慶大リレー講義 岐路に立つ改憲


 慶応義塾大学で読売新聞東京本社が実施するリレー講義「冷戦後30年の現代史」の第5~7回は「岐路に立つ改憲」と題して行われた。講師は同社調査研究本部の舟槻格致主任研究員が務めた。当時の新聞紙面を紹介しながら、核抑止力が基本となる国際政治の現実主義の立場で日本の安全保障や憲法改正論議の歩みを語った。


 舟槻主任研究員は長年、政治部記者として首相官邸や与党クラブ、外務省などを担当し、沖縄基地問題も取材した。専修大でも政治ジャーナリズム論を教え、「政治はどう動くか」(書肆侃々房=しょしかんかんぼう)などの著書もある。


 講義では、日本国憲法は長年、集団的自衛権について「保持はしているが行使できない」と解釈されてきたが、北朝鮮の核開発などに懸念が高まる中で、解釈変更が議論されるようになった経緯を説明。憲法解釈について政府見解を中心に詳しく解説した。


 改憲についても1991年の湾岸戦争をきっかけに、読売新聞社案など、様々な試案が出てきたことを紹介。国会では、与野党協調による議論を重ねてきたものの、足踏みを続けていることを説明した。「改正はいずれ避けられないが、平和主義や人権などの実効性を高める方向で行われる必要がある」と話した。


 講義中は随所で、取材を通じて知り得た防衛省や内閣法制局、自民党、立憲民主党の幹部らによる集団的自衛権や改憲などに関する生々しい発言を取り上げ、公式発表だけでは見えてこない政界内部の動きにも触れた。


 受講した学生からは「憲法9条の解釈は国際関係の変化に応じて変更されてきたという点が興味深かった」「世界の変化を現場で目撃できる記者の仕事はやはり魅力的だと感じた」などの感想が寄せられた。

(2021年6月10日 20:06)
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