「バレエを通して環境について考えよう」。そんな活動に取り組んでいる大学生がいます。室内で行われるイメージのあるバレエと環境問題の関わりとはどのようなものなのか、話を聞きました。
(中央大学・行川綺夏、写真も)
トートバッグやアクセサリーに
8月下旬の週末、目黒区のレンタルスペースで行われたイベントは、多くの子供たちで賑わっていました。行われていたのは、使えなくなったトウシューズをトートバッグやアクセサリーとしてアップサイクルする体験会。目をキラキラさせながら、トウシューズを触ったり、メンバーの説明に聞き入ったりする子供達の笑顔が印象的でした。
「自分の好きなもの、身近なものから環境問題を考えるきっかけにしてほしいですね」。イベントを開催した学生団体「Wake Up Pointe Shoes」の鈴木歌恋さんと大泉萌香さん(いずれも慶應義塾大学総合政策学部3年)が話してくれました。
母親の影響で0歳からバレエに打ち込んできたという鈴木さん。高校1年の時にオーストラリアに留学したことで、国際社会が抱える様々な問題に興味を持ち、2年生で国際問題研究会を立ち上げました。アメリカ・サンディエゴ大学が主催したSDGsに関するコンペティションで取り上げたのは、バレエダンサーが使うトウシューズが大量廃棄されている問題。トップのダンサーは2週間から1か月で履きつぶしてしまうというトウシューズ。革や布、金属などの様々な素材や接着剤が使用されていることで、リサイクルが難しい製品といわれています。
趣旨に共感したバレエ・ダンス用品大手・チャコット社との共同でトウシューズの廃材を使用したリサイクル商品開発の取り組みに関わった鈴木さんは、大学進学後、より多くの人に問題を知ってもらおうと、「Wake Up Pointe Shoes」を立ち上げました。
身近なものを入口に
活動で意識しているのは、「自分たちに身近なもの、好きなものから環境問題を考えてほしい」という思い。ワークショップに先立っては、バレエダンサーが森の中で踊る映像の上映も行い、バレエとは縁遠いイメージの「自然との共生」についても考えてもらうことを目指しました。
映像の監督は、鈴木さんと同じく慶應義塾大学に通う渕上駿介さん(環境情報学部2年)が務めました。「バレエと自然に共通する、生命力に焦点をあてた」と話します。大学生活は、スポーツや音楽、芸術など、これまで打ち込んできたものの集大成の時期であるとともに、多くの大学生にとっては、その打ち込んできたものに別れを告げる時期でもあります。「バレエダンサーの『輝く寿命』と、愛するバレエに別の形で向き合おうという大学生たちの志への共感を描きたかった」と、渕上さんは作品の狙いを話します。
イベントをきっかけにバレエに興味を持ったという小さな女の子や、自分が打ち込んできたバレエの新たな側面を知ったという少女など、多くの子供たちの「気づき」の表情が印象的でした。これから社会に出て行く私たち大学生。日本や世界が抱える様々な問題に向き合っていくため、まずは自分が好きなものを見つめ直す必要があると感じました。