復興へ歩む福島の魅力を知る ~ 大学生が取材しました

 

 

 キャンパス・スコープ49号では、福島県の大学生と一緒に同県の見どころを紹介する旅行プランを立案し、紙面で紹介しました。10月19、20日の両日、首都圏の高校生・大学生12人がこのプランを基に1泊2日で巡るモニターツアーが行われました。

 

ツアー日程

【10月19日】

午前:いわき駅着→浪江町立請戸小学校→昼食(海鮮和食処くろさか)

午後:道の駅なみえ→原子力災害伝承館→福島市に宿泊

【10月20日】

午前:浄土平→昼食(ゆず沢の茶屋)

午後:まるせい果樹園→道の駅ふくしま→福島駅から東京へ

 

 

津波の爪痕を残す「奇跡の学校」

――法政大学・鈴木さりな

 福島県浪江町出身の私は、2011年3月に起きた東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故のため、家族で避難した千葉県で今も暮らしています。私が同世代に見てもらいたかったのは、震災遺構・町立請戸小学校です。児童・教職員82人全員が避難できた「奇跡の学校」として知られる同小は、鉄骨がむき出しになった壁や、津波でなぎ倒されたロッカーなどが震災当時のまま残され、時が止まったかのようです。前川理麻奈さん(法政大学)は、1階の天井に記された津波の跡を示す表示を見て、「こんな高さまで来るなんて」と言葉を失っていました。

 

 福島大学に通う3年生の佐藤詩織さんと進藤大資さんたちがお薦めしてくれたのは、福島市中心部から車で1時間ほどの「浄土平」です。火山活動によって形成された雄大な地形と紅葉が織りなすパノラマは、絶景の一言。それでも、浄土平ビジターセンターの西村真一さんによると、修学旅行で訪れる人は震災前に戻っていないそうです。「首都圏から近く日帰りもできる。もっと若い人に来てもらいたい」という西村さんの言葉は切実でした。

 

原子力とどう向き合うか

――上智大学・川上凜奈

 原子力災害伝承館(双葉町)は、2011年3月11日に発生した東日本大震災と津波に伴う原子力災害を後世に伝えることを目的とした施設です。震災前の資料や、震災に続く避難生活などの資料が展示されています。もし同じような災害が起きた時、どうすれば被害を最小限にすることができるのか、私たち自身も考える必要があると感じました。

 エネルギー資源の少ない日本にとって、原発の再稼働は避けて通れない問題です。発生から10年以上が過ぎても、今も故郷に帰れない人がいる現実を風化させてはいけない、と感じるとともに、未来のエネルギーのあり方について、私たち一人一人が考えていかなければならないと思います。

 

ゆずの香り漂う「隠れ家」

――上智大学・津田凜太郎

 1泊2日のツアー2日目は、県庁所在地である福島市の周辺を巡ります。浄土平の絶景を堪能した後、「ゆず沢の茶屋」で昼食です。山道をバスに揺られながら走ると、見えてくるのは古民家風の建物。まるで隠れ家のようにひっそりと佇み、小川のせせらぎが聞こえます。木の優しい香りに包まれた店内で出されたのは、名物の「ゆずみそ焼きおにぎり」。塩昆布入のおにぎりに、ゆずみそを塗って香ばしく焼き上げた一品です。田楽や地元のお野菜を使った煮物の味にほっこりし、ゆっくりと癒しのひとときを楽しめました。

 

「フルーツ王国」を味わう

――上智大学・岩瀬多佳来

 「フルーツ王国」として知られる福島県。ゆず沢の茶屋からバスに揺られること約30分でたどり着いたのは、「まるせい果樹園」です。それぞれバケツとナイフを受け取ると、スタッフがリンゴの取り方を教えてくれました。「秋晴」「シナノスイート」「シナノゴールド」の3種から思い思いにリンゴをもぎ取っていきます。私が手に取ったのは、濃い赤色が特徴の「秋晴」。程よい甘さと歯応えが印象的でした。

 

 

 果樹園には、カフェ「森のガーデン」が併設されています。このツアーのために特別に作ったというパフェを味わいました。案内役の進藤さん(福島大学)によると、とても人気のあるカフェで、つい先日も同級生が訪れたそうです。「これでもか」というほど果物が乗せられたパフェ。大きなブドウの甘さが口いっぱいに広がります。お腹も心も満たされました。

 

ツアーを終えて

 1泊2日の旅程では様々な地域を回りました。原子力や土木について学んでいるという本多修造さん(早稲田大学)は、「災害や自然について深く学べた。友人にも福島の魅力を知ってもらいたい」と話してくれました。福島県出身の私にとっても、少しずつ薄れつつある震災の記憶。同世代や、震災を知らない世代に伝えていかなければならないと感じました。(鈴木さりな)

 

(2024年11月13日 09:00)
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