かえつ有明中学高等学校(東京都江東区、石川一郎校長)は6月19日、生徒が主体的に取り組む学習方法「アクティブ・ラーニング」の研修会を開いた。教員が行った公開授業には、全国の私立中学・高校の教職員ら約100人が視察に訪れた。
公開授業は、各教科の教員が8つの教室に分かれ、中学1~3年生のクラス向けの実践教育をそれぞれ披露した。
美術科の井上樹里教諭は2年の男子クラスで、「情報の統合と共有」をテーマに授業を行った。まず、1枚の絵を黒板に貼り、その絵に関する「事実」と「意見」を書き込むよう促した。
その絵は、長い階段をのぼる男性っぽい人の後姿や赤い風船などが描かれている。
生徒たちはグループごとに話し合いながら、ポストイットに思いついたことを書き込んだ。
「事実」として挙げられたのは、「階段がある」、「手すりがある」、「赤い風船が2つある」、「男性が1人いる」、「奥に光がある」など。
一方、「意見」は、「暗い」、「さびしい」、「孤独」、「トンネルの中?」といったコメントが並んだ。
続いて、井上教諭は絵を部分的に切り取った3種類のピース絵を配り、同じように「事実」と「意見」を書くよう呼びかけた。
すると、階段だけがクローズアップされたピース絵を見た生徒は、階段の段数を「事実」として記入したり、赤い風船が大きく浮かぶピース絵を手にした生徒は、逆さまにして「さくらんぼに見える」という「意見」を出したりした。
生徒が考え、作業をしている間、井上教諭はこまめに歩き回り、「絵の再現は明確、正確、具体的に」、「それ、面白いね」、「自分の言葉で書いてみて」などと声をかけ、「気づき」が出てくるよう心を配った。
こうして、同じ絵に対する見方や解釈が変わることを綴った冊子を生徒がそれぞれ作成した。「皆さんの発想の詰まったストーリーの冊子です」。井上教諭からこう言われ、生徒たちは冊子を交換して読み比べた。
井上教諭は「意識的に視点を変えると、物事の理解がより深まります」と授業を締めくくった。
別の授業では、同じ絵を題材にして物語を書いたり、色とイメージの関係を考えたりする学習が行われた。
このほか、英語のグループディスカッションなども行われた。
視察した教職員は熱心にメモを取り、効果的な学習法などをめぐって意見を交わした。