地域の学生を街づくりの主役として受け入れ、住民とともに未来を築いていく。東京都世田谷区の商店街「ハッピーロード尾山台」の試みは、同じ学生として、とても興味深い取り組みです。「おやまちプロジェクト」代表で、学生との協業を仕掛けた商店主、高野雄太さんにインタビューしました。(法政大学・神田明日香、写真も)
世代や性別を超えた新しいつながりが必要
――プロジェクト発足のきっかけを教えてください。
「商店街の現状をみて『これからの時代は世代や性別を超えた新しいつながりが必要になる』と感じていました。街の未来をどうすれば描けるのか。商店街にも近い東京都市大学に『ダメもと』で行き、地域連携の担当部署に問い合わせました。そこで坂倉杏介教授と出会いました」
「尾山台の未来はもっとよくなる」と話す高野雄太さん
――プロジェクトは順調に進みましたか。
「発足当初は活動の目的が見えにくかったですね。このためモチベーションを維持することも難しかった。単なる商店街の活性化ではない、学生のキャリア教育でもない。『世代や性別を超えた新しいつながりを作る』という意識を共有できるまで、1年はかかりました」
「ワークショップを開いても集まるのは80人ほどです。しかも事前に声を掛けないと集まらない。やりたいことを楽しくやっていれば自然と人が集まってくる。これが理想でしたから」
ハッピーロードの未来を共に作る
――これまでの活動実績は。
「40件ほど企画しました。お母さん世代の『子ども食堂をやりたい』という声を受け、保育園で実際にやってみました。近くの農家さんから、形の悪い野菜をわけてもらい、カレー食堂を開いたりもしています」
学生たちによるカフェも活動の一つだ
――商店街に変化はありましたか。
「個人経営のお店が増え、以前より活気づいてきています」
――大学生との共同作業をどうみていますか。
「学生は本当によくやってくれています。色々な人と話もする。自主的で前向きです。デジタルネイティブ世代なのでツールの使い方も詳しい。世代が違うから考え方も違う。だからこそ、新たな価値観を学ぶ機会になっています。学生に対しては『しなさい』とは言いません。一緒に新しいものを作り出す仲間として接しています」
――尾山台の未来をどう描いていますか。
「『自分たちの暮らしを自分たちで良くしていきたい』と思ってくれる人が、もっと増えればいい。受け身のままでは、本当にやりたいことができているのかどうか、わからないですよね。一人ひとりが主体性を持つことで、尾山台の未来はもっと良くなると考えています」
(「大学生が取材しました」は、毎月第1水曜日の読売新聞朝刊「SDGs@スクール」面に掲載しています)