医療機器メーカーで働く人たちの毎日は?100年以上の歴史を誇るテルモ株式会社。人財開発室の佐藤千夏さんと、大室文乃さんにお話を聞きました。(東洋大学・中西萌音、写真は法政大学・神田明日香撮影)
テルモ株式会社
「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年の歴史を持つ医療機器メーカーです。日本に本社を構え、世界160以上の国と地域で事業を展開。体温計の国産化から始まり、設立以来、医療の基盤を支え続け、現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供しています。
入社後に学べる医療知識
――テルモには様々な職種があると聞きました。それぞれの仕事内容や、求められる能力を教えてください。
佐藤さん(以下・佐):体温計の製造を祖業とするテルモは100年以上の歴史があります。日本国内だけでも1万2000点、世界では5万点をこえる製品やサービスを提供する「総合医療機器メーカー」です。多様な医療機器を国内外に展開するため、テルモには様々な職種があります。
まず、製品の開発・生産に関わる「開発技術職」があります。医療現場に、製品の魅力をつたえるのが「営業職」のお仕事です。医療機関などに製品を正しく使うための「トレーニング」を行うのも大切な業務です。また、製品の安定供給のために、調達や物流部門など多くの「コーポレートスタッフ」がサポートしています。このように多様な職種があるため、求められる人材も異なります。「営業」や「コーポレート」に関しては文理不問です。医療知識を持って入社する方はほぼいません。知識は入社してから学ぶことができます。
――代表的な1日のスケジュールを教えてください。
佐:テルモグループは現在、3つのカンパニーで事業を展開し幅広い方向から医療を支えています。カンパニーによって扱う領域も製品も異なりますし、日によっても動きが異なりますが、参考として、まずは営業の1日を一例ご紹介します。
朝、自分が担当する医療機関を訪問し、情報伝達や製品紹介・お困りごとのフォローアップを行います。昼食後は支店に戻り、チーム間で進捗や課題の共有をしてコミュニケーションを取ります。一人ひとり担当を持ちますが、一人では進められない仕事もあります。その様な時に、チーム内や上司と相談しながら業務を進められる環境がテルモにはあります。
空き時間に新規のお客さんへのアポ取りなどを行い、夕方、医療機関でのトレーニングを行います。医療機器は正しく使用されて初めてその機能を発揮する為、適性使用のトレーニングも大切なお仕事になります。トレーニングが終わったら直帰し、一日が終了です。
大室さん(以下・大):開発技術職は様々な担当があるので個人差がありますが、内勤が中心です。在宅勤務やフレックス制度も活用して、効率よく柔軟に働けるようにしています。午前中は、メールやスケジュールの確認、打ち合わせ資料や設計文書を作ります。
工場勤務の場合は、安くておいしい食堂での昼食も楽しみのひとつです。午後はチームで進めているプロジェクトの進捗確認や、他部署とのすり合わせを行います。実験の検討、サンプルの作成などをして帰宅、というパターンになります。
――やりがいを感じるのはどのような時ですか?
佐:私は営業職としてキャリアをスタートしたのですが、学生の時に想像していたほど、直接、患者さんと関わる機会はそれほど多くはありません。ただ、医療従事者の方を通して、製品がどのように使われているか、ということを知る機会はたくさんあります。
入退院を繰り返していた小児ガンの患者の方が、テルモの装置で治療をし、数ヶ月後に退院をすることができました。その時に担当の先生が送ってきてくれたメールが忘れられません。
「小児の患者さんが退院するときに『またくるね』と言った。また来られたら困るけど、テルモの製品のおかげだよ。ありがとう」
この患者さんにとっては、病院が「日常」で「帰る場所」であり、自分の家が「行く」場所という認識だったのだ、ということに気付かされました。医師でもないし、特別な資格もない私が、医療に携わって患者さんの命に少しでも貢献できたことを実感しました。
――働く上で大切にしていることは何でしょうか?
大:「相手の目線に立つこと」です。医療機器の説明は、初めて聞く人にとっては難しいことばかりです。どこまで理解してくれているか、を考えるようにしています。人事としても、会社説明会や、内定者のフォローアップなど、自分が満足するだけではいけないと思っています。常に相手の顔を見ながら、どこまで説明をわかってもらっているか、考えるようにしています。
テルモの「ATM」
――若手でも成長する機会がたくさんあるように感じます。どのような制度があるのでしょうか?
佐:「キャリアチャレンジ」という手挙げ制の仕組みがあります。キャリアは自分が構築していくという考えが基本です。自分のやりたいことがある場合、そのために必要なスキルを磨き、ポストが空いたタイミングで手を挙げ、試験に通れば、そのポジションにつくことができます。キャリアは上司が決めるものではなく自分で考え進めていける、チャレンジできるフィールドが社内にあるというのが魅力です。年次は関係なく、スキルや経験などの基準を満たせば若手も立候補できます。
大:月に1回、将来のキャリア、スキル、自分のしたい仕事について上司と話し合う「1on1」というコミュニケーションの仕組みもあります。自分のキャリア、スキル、自分のしたい仕事についても常にコミュニケーションしています。
ーーテルモを志望された理由を教えてください。
大:大学時代に留学先の発展途上国で感染病にかかり、入院しました。島の1番大きい総合病院に入院しましたが、医療機器が揃っていなかったり、衛生環境が悪かったりと、日本とは環境がかなり異なることを知りました。日本の医療技術のすばらしさを感じ、グローバルに医療の状況を改善できる企業に入りたいと思いました。テルモには体温計のイメージしかありませんでしたが、幅広い製品を持ち、医療現場を包括的に改善できるのではないかと考え、志望しました。
ーーインターンではどのようなことを学んでほしいですか?
佐:学んでほしいことも職種によって異なりますので、それぞれコースを用意しています。
企画営業コース(コーポレートスタッフや営業職)は3日間の対面を予定しています。医療従事者や患者さんなど、色々な目線を体験してもらいながら製品を知ってもらいます。実際に医療機器に触れ、テルモの想いを感じてもらいたいと思います。
開発技術職コースは、医療業界について理解を深めてもらい、テルモが長年培ってきた高い技術力、もの作りの醍醐味、面白さ、可能性を体感してもらえるような内容を考えています。理系の方が対象ですが、自分の専門以外の分野にも興味関心を広げられる機会にしてもらいたいと思います。
ーー就活生にメッセージをお願いします。
佐:みなさんは色々なことを経験して、スキルや特性を持っていると思います。今までの経験で何に心を動かされ、なぜ頑張れたのかを振り返りながら、自信を持って就職活動を頑張ってください。テルモでは、よく「ATM(明るく楽しく前向きに)」という言葉を耳にします。これは就職活動でも重要な要素だと思います。
大:就活を始めると、企業も多く、自分がやりたいことが何で、どの会社がいいのか分からなくなる時期があると思います。企業研究や自己分析で自問自答することがあると思いますが、その自分と向き合う時間はその後に役立つと思います。オンラインでも対面でも、いろいろな企業の方の話を聞くのが良いと思います。
佐藤 千夏(さとう・ちか)麻布大学卒業後、人材サービス会社を経て、2010年カリディアンBCTへ転職。2011年、M&AによりカリディアンBCT(現テルモBCT)がテルモグループの一員になり、2022年まで血液関連製品の営業を担当。2023年1月にキャリアチャレンジ制度を使用して、人財開発室へ転籍。営業職・コーポレートスタッフ職の新卒採用を担当している。
大室 文乃 (おおむろ・あやの) 国際基督教大学卒。2022年4月にテルモ株式会社に新卒で入社。採用・育成を担う人財開発室に配属され、内定式・入社式などの内定者フォローアップ、企画営業コースやグローバル人財、SEコースの新卒採用を担当している。