偽の情報見抜く 埼玉県立三郷高で出前授業
ニュース・リテラシーの重要性を語る鈴木専門委員(11月9日、埼玉県三郷市で)
情報の真偽を見抜く力を養う「ニュース・リテラシー教育」(NLE)の出前授業の第1回が11月9日、埼玉県三郷市の県立三郷高校で行われました。読売新聞教育ネットワーク事務局の鈴木美潮専門委員が講師を務め、急増するフェイクニュースの特徴などを教えました。
授業には1年生約120人が参加。鈴木専門委員は、今年9月の静岡県の大雨被害を撮影したとされた偽画像などの事例を紹介し、「情報社会で誰もが発信者になる。その情報がいつのものか、常識的におかしくないか、疑うことが大切」などと述べました。
そして、読売新聞の過去記事を掲げながら、「ここ20~30年の急激な変化で私たちは情報の洪水の中にいる。かつては情報収集力が重視されたが、現在は正しく見極める力が重要」と説明。スマートフォンやSNSなどを通じ「誰もが簡単にニュースや情報の発信者になれる時代になった」と指摘しました。
こうした背景をもとに、インターネットには一見すると真実に見えるフェイクニュースが急増しています。鈴木専門委員は、熊本地震の直後に「動物園からライオンが逃げた」とされた偽画像や、今年9月の静岡県の大雨被害を撮影したとされた偽画像、新型コロナウイルスを巡るでたらめな予防法や治療法などの事例を紹介しました。
また、巧妙なフェイクニュースは真偽不明なまま拡散するとし、「見極めるには〈1〉いつの情報か調べる〈2〉常識的におかしくないか考える〈3〉複数のキーワードで検索して確認する」ことを強調。ツイッターで知っても「簡単にリツイートしない、シェアする前に考える、スルーする力を身につけて」と訴えました。
こうした力を養うため、鈴木専門委員は「一つの事柄を多角的に検証し伝える新聞は有効。栄養に例えると、ネットの情報は偏るが、新聞はバランスよく情報摂取ができる。新聞を使いこなしてほしい」と呼びかけました。
出前授業に参加した秋葉丈二さん(15)は「フェイクニュースには気を付けていたが、静岡の大雨の偽画像にはだまされた。これからは冷静に見極めたい」と語りました。望月瑠那さん(15)も「疑うことなくネット情報を信じていた自分に危機感を覚えた。新聞などでニュース・リテラシーを向上させたい」と話していました。
今回のプロジェクトは読売新聞東京本社と朝日新聞社、毎日新聞社、日本経済新聞社の4社が連携する取り組み。埼玉県内では今年度、さらに8校で出前授業が行われます。