大学3年の春に始まった就職活動。業界大手から内定を得るまでのプロセスには、新聞がいつも身近にありました。読売新聞と作る学生新聞「キャンパス・スコープ」の活動も交えながら、就活での新聞活用術を紹介します。(東洋大学・福島彩加)
新聞で学んだ 伝わるプレゼン
初めての面接は2022年4月にオンラインで経験しました。「オンライン面接では相手の目を見ているようにするため、パソコンのカメラの高さを調節する」――こんな常識も直前にネットで調べて知りました。
「本日の面接は以上です。ありがとうございました」
面接担当者の言葉を聞き「落ちたな」。何の準備もできていませんでした。
まずは希望する業界の研究に取りかかります。学生新聞の制作に携わっていたこともあり、新聞を活用しました。毎日の紙面にざっと目を通し、業界について書かれている記事をスマホで写真に撮って保存します。学生新聞の活動の一環として記者の話を聞き、新聞がどれほど正確な情報を重視しているのかを知っていました。就活は情報戦です。努力の日々は新聞とともに始まりました。
新聞は正確な情報の収集だけでなく、表現の仕方も教えてくれます。面接では、会社について資料を作りプレゼンテーションする、という課題も与えられました。
キャッチーな見出し、伝えたいことが相手に伝わる文章、わかりやすく目を引く図表やイラスト――求められることは全て、新聞紙面にあります。学生記者として意識して新聞を読んでいたことが役立ちました。面接では担当者に「きれいなスライドですね」と褒められ、自信がつきました。
プレゼンに限ったことではありません。面接では自分の考えが担当者に伝わることが大切です。キャッチーな見出し、相手に伝わる文章という発想は、ここでも生きました。
異なる立場の人に理解してもらうために
学生新聞では代表を務め、掲載する広告の営業も担当していました。特に広告関係は貴重な経験でした。
広告営業では広告主のニーズをしっかりくみ取り、要望を基に企画を提案します。広告主のことを知らなければ提案しようがありません。
就活の面接では、担当者から「何か質問は?」と言われ「何を聞いていいのかわからない」という人が多いと思います。それは相手のこと、面接を受けた会社のことを知らないからでしょう。広告主のことを知って提案する。これは、面接を受けた会社のことを知った上で質問をする、という思考とパターンは同じです。学生新聞の活動を通じて身につきました。
新聞活用以外で感じたこともお伝えします。私が自分の課題だと感じたのは面接でした。どうすればうまく行くのだろうと考えた結果、環境の異なる人たちと話をする機会が大切だと考えるようになりました。
面接担当者の年齢や性別は様々です。短時間で「一緒に働きたい」「この学生は自分たちとマッチしている」と思ってもらうには、いかにシンプルにメッセージを伝えられるかが鍵になります。様々なバックグラウンドを持つ仲間と夜な夜な、オンラインで自己PRをぶつけ合いました。
もう一つ、大切なのは「素直になる」ことです。私のPRポイントは①学生新聞②飲食店でのアルバイト③13年間続けたピアノでした。ある会社の2次面接では、1次で話した「学生新聞」以外のエピソードを話すように言われていました。緊張したためでしょう、私は2次でも同じ学生新聞の話をしてしまいました。終了間際に気づき「すみません。もう一つ、別のエピソードを聞いていただいてよろしいでしょうか」と切り出したところ、担当者は「是非!」と笑顔でうなずいてくれました。結果、2次面接は無事通過しました。
面接担当者は知識も経験も私たち学生よりはるかに豊かです。知らないこと、わからないことは、知ったかぶりをせず「考えが及びませんでした」「思いつきませんでした」と素直に答える。おそらくは「伸びしろ」が評価されたのでしょう。最終面接に進めたこともありました。
(「大学生が取材しました」は、毎月第1水曜日の読売新聞朝刊「SDGs@スクール」面に掲載しています)