コロナ禍こそ、東北の力に~「3.11を忘れない」大学生の思い

オンラインミーティング。「今自分たちにできること」に知恵を絞った

 

 今年の3月11日で、「あの日」から10年となります。コロナ禍もあり、私たち首都圏に住む大学生の間では、震災が話題にのぼることも滅多にありません。そんな今だからこそ、あの経験をもう一度思い出し、風化させまいと活動する同世代たちがいます。震災を忘れない、東北を忘れない──。そんな大学生の思いを取材しました。(実践女子大学・遠藤花連、写真はJoyStudy提供)

 

「困ったときはお互い様」

 揺れは突然やってきました。2021年2月13日の夜、都内の自宅のリビングで家族とテレビを見ていた岡田ななせさん(実践女子大学2年)の脳裏を、10年前の「あの日」の思い出が鮮やかによみがえりました。

 2011年3月11日、仙台市の小学校に通っていた岡田さん(当時4年生)は、突然の地震に驚きながらもすぐに教室の机の下に隠れ、3~4分ほども続いた揺れをじっと耐えました。無限に続くように思われた時間。家族のことが心配で、あふれる涙がとまりませんでした。揺れが収まると、ランドセルや教科書が散乱した床を踏みながら、クラスメートと夢中で校舎の外へと避難。なんとか家には帰れましたが、食料や電源の確保、部屋の片づけと、やることが山積みでした。

 内陸部だったこともあり、幸い津波の被害からは免れましたが、4階建ての校舎は大きな被害を受けました。学校が再開されても、3か月は体育館で授業を受けなければなりませんでした。段ボールで仕切られた「教室」。他クラスの声も丸聞こえで、夏の暑さも耐えられたものではありません。それでも「津波の被害にあった人のことを考えると、文句は言えない」。子供心にそう思ったと言います。次第に援助も行き届くようになり、段ボールからパーテーションへと学びの環境も改善されていきました。プレハブ教室の設営までの半年は、隣の小学校が教室を貸してくれました。通っていたスイミングスクールも天井が落下してしまいましたが、近隣のスクールがプールを提供してくれたことで、再開にこぎつけられました。「困ったときはお互い様」。手を差し伸べてくれた大人たちの言葉が、岡田さんの心に深く刻み込まれました。

コロナウイルスの感染拡大前に行った海岸清掃。現地でボランティア活動ができない状態が続く

 

コロナ禍こそ、東北に目を向けて

 中学生の時、父親の仕事の都合で東京に引っ越し、都内の大学に進学した岡田さん。「ボランティアは恩返し」という思いを胸に、東北支援に関わることを決めていました。2020年11月からは、大学生による東北支援団体「JoyStudy」の代表に就任。被災者であり、東京の大学生でもある2つの立場から活動に取り組んでいます。活動の柱は、(1)現地でのボランティア活動(2)主催イベント収益の寄付(3)東北の魅力の発信。2020年の2月には震災の被害を伝えるトークセッションにチャレンジ。節目の10年目となる2021に向け、構想を練っていたところに、コロナ禍が襲いました。移動が制限され、ボランティア活動は不可能に。支援イベントも開くことができません。被災地との生の触れ合いが絶たれ、「毎日悩んでばかりだった」と岡田さんは振り返ります。週に1回のミーティングもオンラインに切り替わり、やりにくさを感じる中、新たなアイデアとして生まれたのが「プレゼント企画」でした。

 6月から11月にかけて、フォトコンテストやクイズをオンラインで開催。抽選で東北の物産品をプレゼントしました。「東北の魅力を伝える」「SNSの発信力を高める」の2点を意識しながら、「全国の人に東北を知るきっかけを提供する」活動を続けています。

 ツイッターでのリツイートは予想を上回る530件の大反響。インスタグラムでの東北おすすめスポット掲載や、部員が身近なもので作った「お家で作れる東北料理」キャンペーンも大成功でした。「出来ることからコツコツ始める」メンバーの気持ちが、オンラインでも結果に結びついたのです。それはまさに、岡田さんが励まされた震災直後の支援の形でした。

 「JoyStudy」では、3月27日に「東北を身近に感じてもらい、東北の人の声を発信する」オンラインイベントを行う予定で、今はその準備をしています。東北3県の語り部を招いた初の試みです。「あれだけ怖い思いをして、今も東北支援のことを考えているのに、災害の恐怖を忘れかけていた。先日の地震でそれに気づかされた」と語る岡田さん。「10年前の、あの時の感謝を還元したい。震災を知らない子供たちもっと知ってもらう努力をしたい」と訴えます。コロナ禍もあり、つい忘れてしまいがちな「あの日」のこと。私たち大学生こそが、記憶をつないでいく「主役」にならなければならないと、強く思いました。

東北支援団体JoyStudy

2011年6月に発足した。メンバーは関東圏在住の学生。「東日本大震災にあった人からのニーズをなくすこと」を目標に、楽しく自分たちにできることを探しながら支援活動を行っている。

>>JoyStudy公式ブログ



(2021年3月 1日 11:00)
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