東京ドーム大規模有観客防災訓練の現場から ~ 大学生が取材しました

応急救護所にはストレッチャーでけが人が運び込まれた

 

 

 東京ドームで3月20日に行われた初の大規模有観客防災訓練は、むやみに移動しないことと情報の大切さを教えてくれました。私たちキャンパス・スコープ学生記者は、2人が観客として訓練に参加し、2人が取材を担当しました。約8000人による訓練の模様をお伝えします。(慶応大・小田切芳奈)

 

地震に強いドーム ■ 情報で冷静に ~スタンドから

 

 千葉ロッテマリーンズとのオープン戦終了後、スタンドには約8000人が残り、まず、訓練エリアの内野1階スタンドに移動しました。私は1塁側の最前列で訓練が始まるのを待ちました。想定は「試合中に震度5強の地震発生」です。

 

 グラウンドで巨人軍公式マスコット・ジャビットとマスコットガール・ヴィーナスがパフォーマンスを披露していたその時、球場内のメインビジョンに「緊急地震速報を受信しました」と表示されました。警備員や係員は「けがをした方や気分の悪い方は手を挙げてお知らせください」とスタンドに目を配りながら、階段を往復しています。「その場でお待ちください。東京ドームは安全です」というアナウンスが繰り返し流れました。(大妻女子大学・上野彩賀)

 

 ドームの安全性を伝えるメインビジョン

 

 外はどうなっているのでしょう?知りたいと思ったところで、メインビジョンには交通情報が掲示されました。総武線、南北線......すべて「運転見合わせ」です。すぐには帰宅できません。

 

 「あてもなく外に出るより、ドーム内にいる方が安全ではないか」

 

 こう思い、その場にとどまるように求める場内アナウンスにも納得できました。「情報」が焦る気持ちを抑えてくれました。(慶應義塾大学・小田切芳奈)

 

自衛消防隊で鎮火~2階コンコース

 

 ホットドッグやフライドポテトなどの売店が並ぶ2階コンコースでは、消火訓練が行われました。スモークマシンによって白煙が吐き出されると、スタッフから、口元を覆いながらその場を離れるよう求められました。別のスタッフ2人が消火器で初期消火にあたります。

 

 

 火災を想定しスモークマシンが白煙を噴出した

 

 火元に近いスタンドの観客は、下方の移動するよう、係員に誘導されていました。現場には自衛消防隊の3人が到着、間もなく鎮火しました。(上智大学・津田凜太郎)

 

けがの具合で色分け~1階コンコースから

 

 1階コンコース中央「V字階段」下には応急救護所が設けられました。医師1人、救急救命士3人、メディカルサポートスタッフ5人が待機していると、けが人が付き添われて階段を降りてきました。メディカルサポートスタッフが容体を聞き取りメモに書き残します。腹部を押さえた人、足を引きずる人......けがの具合に応じて、緑、黄、赤などで色分けされたビニールシート上の椅子に座っていきます。

 

 「30代男性、急病人がストレッチャーで運ばれてくる」

 

 こんな情報が入り、拡声器を手にしたスタッフが「ストレッチャーが通ります」と周囲に注意を促しながら運び込みました。

 

 東京消防庁から応援が到着すると、スタッフが「緑に8人、黄色に2人、赤に1人」と色ごとに分けたけが人の数を報告、「救急車2台お願いします」と要請していました。(明治大学・土田麻織)

 

参加者の声

 東京ドームでの大規模防災訓練について、参加者は何を思ったのでしょうか。取材に応じていただいた方々の「声」をお届けします。

 

 係員の指示に従って退場する観客

 

 「メインビジョンに地震や被害の状況が表示され、大勢のスタッフによるマイクを使った声掛けと誘導があった。視覚的にも聴覚的にも安心感を持てた」(東京都・70歳代女性)

 

 「『ドームで観戦している最中に地震が来た』という想定はあまりしたことがなかった。いい経験になった」(千葉県・60歳代男性)

 

 「ドームの構造に関しては安全だと安心した。緊急時では人の方が怖い。規制退場では係員が『混雑しているので隣のゲートから出てください』とアナウンスをしていた。後ろ人は自分で状況を確認できず、不安になるのではないか。問題点がわかったことも含めて、良い訓練になったのではないか」(東京都板橋区・60歳代男性)

 

 「東京ドームの耐震性や仕組みを動画で見ることができ、安心できた」(東京都・20歳代大学生女性)

 

 「東京ドームはとても広い。今回は人数を絞っての訓練だったが、満員状態で地震が起きたらどうなるか。スタッフの声かけがわかりやすく、安心した」(東京都・30歳代公務員女性)

 

(「大学生が取材しました」は、毎月第1水曜日の読売新聞朝刊「SDGs@スクール」面に掲載しています)

 

(2024年4月 3日 05:30)
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