「城のある街」魅力を発信(横浜市立小机小学校)

 

 

 

 JR新横浜駅にほど近く、住宅地が広がる横浜市港北区小机町。大人たちのサポートを受けながら学ぶ中で、地域の歴史や魅力に気づき、発信を始めた子どもたちがいます。(教育ネットワーク事務局 石橋大祐)

 

歴史を知り、未来を作る

 

 「マリノスカラーの青・白・赤をジャムとクリームで表現しよう」

 

 「味がしっかりしている。何もつけなくてもおいしいかも」

 

 2023年10月12日、焼きたてのパンの香りが漂う横浜市立小机小学校の家庭科室で、3年生が意見を交わします。 

 

 話し合っていたのは「総合的な学習の時間」に取り組んだ「小机らしさがあふれるパン」の商品開発。サッカーJ1・横浜F・マリノスの本拠地・日産スタジアムや「続日本100名城」にも選ばれた小机城など、子どもたちが思う「小机らしさ」は様々です。地域のパン店「ときわや」の協力で、話し合いを重ねながら、アイデアを温めてきた子どもたち。この日の授業では、自宅から持ち寄ったジャムやクリームをパンにつけて食べ、商品のイメージを具体化していきました。 

 

 

 「お店に相談にきてくれる子もいる。楽しんで勉強してくれているのがうれしい」。指導にあたるときわやの店主・常盤豊隆さんは目を細めます。同市中区生まれで、2018年から同小の校区に店を構える常盤さんは、「横浜市中心部に近く、大きなスタジアムもあるのに、落ち着いていて住みやすい」と街の魅力を語ります。職業体験に協力していた縁もあり、同小からの商品開発の依頼を快諾しました。 

 

竹灯籠で環境学ぶ

 

 同小では、暮らす地域への思いを子どもたちに育んでもらおうと、地元で活躍する大人に連携を呼びかけてきました。「地域に育まれた素晴らしい学習環境を生かして深い学びにつなげていきたい」。遠藤淳子校長が狙いを語ります。

 

 11月4日夜、学校近くの「小机城址市民の森」で行われた「竹灯籠まつり」。公園の散策路に沿って手作りの竹灯籠3800本が並べられると、城跡を覆う竹林が淡い明かりに照らされ、幻想的に浮かび上がりました。

 

 

 所有者が手入れできなくなった竹林を市民の力で保全する活動に取り組む特定非営利活動法人「日本の竹ファンクラブ」(横浜市都筑区)が開催する市民参加型イベント。会場には、4年生が手作りした絵入りの灯籠も飾られ、竹を持ったパンダやサッカーボールのイラストなどと共に、「SDGs」のメッセージが並びました。 

 

 「人が使うことで守られる自然があると知った」。長尾柚花さんが真剣な表情で話します。竹灯籠作りを通じて、竹は成長が早く、放置すると増殖し、雑木林に侵入して生態系を損なう恐れもあると学びました。低学年にも知ってもらおうと、「SDGsクイズ」も考えました。細井颯香さんも、「後輩と一緒に学んでいきたい」と笑顔を見せます。 

 

 竹灯籠作りには、斜めに切った竹にドリルで穴を開ける難しい作業もあり、地域の大人たちのサポートが欠かせません。地元の有志として10月に行われた作業を手伝った桜井久治さんは、「自然を守るため、みんなも力を貸してほしい」と力を込めます。

 

小机城 横浜市港北区小机町にあった平山城。15世紀前半に築かれたとされ、戦国時代には北条氏傘下の拠点にもなった。北条氏の滅亡後は長く廃城となっていたが、1977年から「小机城址市民の森」として整備・公開されている。2017年には公益財団法人日本城郭協会によって「続日本100名城」にも選ばれた。 

 

小机を盛り上げたい

 

 「小机に来て、街の魅力を感じてください」

 

 11月4日、竹灯籠まつりに先立って同市の「パシフィコ横浜」で行われた「よこはまの未来の作戦会議」。3年生の子どもたちが英語も交えながら、街の魅力が感じられるオリジナルのパン作りに取り組んでいることなどを発表しました。

 

 

 市内の学校と企業や地域の連携によるキャリア教育「はまっ子未来カンパニープロジェクト」の参加校が活動を発表するイベントに、学校を代表して参加したのです。山中竹春市長も見守る中、街の魅力をPRした熊川さくらさんは、「難しかったけど、最後までやりきれた」と充実感をにじませました。

 

 

 12月には、3年生のアイデアを基に竹灯籠をかたどったパンなど3種の新商品もときわやの店頭に並びました。「みんなで小机の街を盛り上げていきたい」と、小島優正さんも目を輝かせます。大人たちとの学習を通じて地域の歴史や魅力に気付いた子どもたち。小机の未来をつくる頼もしい仲間になってくれるでしょう。

 

 


(2024年2月 9日 12:10)
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