学びのしおり 教育ネットワークこぼれ話

 あなたの「学び」をもっと楽しく。そんな思いを込めたコラムをお届けします。本の「しおり」のように、休憩中やスキマ時間にそっと挟んでください。

誰もが読書を楽しむため 一歩ずつNEW

 「すごい! ぐりとぐらで手触りが全然違う」

 名古屋市で9月に開かれた「バリアフリー図書」の普及イベント。点字つき絵本「ぐりとぐら」を手にとった高2の男子生徒が、驚きの声をあげた。

 みなさん一度は読んだことのある絵本なのではないか。点字つき絵本では、特殊な凹凸のつけられるインクで、「ぐり」の服は縦の模様、「ぐら」は点々で描いている。文章を点字にしているくらいだろうと考えていた私も、その配慮・完成度の高さに感銘を受けた。

 そんな工夫の徹底ぶりに興味を持ったためだろうか、20種類ほどのバリアフリー図書が展示された会場では、一緒に来場したほかの2人の生徒も、質問を繰り返し、熱心にメモをとる姿が印象に残った。

「てんじつき さわるえほん ぐりとぐら」作:なかがわりえこ/絵:おおむらゆりこ/福音館書店

 読書バリアフリーは、障害の有無にかかわらず、誰もが読書を楽しめることを目指す。点字つき絵本のほか、文字を大きくした本、触って楽しむ布絵本などがある。ただ、日本での歴史はさほど古くないのだろう。点字は200年ほど前にフランスの盲学校の生徒が考え出したのが初めとされる。日本で点字つき絵本が出版社によって本格的に作られるようになったのは、2000年代に入ってからだ。

 さて、3人は会場から歩いて10分ほどにある名古屋中学・高校の生徒さんたちだ。聞けば、ボランティアなどに参加する部活動の一環として、訪れてくれたのだという。

 ここで生まれた小さな興味が、誰もが本や活字を楽しめる社会に向け、少しでも後押しとなってくれたら。イベント運営者の一人として、心からそう願った。

糟谷 友幸(2026年10月13日)

我が師は小学生

 三人行えば、必ず我が師あり。

 「3人が行動をともにすると、必ずその中に手本とすべき人がいるものだ」。そう説いた論語の一節を思い出しました。先生が年上とは限りません。私の「師」は小学生でした。

 10月3日、東京・池袋で小学生12人が参加して、ビブリオバトルのワークショップが開かれました。ビブリオバトルとは、おすすめの1冊を持ち寄り、みんなの前でその魅力を発表する書評ゲームです。最後に投票で、みんなが最も読みたいと思った本=チャンプ本を決めます。

 いざ始まると、小学生たちは用意された付箋に一斉に鉛筆を走らせ、発表内容を手際よくまとめていきます。会場はとたんにピリピリとした緊張感に包まれました。

発表内容を付箋にまとめる参加者たち

 予選から勝ち上がった3人による決勝で、チャンプ本に選ばれたのはミステリー小説「謎の香りはパン屋から」。この本を紹介した5年生の「優勝インタビュー」に、はっとさせられました。「ほかの人の発表を見て、読みたい本がたくさん見つかりました。また来年来たいです」。

 自分が勝った喜びよりも、知らなかった本を知ることができたうれしさが、自然と口からこぼれていました。また、決勝には勝ち上がれなかったけれど、12冊の「推し本」の一覧表に、自分が読んでみたいと思った本に星印を付け、うれしそうに持ち帰る参加者もいました。

 かくいう私も、ある参加者の「おすすめの1冊」が気になり、早速購入しました。大人が児童書を読んではいけないという決まりはありませんよね。彼らの発表を見て、背中を押されました。

 ビブリオバトルには、勝ち負けだけでは測れない価値がある。そう小学生たちから学ぶことができました。

石川 剛(2026年10月8日)

学校で金融教育じゃなく「お金の話」をするということ

 入社してから営業畑を歩んできた。どうしても「収益出さなきゃ」という言葉が口をついて出る癖がある。あらゆる事業が継続していくためには、やっぱりお金のことを考えるのは大事なことでもある。

 さて、これまで「教育」の現場では、お金の話をするのは不謹慎だという空気が少なからずあったように思う。もちろん品のない営業活動とか、利益優先のお金儲けはお断りだが、民間企業と学校が交流し、そこから発生するビジネスがもっとあってもいいんじゃないかと思う。

 

 秋は中学校、高等学校で文化祭が多く開催される時期。以前私が取材したある私立の学校では、学園祭の会場に人気の「キッチンカー」を導入して飲食を任せ、学園祭を盛り上げよう!と実行委員会の生徒が決めたところがあった。

 

 生徒たちは初めて学校の先生以外の大人たちと「交渉」することになる。大人たちが利益を上げるために何を考えているのか。生徒たちは学校の外の大人の真剣な考えに、生まれて初めて触れる。もしこの数日間の体験が自分の将来を考える機会になるとしたら。起業に関心を持つ生徒が出るかもしれない。大学で経営学を学びたいと思うかもしれない。はたまた「ものを買いたくなる」心理について研究を深めたいという生徒が出てくるかもしれない。そういう場が学校に一時的にでも用意されるだけで、さまざまな可能性が広がってくるのではないか。秋はそんなことを思う季節でもある。

藤井 賢(2026年10月5日)

日直の「お仕事」

 ニュースの森──。そう題したコーナーが、東京都日の出町の町立大久野中学校の職員室前に設けられていた。

 読売新聞を含む各紙が読みやすいように置かれ、一定期間分がまとめてとじられている。先生に尋ねると、各クラスの日直を務める生徒は、担当する新聞から気になった記事を探し出し、付せんを貼り、帰りの会で発表するそうだ。活字離れや新聞離れが指摘されて久しい折、紙を使った学びに、思わず顔がほころんだ。

 同校には、主権者教育の「出前授業」で訪れた。生徒たちは紙の新聞に慣れ親しんでいるからだろうか、外部講師の話をみなまじめに聞いてくれた。1票の重要性を知ってもらうため、票が同数だったために法廷でまで争われることになった茨城県神栖市長選の事例を紹介したところ、実は直前の授業で社会科の先生がこの記事を取り上げてくれていたそうだ。狙ったわけではないが、先生とも歩調が合ったようでうれしい。

 読売新聞は、紙の新聞はもちろんのこと、様々な取り組みで子どもたちの学びを支え、先生にもゆとりを持ってもらおうと注力している。

 孤掌難鳴こしょうなんめい。片方の手のひらだけで音は鳴らない。新聞を受け止めてくれる学びの現場がまだあることに、張り合いを感じる。

米川丈士(2026年10月1日)

最終更新日

(2026年10月13日 17:25)
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