スポーツ新聞のシゴトを深掘り!~報知新聞記者×人事インタビュー

 

 

 スポーツ新聞ってどんなシゴト----?150周年を迎えた「報知新聞」。20年近い記者経験を経て、人事・採用を担当する田島正登さんに話を聞きました。(中央大学・大関亮太) 

 

報知新聞社

1872年(明治5年)に「郵便報知新聞」として創刊。「スポーツ報知」を中心に、スポーツや芸能の雑誌や書籍発行、イベントなどを幅広く手掛る。150周年を迎え、本社を東京・港区港南から、創業の地でもある両国(墨田区横網)に移転した。東京・大阪両本社に加え、北海道・東北・静岡に支局、名古屋・福岡に駐在員を置く。

 

先輩・後輩が自然と助け合う

 

――報知新聞社には、どのような仕事・職種があるのでしょうか?

 社員数は約540人。記者が6割、新聞制作や販売、広告などの担当が4割です。記者は、「運動第一部(野球担当)」「運動第二部(野球以外のスポーツ)」「文化社会部(芸能・社会ニュース)」「編成部(紙面デザイン)」などに分かれています。販売や広告、新聞制作に必要なITシステムや印刷・配送の仕組みを担当する部門もあります。エンタメ・芸能イベントの企画運営にも力を入れていて、最近では、子供や女性に人気の「すみっコぐらし」の映画とコラボした特集新聞を発売するなど、新たな読者層の獲得に取り組んでいます。 

 

――1日のスケジュールを教えてください。

 記者はもちろん、他の職種も「同じ一日」はありません。私は昨日、朝9時半に出社して、午前は社内で仕事、午後から内定者を東京ドームに連れて行き、取材現場を見てもらいました。「職場見学」と「試合観戦」をして帰宅です。記者は休めないのでは、と心配でしょうけれど、希望を踏まえて勤務シフトを決めます。突発的な出来事が起こった際に休日出勤することはありますが、代休は取れます。月に8,9日は休んで、夏や年末年始にもまとめて休みます。会社からも、「きちんと休め」と言われます。

 

――報知新聞社を志望したきっかけは?

 本好きで、小さいころから新聞に興味がありました。巨人ファンの父親に「報知買ってきて」と頼まれることも多かったです。新聞・出版業界を希望していて、就活が進む中で人事の方の暖かい人柄にふれ、報知に行きたいという想いが強まっていきました。

 

――報知新聞社の特徴を教えてください。

 取材で他のスポーツ新聞の方とも知り合いになりますが、それぞれ独自の社風があるように感じます。報知は、「みんなが他の社員のために」と、助け合う精神が強いと感じます。記者時代も、取材で困った時は先輩・後輩関係なく、取材先を紹介してくれました。

 

人との縁が財産 地道な仕事

 

――求める人物像を教えてください。

 同じニュースでも、スポーツ紙によって書き方やレイアウトが違います。各紙を読み比べて、違いを具体的に説明し、自分なりの意見を付け加えることができる人は強いと思います。「報知でしかできないこと」「報知でやりたいこと」を理論的にアピールできる人は強いです。
 エントリーシートは具体例をあげて書くといいかもしれません。単に「映画好き」より、「●●の映画を▲回、見に行った」と書いている方が、「話を聞いてみたい」と思います。2024年卒のみなさんは、最もコロナの影響を受けた世代です。「学生時代に力を入れたこと」を聞こうにも、キャンパスに登校できなかったわけです。私たちも、何をどう聞けばいいのか考えています。

 

――就活生へ一言お願いします。

 紙の新聞の売り上げは下がっていますが、それを分かったうえで応募してくれる学生さんは多く、有難く感じます。「巨人」のイメージだけでなく、その他の事業にも取り組んでいることを知ってほしいです。幅広い分野にアンテナを立てておくことが大切です。

 

田島正登(たしま・まさと)1978年京都府生まれ、同志社大学。2002年報知新聞社入社、大阪本社編集局運動部でアマチュア野球とプロ野球のオリックスを担当。08年からは文化社会部で映画などを取材した。11年からは運動第一部で広島、ロッテ、ヤクルトの担当を経て、21年1月から人事労務部。

 

佐々木投手の完全試合を取材

 

――1日のスケジュールを教えてください。

 入社1年目はアマチュア野球を中心に取材し、2年目からプロ野球・千葉ロッテマリーンズの担当になりました。基本は18時開始のナイターに合わせた生活です。昼頃に球場へ行き、14時から試合前練習を見ます。試合の状況や選手のプレーはその場でノートパソコンに原稿を打ち込み、リアルタイムで会社に送信します。紙面チェックなどを経て、日を跨いだぐらいの時刻に帰宅です。試合がないは個人練習を取材して原稿を書きますし、オフシーズンには選手の契約更新交渉や移籍の話も浮上します。

 

――取材のとき、なにを意識していますか。

 「選手をよく見る」ことです。毎日の練習を見て、わずかな変化に気づくことで疑問や気になることが生まれます。選手も「こんなところまで、見ていたのか」と驚き、取材により深く対応してくれることもあります。

 

――やりがいや苦労を感じるのはどのような時でしょうか。

 署名入りの原稿を書いて世の中に出すことは、なによりもやりがいになります。入社すぐのころ、ついこの間まで大学生だった自分の署名が印刷されているのを見ると、不思議な気持ちになりました。

 

 ロッテの佐々木朗希投手の完全試合など、歴史的偉業を目の前で見て記事にするチャンスもあります。佐々木投手は、ちょうど私がロッテ担当になった年に、岩手・大船渡高校からドラフト1位で入団しました。完全試合達成後の今も変わらず、謙虚です。練習で他の選手と楽しそうにコミュニケーションを取っている姿は、普通の20歳の好青年にも見えます。試合で見せる顔とはまた別の素顔も引き出して、伝えていきたいと思っています。

 

 

選手とのコミュニケーションでひらめき

 

――スポーツ記者に必要な能力やスキルは?

 種目特有の専門用語を覚えなくてはなりませんが、入社してから自分で勉強するなり、先輩に聞くなりして覚えていけば、十分対応できます。試合の原稿は締め切り時間との勝負ですが、試合中は何が起こるかわからず、瞬時の対応が求められるのは難しい点です。最初は原稿を早く書けず苦労しました。スピードを上げようと、タイマーをセットして原稿を書くトレーニングをしました。記者は体力勝負ですし、選手たちとのたわいもない会話から取材や記事のネタがふと閃くときもあります。

 

――就活のコツについてアドバイスを。

 小さいころから野球観戦が趣味で巨人ファン。報知新聞が第一志望でした。紙面をよく読んで、「こんな企画をしたい」「この選手のこの部分を引き出したい」といったことを考えました。面接ではそのイメージをベースに、自分の思いをアピールしました。皆さんも、思いや熱意を自分の言葉で面接官に伝えることで、夢を叶えてほしいと思います。

 

小田原実穂(おだわら・みほ)1996年生まれ。秋田県横手市出身。富士大学卒業後、2019年に報知新聞社入社。20年からロッテ担当。巨人ファンの父親の影響で野球好きに。小学2年生からバスケットボールを始め、大学でもバスケ部に所属。

(2022年11月 2日 10:00)
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