20回目を迎えた統一地方選は、9道府県知事選と41道府県議選、6政令市長選と17政令市議選が4月9日に投開票されます。10歳代の投票率は、初めて「18歳選挙権」で行われた2016年参院選以降、地方選も含めて低調です。なぜ若者は投票に行かないのでしょうか。どうすれば投票に行くようになるのでしょうか。若者の主権者意識と投票率の向上に、積極的に取り組んでいる松山市を取材し、考えました。
(上智大学・島田遥=キャンパス・スコープ代表)
大学生の「選挙コンシェルジュ」
松山市は13年参院選で市内の大学に全国初の期日前投票所を設けました。選挙啓発を担う大学生などを「選挙コンシェルジュ」、高校生や大学のサークル、NPO法人などを「選挙クルー」に認定しています。主権者教育の出前講座、ポスターの作成などを担い、市選挙管理委員会と定期的に打ち合わせ会議を開いています。市選管の松田耕一さんは「若者の投票率向上には同じ若者の目線で考えることが重要です」と説明してくれました。
21年1月、松山市は、若者の投票行動に関する調査結果を公表しています。それまでの選挙啓発活動の成果や課題を検証し、今後の参考にするための調査でした。市内に住民票のある19~30歳の3000人を対象に20年6月~7月、郵送とインターネット方式で実施し、880人が回答しました(回答率29.3%)。調査結果からは「なぜ若者は投票に行かないのか」という疑問に対する答えが浮かび上がります。
10年以降に行われた衆参両院の国政選に、1度でも投票に行かなかったことがある人に、その理由を複数回答で尋ねました。すると「誰に、どの政党等に投票すればいいのかわからない」が27%で最多でした。知事・県議と市長・市議の地方選も同様で、投票先がわからないとの回答が最多の25%を記録しています。投票先を決める基準がわかれば、若者は投票に行くのではないでしょうか。
市内の済美平成中等教育学校で今年3月、市選管と読売新聞が行った主権者教育の授業では、こうした見方が裏付けられたようです。市選管などによると、授業では人口減社会での学校運営費をどう賄うかを考えました。「授業料引き上げ」「地域で幅広く負担」「借金で補う」という3つの政策について、メリットとデメリットを話し合い、違いを見極めます。選挙コンシェルジュの大学生を候補者役とした模擬公開討論会で理解を深めました。授業後のアンケートでは「投票に行く」という生徒は8割を超え、「様々な視点で分析して選べた」「候補者の選び方を学んだ」などの感想が書かれていました。
超少子高齢社会の未来の日本のあり方を決める上で、担い手となる若者の意見を聞くことは不可欠です。私たちも投票に行かなければ、政治に意見を反映させることはできません。9日の授業で講師も務めた松田さんは「選挙公報などで気になる候補者が見つかれば、その人が自ら発信しているSNSを閲覧するなど、進んで情報収集してほしい」と話しています。投票先を決める際には、正しい情報を得ることも欠かせません。
授業に参加した選挙コンシェルジュの森田崚介さん(松山大学)は、オンラインでの取材にこう答えてくれました。
「未来を作るのは今の若者です」
同世代の若者へのメッセージと受け止めました。