絵本で学ぶSDGs 〜メリープロジェクトの取り組み

 子ども達がSDGsについて考えるきっかけはどのように作ればよいのでしょうか。7月に行われた「MERRY SDGs ART GARDEN」では、子どもたちが野菜収穫やSDGsの絵本『みんながヒーロー SDGsとまほうのカギ』(中央公論新社)の読み聞かせを通して、身近な自然について考えました。イベント主催者であり、同絵本を作成した「MERRY PROJECT」(メリープロジェクト)代表兼アートディレクター・水谷孝次さん、デザイナー・金田あさみさんにお話を伺いました。(日本大学・田村杏菜)


 

 メリープロジェクトは、「笑顔」をテーマに、アート・デザインの力でMERRY(楽しいこと、幸せなこと)の輪を広げるコミュニケーションデザインプロジェクトです。1999年から24年間にわたり、世界35か国5万人以上の"笑顔"を取材。2008年北京オリンピック開会式、2005年愛知万博「愛・地球広場」、東京2020年オリンピックパラリンピック競技大会、そして現在は、2025年大阪・関西万博共創パートナーと して、世界各国で笑顔を通じたアクションを実施しています。


 

 なかでも、力を入れてきたのは世界中の子供達への教育支援活動です。SDGs絵本の制作や、田植えや野菜収穫など季節ごとに子ども向けイベントの主催などの活動を続けています。プロジェクトの多くは「自然」に関係しています。水谷さんは、「人間は自然と共にあって、中でも笑顔は最も自然な姿。テクノロジーに叶わない人間の笑顔の偉大さに立ち返るため」と理由を説明します。

 

 7月26日のイベントは、六本木ヒルズなど高層ビル群に囲まれた港区六本木にある建物の屋上農園MERRY ART SDGs GARDENで開催されました。


 港区の教育格差・体験の貧困を解決することを目的としたプログラムとして、令和5年度港区NPO活動助成事業や、「TEAM EXPO 2025」プログラム/共創チャレンジに認定されています。立派に育ったオクラやトマト、ナス、キュウリなどの野菜は、自然が少ない都会に暮らす子どもたちに、「野菜を収穫する楽しさや感動を感じてほしい」と、プロジェクトメンバーが丹精込めて育てました。「太陽の厳しい日差しや、野菜を食べにくる鳥から守るのには苦労した」と水谷さん。

 

 「くるくる曲がった"おばけきゅうり"獲った!」 。子どもたちは野菜収穫に大盛り上がり。また、保護者たちも「オクラってこうできているんですね」と屈んで野菜をじっと見つめます。

 

六本木の街に出てクリーンアップ活動を終えた後は、絵本『みんながヒーロー SDGs とまほうのカギ』(中央公論新社 刊行)の読み聞かせが始まりました。本作は、ものごころがつく(知恵がつき、育まれる)3歳からの幼児へのSDGs教育を目指した絵本です。


みんながヒーロー SDGsとまほうのカギ

MERRY PROJECT 作

「子どもたちが人生で一番はじめにふれるSDGsの絵本」がコンセプトの絵本で、付属のカギを使って秘密のページを開けていくうちに、自然にSDGsに触れることができるようになっている。キーワードを唱えながらカギでページを開けると、笑顔で飛び立つカモメが目に飛び込んでくる。魔法のカギ、キーワード、涙と笑顔──。カモメを助けるヒーローは絵本を手にしている自分自身。ページを繰りながら、それに気づく工夫が施されている。

 人間が捨てたゴミに困っているカモメや、暑さにうなだれるホッキョククマなどSDGs に挙げられる環境問題がイラストで描かれ、「見習いヒーロー」の主人公が、何をしたらよいかを示しながらまほうのカギで問題の扉を開けていきます。子どもたちは、付属の「まほうのカギ」を使って実際に手を動かし、「カチャカチャ、ガッチャン」 と唱えながら読み聞かせに引き込まれていきます。

 

 「実際に自分が絵本の中に入ったイメージで、自分でアクションすることで何か変化が 起きるということを分かってほしかった」。絵本のイラストを担当した金田さんは、仕掛け絵本にした理由をこう語ります。主人公は絵本の対象年齢と同じ年頃の小さなヒーロー。地球を救うなど日常からは程遠い話だと思ってしまいがちですが、ただごみを拾う、電気を消すなどの些細な行動が環境問題を解決する大きな一歩に繋がっています。「誰でも地球の未来を救うヒーローになれる」というメッセージが秘められているのです。

 

 子どもたちは、まほうのカギによって元気になっていく生き物や植物を見ながら嬉しそうです。八木瑞貴くん(10)は「暑がっているホッキョクグマに驚いた。SDGsについてもっと知りたい」と話してくれました。

 「SDGsのファーストアクションは笑顔で、ゴールも笑顔です」。社会課題との向き合い 方について水谷さんはこう語ります。 まずは、あなたが笑顔になれることを行えば、周りも笑顔になり平和が生まれる。小さな平和は大きな平和に繋がり、ゴールには「みんなの笑顔」が待っています。そんな些細な行動の大切さを、自然との触れ合いや絵本を通して子どもたちと一緒に学べたと思います。

 

MERRY PROJECTのイベント情報

■8月26日(土) 触れて学ぼう!真夏の大収穫フェスティバル

六本木の屋上農園で、夏野菜の収穫祭を実施。SDGsについて聞いて見て学ぶ「SDGs劇場」では、絵本「みんながヒーロー」や、「みんなのSDGs」絵本の読み聞かせも行います。そのほか、街中クリーンアップや、歌とダンス・音楽で繋がるコンテンツが盛りだくさん。

詳しくは>>>>こちら

■10月7日(土) 芸術の秋!稲刈りとアートで地球を学ぼう

六本木の屋上農園で、稲刈り体験!

SDGsについて聞いて見て学ぶ「SDGs劇場」では、月20日発売のSDGs絵本「みんながヒーロー」や、「みんなのSDGs」絵本の読み聞かせ!

そのほか、街中クリーンアップや、歌とダンス・音楽で繋がる「MERRY SING & DANCE」など、親子で楽しみながら学べるコンテンツがいっぱい!

個性豊かな講師と一緒に、自然とアートに触れ合えるMERRYな一日を楽しもう!

詳しくは>>>>こちら

(2023年8月22日 18:52)
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