記事を選んだかなどと説明するんだ。聞いているクラスメートは質問したり、自分の意見を話したりと、クラスで活発に意見を言い合うんだ。

新聞スクラップを手にする5年生

 

ふるさと活性化のアイデアも

 12月上旬には、女の子が記事を手に「イルミネーションがきれいな季節になりました」と発表。聞いていたクラスメイトからは「イルミネーションでまちおこしをすると、町が元気になると思う」「高千穂でもまちおこしでイルミネーションがあればいいね」と、いろいろなアイデアが上がったよ。ふるさとを大切にしているんだね。11月下旬には、男の子が、「自殺者が3万人越え」の記事を紹介。みんなからは「亡くなった人の悲しみや残念さなど、大切なことが入っていた」「要約がよくできていた」「自分の考えがはいっていた」など、深刻な問題にもいろんな意見が出ていたよ。

自分が選んだ記事の要約と感想を発表する子

 

道徳、社会、国語の授業でも新聞が活躍

 お年寄りに児童が新聞をもらう取り組みとは別になるけど、田崎先生は、新聞を授業でも取り入れているんだ。最近の道徳の授業では、都会から古里に戻ってきた人のインタビュー記事をテーマに「幸せってなんだろう」と考えた。社会では、日産自動車のゴーン会長(当時)が逮捕された記事をきっかけに、自動車工業の仕組みを学んだよ。総合学習の時間には、お米のことを勉強するために、地域の農業の記事を集めて壁新聞を作ったよ。ある日の国語の授業では、熟語の構成を勉強。みんな、新聞を一生懸命めくって熟語探しをしていて、「似た意味を表す漢字を組み合わせた熟語」を探す場面では、「参加」や「戦争」を見つけた子が大声で発表。「上の漢字が下の漢字の意味を打ち消す熟語」を探す場面では、「不適当」や「不安」という漢字を見つけた子が大喜びで発表していたよ。

新聞から熟語を探す児童

 

心と心の絆 末永く

 町のお年寄りと子供たちの心をつなげたり、授業で使われたりと、高千穂町で大活躍の新聞。田崎先生が前にいた高千穂小学校では、一人暮らしのおばあさん家を訪ねていた当時5年生の女の子が、中学1年生になった今も交流していて、「最初は新聞をもらうだけだったけど、小学6年生の時、運動会で白組の応援団長になって、みんなをまとめる大変さを聞いてもらっていました。やめたいと思っていたけど、アドバイスを受けて、やりとげることができました。今でも、部活の剣道のことなどを話しています」と、新聞集めで生まれた絆を感謝しているんだって。田崎先生も「気遣ってもらった子どもたちは、頑張ろうと思うようです」と話していたよ。

 

田崎香織先生

新聞を読むことで、新聞から情報を探し出し、社会のことに目を向けるようになります。分かりやすい文章が書けるようになります。目標は「生まれ育ったふるさとに誇りを持ち、将来、ふるさとに貢献できる児童を育てる」こと。新聞をもらう取り組みは、お年寄りの話を聞いてふるさとを知り、誇りを持つことに通じます。

社会性が身についたり、言葉の力が養われるだけじゃなくて、心の交流や成長にもつながる取り組みだね。あったかい交流だね

(文と写真 佐々木浩人・宮崎支局長)


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(2018年12月27日 16:30)
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