日常の思い 詩に乗せて ~ 千葉の小6が2度目の「宗左近賞」

国府台女子学院小学部(千葉県市川市)

 

 国府台女子学院小学部(千葉県市川市)の芳賀菫(すみれ)さん(6年)が、北九州市立文学館が主催する「あなたにあいたくて生まれてきた詩」コンクールで最優秀賞に輝きました。3年生だった2021年度に続く受賞で、芳賀さんは「これからも詩を書き続けていきたい」と張り切っています。

 

2度目の宗左近賞

 

 北九州市が生んだ詩人・宗左近と、みずかみかずよにちなんだコンクールは、今回で14回目。全国の小中学生から1206作の応募がありました。小学生の部で最優秀賞となる宗左近賞に輝いた芳賀さんの作品のタイトルは「小さな池と大きな世界」。5年生の夏休みに長野県の軽井沢で体験したニジマスのつかみ取りの様子をつづっています。「人間たちは楽しそうに遊んでいる」「魚たちは一生懸命逃げている」という対比から、「この大きな世界の中で 魚はつかまり 人間は食べている」と結ばれた作品を、最終選考委員を務めた詩人で作家の平出隆さんは、「魚を捕って食べる普通の生け簀(す)も、客観的な語り口で一気に宇宙論になる」と講評しました。

 

 

 

緊急事態宣言下の自宅学習きっかけ

 

 芳賀さんが詩を書き始めたのは2年生だった2020年の5月のこと。緊急事態宣言で自宅学習の日々が続く中、母・桃子さんが大好きな詩人・金子みすゞさんのドキュメンタリー番組を一緒に見たのがきっかけでした。初めて書いた詩のタイトルは「むらさき色のマスクちゃん」。コロナ禍のマスク不足で、祖母から贈られた布製のマスクがテーマでした。日常のふとしたきっかけで「詩が自然に口から出てくる」という芳賀さん。生まれたばかりの弟・匡基(まさき)さんへの思いなどがどんどん溢れてきます。出てきた言葉は桃子さんが書き取りました。やがて、芳賀さんが毎日のように自宅学習ノートにつづるようになった詩を読んだ、当時の担任・中嶋信子先生から、コンクールへの応募を強く勧められました。3年生で初めて応募した第12回の同コンクールで、宗左近賞を初受賞。以後、学校がある市川市のコンクールなどでも数々の賞を受賞しています。これまでにつづった詩は1000件を超えました。

 

 

 母・桃子(右)さんのサポートで成長を続ける芳賀さん

読書指導が教育の柱

 

 芳賀さんが通う国府台女子学院では、1926年の創立以来、読書指導を教育の柱にしています。「まだしゃべれない弟さんの気持ちや、弟さんに対する自分の思いを詩に表現していて、優しい気持ちが伝わってきた」。中嶋先生は、芳賀さんの詩を読んだ印象を振り返ります。「受賞でさらに力を付けている。ファンとして、新しい作品を楽しみにしています」と励ましています。

 

 

「大好きな金子みすゞさんのように」

 

 受賞をきっかけに、芳賀さんは学校がある市川市との縁についても知りました。1978年から、2006年に亡くなるまで市川市に暮らした宗左近は、東京大空襲で母を失った過去を描いた詩集「炎える母」などで知られます。副賞として贈られたこの詩集を読んだ芳賀さんは、初めて出会った長編の詩に圧倒されました。「こんなにつらい気持ちを詩にできるなんて――」。最初の方を読んだだけで涙があふれてしまい、悲しくて眠れなくなってしまったそうです。「炎える母」に向き合えるようになったら、学校の近くにある宗左近の歌碑を訪ねてみたいと考えています。最近では、7歳離れた匡基さんも、真似をして思いを言葉に乗せるようになりました。きょうだいで刺激し合いながら言葉を紡ぐ芳賀さん。「大好きな金子みすゞさんのような詩人になりたい」と話しています。

(2024年5月 1日 08:00)
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