「中高生たちが安心して居られる場所を作りたい」。東京大学など多くの教育施設が集まる文京区。そんな地域でも、放課後に気軽に中高生たちが集まれる場所は、ファストフード店や、カフェなどしかないのが実情です。この春大学生になった私も、高校生の時に、そんな「中高生たちの居場所」での活動をきっかけに、世代を超えた多くの仲間に出会いました。そんな中高生たちのサポートに取り組む大学生たちの活動を取材しました。
(上智大学・津田凜太郎)
「ユースワーカー」が居場所づくり
「次のイベントを考えよう!みんなが参加したいテーマは何がいいかな?」
「イラストをテーマにしたイベントはどう?」
文京区湯島にある「文京区青少年プラザb-lab(ビーラボ)」。大学生などによるサポートスタッフ「ユースワーカー」と中高生たちが、気軽に意見を交わし合います。
漫画やゲーム、自習室、調理場、音楽スタジオ、スポーツ場、ホールを備えた施設は、思い思いに時間を過ごすことができる「秘密基地」のような場所。午後5時頃になると、自然に中高生たちが集まり始めます。運営に関わるのは中高生の成長をサポートする「ユースワーカー」たち。地域社会と協力しながら、中高生の安全な居場所作りを担います。
「いろいろな人と関わることの大切さを改めて感じた」と話すのは、ユースワーカーの1人、熊澤蒼介さん(東洋大学4年)です。
高校生の頃から児童養護施設や東日本大震災の被災地などでボランティア活動に関わってきた熊澤さん。活動を通じて、実際に人と関わる楽しさや難しさに魅力を感じ、福祉に興味を持ちました。大学の学びの中で「b-lab」の活動を知り、2021年から運営に携わっています。大切にしているのは「中高生の伴走者でありたい」ということ。イベントのサポートや、学校での悩み相談まで、常に寄り添いながら活動しています。居場所づくりだけでなく、主体性や自主性を育むことも意識しています。
「親や先生とのタテの関係でもなく、友達とのヨコの関係でもない、少し年上の先輩との『ナナメ』の関係」。b-lab館長の米田瑠美さんは、ユースワーカーたちの活動をこう表現します。施設を運営するのは、文京区からの委託を受けた「認定NPO法人カタリバ」。様々な環境に生まれ育った10代に、未来をつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動しています。「b-lab」では、35人のスタッフのうち、インターンやボランティアとして14人の大学生が活動しています。
「やりたい」「面白い」に全力
ユースワーカーたちは、中高生たちが放課後や休日に、安心できる場所で地域との接点を持ち、仲間とコミュニケーションをとれるようにサポートしています。中高生のニーズをくみ取り、成長を促すことで、自己肯定感の向上や社会スキルの発展を目指す大学生たち。※施設を利用している高校生は、「ユーススタッフが親しみやすくて、気軽に話を聞いてもらえるのが魅力」「親でも先生でもない間柄なので、相談しやすい」と、口々に信頼を口にします。ちょっと年上の大学生たちは、中高生たちにとって頼れる存在といえます。
「社会福祉は自己犠牲ではない」。
熊澤さんは、自分たちの活動を表現します。介護や児童養護など、福祉の現場で重要なのは、「自分のやりたいことが、他者のために動くこととイコールになっていること」と考えています。中高生の「やりたい!」「面白い!」を全力でサポートするユースワーカーの活動。しかし、そのサポートが、ユースワーカーにとって「本当にやりたいこと」でなければ長続きしないのかもしれません。
大切なのは、「困っている人のためになりたい、誰かの役に立ちたい」という意志を持っていること。その気持ちが中途半端なまま、福祉の道へ進んでも、他者のために自らの時間を割くことに違和感を覚えたり、悲観したりしてしまい、本人も、周囲の人にも不幸な結果になってしまうのかもしれません。米田さんも、「意欲の火を燃やし続けられることを探してほしい」と同じ大学生の私たちにエールを贈ります。
熊澤さんにとって、b-labの活動がそうだったように、本心から「やってみたい」と思えるような活動でないと、いつか限界を迎えてしまうかもしれません。まだ1年生の私も、本心から打ち込んでいけるような活動に出会い、大学生活を通じて頑張っていけるようになりたい、と強く思いました。