大学生らが経営を学び実践するセレクトショップ「アナザー・ジャパン」プロジェクトには、様々な期待が込められています。三菱地所TOKYO TORCH事業部の加藤絵美さんに話を聞きました。
(慶応大学・吉野彩夏=キャンパス・スコープ編集長、写真は法政大学・神田明日香撮影)
日本を元気に
――プロジェクトを始めたきっかけは何ですか。
「『TOKYO TORCH』という再開発プロジェクトです。『日本を明るく、元気にする』というビジョンを掲げ、地域と東京をつなぐ取り組みを加速させたいと考えていました。アナザー・ジャパンは再開発プロジェクトの理念を実現するものです」
――パートナーに中川政七商店が加わっています。
「中川政七商店のビジョンは『日本の工芸を元気にする!』です。『日本を明るく、元気にする』と非常に近いと感じました。一緒にできないかとお声がけしたところ、快諾していただきました」
――学生を主体にしたのはなぜですか。
「中川政七商店側から『学生を巻き込んだプロジェクトはどうか』という提案がありました。TOKYO TORCHが完成し、再開発が終わる2030年頃に活躍しているのは、今の学生世代です。若い人が街づくりに携われば、日本を明るく、元気にする取り組みになると考えました」
――三菱地所、中川政七商店、学生はプロジェクトでどのような役割を果たしていますか。
「三菱地所は学生が活躍する店舗という舞台を提供しています。相談に乗ったり、アドバイスをしたりするサポート役でもあります。中川政七商店は経営教育を行っています」
「学生は経営のいろはを知らずに参加するため、研修を通して基礎から学び、経営人として店舗運営に関わっていきます」
――「若い世代に託すことが未来を作る」と考えていらっしゃると聞きました。
「アナザー・ジャパンでの経験は将来、経営に携わる人材育成につながると思います。ここでは上司部下という関係はありません。学生一人ひとりが経営者で、自由に意見を言い合います。社会人になっても自由な気持ちを忘れないでほしい」
作り手の思い伝える
――全てを任されることに不安を感じる学生はいませんか。
「採用面接の時点で『経営を勉強したい、地域に貢献したい』というやる気が勝り、不安そうな様子はうかがえません。失敗して何を得るかが将来の大きな糧になるはずです」
「学生から刺激を受けることも多いですよ。例えばPRの仕方です。発信するメッセージに応じてインスタグラムなど媒体を使い分けたりしています。生産者とのコラボレーションでも私たちにはない発想があります」
「商品は自分たちでリサーチし、仕入れています。作り手を招いて、商品への思いを語ってもらうイベントなども開いています。イベントに参加したお客さんからは『作り手の方が近くに感じられ商品の魅力が伝わってきた』など、うれしい反響もいただいています」
――東京都内には各地域のアンテナショップもあります。
「主体が学生であること、店舗や商品のコンセプトや経営戦略を同じ人がやっていることが大きな違いです。仕入れと販売は通常、担当者が違います。一貫していることが一番の特徴です」
――プロジェクトに参加する学生には、どのようなことを期待していますか。
「アナザー・ジャパンは2027年度に完成予定の『Torch Tower』への出店をマイルストーンとしています。『地域を元気に』『次世代育成』という目標実現に向け、一緒に取り組んでいきたいと思います」