大学生 サーキットを駆ける ~ 箕輪卓也さんインタビュー

 

 自動車大国として世界に知られる日本ですが、最近「若者の車離れ」も指摘されています。そんな中、レーシングドライバーとしてプロとしのぎを削る大学生がいると聞き、取材しました。

(國學院大學・佐藤彰紀、写真も)

 

過酷・24時間耐久レース

 

 国内外のレーシングカー約60台が、24時間後の優勝を目指して駆け抜けていきます。5月26日から28日にかけて富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開催された「24時間耐久レース」。1周4563mのコースを、3人から6人のドライバーが交代しながら24時間を走り続ける過酷なレース。優勝チームは700周以上も走る計算になります。

 

 

 約60台が8つのクラスに分かれた大会。プロのドライバーたちに交じって24時間を走り抜き、ST-5クラスで12台中6位に食い込んでみせたのは、関東学院大学理工学部4年生の箕輪卓也(みのわ・たつや)さんです。機械工学や自動車の構造について学びながら、各地を転戦しています。3年生だった2022年には、参加者全員が同じ仕様の車に乗り、運転技術を競う「ワンメイクレース」でシリーズチャンピオンを獲得した実績もあります。

 

 箕輪さんは、自動車整備士の父・大(だい)さんの影響で、幼いころから自動車に囲まれて育ちました。家には「グランツーリスモ」という本格的なドライブシミュレーターがあり、4歳の時には大さんの膝の上に座って遊んでいたそうです。始めてハンドルを握ったのは、中学卒業後の春休み。大さんに連れられて訪れた「イタコモータースポーツパーク」(茨城県潮来市)で、競技用のレーシングカートを体験しました。スピード、エンジンのパワー、タイヤのグリップ――。「とにかく速かった」。本物のレーシングカーの虜になりました。

 

父親と二人三脚

 

 専門学校で大さんと同じ自動車整備士を目指すか、大学に進学するかを迷った箕輪さんでしたが、祖母・洋子(ようこ)さんの「大学は出ておいた方がいい」という言葉で、大学への進学を決意しました。猛勉強の末、合格を果たした箕輪さん。大学に通いながら、各地のレースを転戦する生活が始まりました。大さんのサポートで1年生の2月から本格的に練習を開始。2年からは、全員が同じ仕様の車に乗り、運転技術を競う「ワンメイクレース」をメーンに活動しています。

 

 レースと学業の両立は簡単ではありません。テスト期間とレースが重なるときは、サーキットに向かう飛行機で授業のノートを見返すこともあります。「家族に支えられてレースができている」と話すように、レース会場まで、大さんが3日がかりで積載車を運転してレーシングカーを運んでくれたこともありました。

 

 

 「大学卒業後もモータースポーツと関わり続けたい」と話す箕輪さん。目標は国内最高峰のレースである「スーパーGT」に出場すること。高校時代までは、車やレースに興味がある友人もほとんどいなかったそうですが、今では活躍を知って、多くの旧友が応援してくれています。「ライブ配信を見て、楽しみに応援してくれているのが励み」と目を輝かせます。周囲への感謝を胸に、今日もサーキットを駆け抜けます。

 

(2023年9月23日 23:00)
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