子どもたちに科学の魅力伝える ~ 大学生が取材しました

身近にあるものを使って関心を持ってもらう

 宇都宮大学の学生団体「子ども科学ラボ」の実験教室は、子どもたちの笑顔が印象的です。「DNAって何?」「どうしてこうなるの?」――。質問攻めにあう農学部3年の斎藤すみれさんにも笑顔が絶えません。斎藤さんはどんな思いで「子ども科学ラボ」の活動を始めたのでしょうか。

(聞き手・日本大学 田村杏菜、写真も)

 

「地域や環境でできないこと」無くしたい

 

――科学に興味を持ち始めたのはいつ頃ですか。

 

 「『宇宙兄弟』や『空想科学読本』などを読んでいた影響で、小学生の頃から夢中でした」

 

時間がかかるろ過の作業。子どもたちも夢中だ

 

――科学への関心が「子ども科学ラボ」に行き着いたのはなぜですか。

 

 「私が生まれ育った地域では、学校の授業や本を読む以外、科学に触れる機会はありませんでした。高校に進学して同級生から、地域によっては小中学生が参加できる実験教室があると聞きました。地域や環境によって好きなことを出来たり、出来なかったりするのはフェアじゃない。そう強く感じて『子ども科学ラボ』の活動を始めました」

 

 「まずは栃木県内で活動している実験教室で助手を務め、実験の教え方や子どもへの対応を学びました。その後、大学の先輩を介して宇都宮市峰地区の小学校で工作教室をされている方に出会います。協力を得られたことで、大学1年の11月に『子ども科学ラボ』の実験教室をスタート出来ました」

 

 

――実験教室で特に心掛けていることはありますか。

 

 「子どもがけがをしてしまえば実験は大失敗です。本番前に試しに実験を行い、安全管理を徹底しているため問題はありません。ただ、終わってみれば『こういう説明の方がわかりやすかったかな』『ここで休憩を取っていれば、子どもたちの疑問を解消できる時間を作れたかな』と反省することばかりです。『大成功』と思うことも少ないですね」

 

「失敗」の経験も大切

 

――ブロッコリーのDNA抽出実験では、家にあるような道具を使っていました。

 

 「ろ紙はコーヒーフィルターで代用できます。家に帰って再現できることを重視しています。実験教室以外で科学に触れられる時間を増やせたらうれしい。再現実験は失敗してもいいんです。失敗の経験も大切ですから」

 

教室では終了後も子どもたちの質問が絶えない

 

――子どもたちからはかなり専門的な質問もあったようです。

 

 「アニメやゲームを好きになるのと同じ感覚で、ただ純粋に科学が好きなのだと思います。子どもにとって、質問を聞いてくれる先生がいるというのは、とてもうれしい。そんな気持ちはよくわかります」

 

――苦労もあるのではないですか。

 

 「打ち合わせやメールのやり取りなど、子どもに接するよりも大人とのやり取りの方が時間がかかりますう。それでも多分、実験教室を一番楽しんでいるのは私だと思います。自分が楽しいと思えることを子ども達にも楽しいと思ってもらいたい。こんな気持ちで活動を続けています」

(「大学生が取材しました」は、毎月第1水曜日の読売新聞朝刊「SDGs@スクール」面に掲載しています)

 

(2023年7月 5日 03:00)
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