2030 SDGsチャレンジ

伝統の柿渋活用でレジ袋削減 京都・木津高校(環境再生保全機構理事長賞)

新聞紙も活用し独自開発

 高校生が新たな視点で環境保全や地域創生に取り組む2020年の「全国ユース環境活動発表大会」(主催=環境省、環境再生保全機構など、後援=読売新聞社)の全国大会で、環境再生保全機構理事長賞を受賞した、京都府立木津高校(木津川市)。プラスチック製レジ袋の削減につなげる取り組みとして、環境に優しい「柿渋バッグ」の可能性を提案し、審査員たちから高い評価を受けた。

 

 同校システム園芸科の「ソーシャルビジネス研究班」が「Kakishibuを世界基準に」と題して取り組んだ研究の成果を発表した。地元特産の渋柿からできる成分「カキタンニン」を、新聞紙などで作ったバッグの表面に塗って強度を増し、レジ袋にも負けない袋を開発した。

 

 メンバーで「天然素材で紙製品の強度を上げる方法はないか」と議論を重ねる中で、同校がある木津川市が日本三大渋柿「天王柿」の産地であることに着目。天王柿はカキタンニンを多く含んでおり、柿渋を作るのに最適で、柿渋は和紙や糸、布などに塗布するとはっ水性や耐摩耗性が増すことから、渋柿の搾汁液を発酵させて作ったカキタンニンを紙製のバッグに塗ることを思いついた。

 

 紙製のバッグに水を入れても通さなくなり、消臭や防腐、防虫効果も確認された。関西文化学術研究都市などで昨年10月に開かれた「京都スマートシティエキスポ2019」に専用ブースを開設したところ、多くの研究者から「すばらしい取り組みだ」などと評価されたという。

 

 メンバーで2年近美夕子さん(17)は「柿渋のように、かつての日本人の生活は衣食住のあらゆる場面で完全な循環型社会を作り上げていた。今こそ、先人が残してくれた手法を学び、社会に広めなくては、と感じる」と力を込める。

 

 木津川市の河井規子市長を訪ね、柿渋利用の協力を要請した。2年高屋友里さん(17)は「私たちの活動によって、少しでも社会が循環型へと変わっていくきっかけになれば」と期待。天王柿は渋みが強く、サルも手を出さないため、害獣被害にも遭わず、地域の産業として成り立ち、「SDGs」(持続可能な開発目標)につながると感じるという。2年伊藤一紗さん(17)も「柿渋を通じて世の中の意識を変え、世界に向けても情報発信していきたい」と夢を膨らませた。


(2020年3月12日 09:00)
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