北陸新幹線開業1周年、高校生たち「バクハルフェス」で地域を元気に!

「バクハルフェス」開会で、吉本興業の芸人と軽妙なやり取りをする山本さん(右端)

 国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年の達成期限まで5年となった。17の目標は「平和と公正」が実現しなければ「貧困」「飢餓」がなくならないように、全てがつながっている。目標達成には、より多くの人が、それぞれの立場でアクションを起こし、協力することが欠かせない。石川県小松市では3月16日、北陸新幹線の延伸開業1周年に合わせて「高校生による、高校生のためのフェス」が開かれた。地域の課題解決に取り組む大人たちがサポートした。世代を超えたパートナーシップが「住み続けられるまちづくり」を前進させる。(教育ネットワーク事務局 渡辺嘉久)

 

 

 

 

石川県小松市で開催、まちづくりやパートナーシップ促進

 小松市はあいにくの天気だった。午前10時を少し回った頃、駅の正面から伸びる「れんが花道通り」の特設ステージで、私立小松大谷高2年の山本悠雅(ゆうま)さん、県立小松高2年の谷崎康仁さんがマイクを握った。

 

 山本さん「爆発起こす準備できてますかー」

 谷崎さん「お足元の悪い中、来ていただいて、ありがたいことです」

 山本さん「雨ですけど皆さんの表情、晴れてます。ぴかぴか輝いてます」

 

 二人は同じ中学の同級生だ。この日、本番を迎えた「爆発おこす青春ハイフェス(バクハルフェス)」で、山本さんは実行委員長、谷崎さんは実行委員会本部リーダーを務める。ステージには石川県出身で吉本興業の芸人「ぶんぶんボウル」のふたりが「助っ人」(山本さん)として上がり、掛け合いをリードする。

 

 ――僕らも学園祭やったら行ったことあるけど。

 ――高校生が一から作るってすごいよね。

 谷崎さん「本当にできるんかなと思ったんですけど間に合いました」

 

 続いて高校生スタッフがイベント内容を説明する。

 「ビンゴ大会があります」「カレーライスなどのキッチンカーも出ています」「300円で綿菓子作りを体験できます」「私たちがデザインしたグッズも是非買って下さい」

 

 谷崎さんが開会を宣言し、ステージでは高校生バンドの演奏が始まった。

高校生バンドの演奏に、傘をさした人たちが集まった

 

「自分でやっちゃえ」

 隣接する白山市では、高校生バンドによるロックフェスティバルが開かれている。山本さんは高校1年の時にバンドのメンバーとしてステージに上がった。「運営も楽しそうだな」。高校2年の夏はスタッフとして参加する。

 

 協賛金集め、社会人との交流......「多くの人とつながって『こういうこともあるんだ』と初めて経験することばかりだった」。視野を広げ、成長を促してくれた。「フェスの規模を大きくして関連イベントを小松市で開きたい」

 

 白山市の関係者に相談してみた。開催地で折り合うことはできなかった。「それなら自分でやっちゃえばいい」。12月、バクハルフェスの基になる企画案をまとめた。

 

 山本さんには気になることがあった。「校内のつながりはめっちゃいいのに、他校とはつながっていない。つながればもっと成長できる」。中学時代に生徒会で一緒に活動し、小松高に進んだ谷崎さんに声を掛けた。「手伝ってくれないか」「是非やらせてくれ」。快く引き受けてくれた。

 

 高校生スタッフは小松市だけでなく、加賀市の高校も加えた5校に広がる。総勢20人を超すスタッフを集めた顔合わせの会議は1月に開かれた。北陸新幹線開業1周年に合わせたフェスの開催まで2か月、ぎりぎりのスタートだった。

高校生たちが考えたグッズも好評だった

 

「誰が、いつまでに」

 準備は全てが順調だったわけではない。多くの問題に直面した。支えてくれる大人たちがいた。小松大谷高で生徒の活動をサポートする久保裕介教諭が紹介してくれた「小松をつなげる30人」のメンバーだ。地域の課題解決に挑戦する人材育成と交流を目指し昨年9月、非営利の一般社団法人として発足した。

 

 代表理事の大杉謙太さんは「大人が準備して高校生が参加する、というのでは面白くない。話を聞くと『全部自分たちでやりたい』とのことだった。『それならやりましょう』となった」と言う。高校生には「誰が、いつまでにやるのか」を問い続けた。「聞かれたら答える」という関わり方を徹底した。

 

 開催まで2週間を切った3月3日、高校生スタッフ全員が集まる最後の会議が開かれた。この時点で地元の企業・団体などから寄せられた協賛金は80万円ちょっと。会場の設営、グッズの製作、ビンゴ大会の景品購入など、必要経費として見積もった200万円に遠く及ばない。

 

 「200万円という目標は誰が、どうやって達成するの?」「担当者だけに任せていていいの?」――大杉さんたちは具体的なアクションを求めた。協賛金は最終的に220万円を超えた。「『ここに行ってみれば』と紹介した企業・団体もあったが、飛び込みで集めた件数の多さに驚いた。『高校生を応援したい』という地元の熱意も伝わってきた」。大杉さんはこう話す。課題解決に向けた地域としての取り組みにも手応えを感じたようだ。

綿菓子作りの体験コーナーには親子連れが順番待ちの列をなした

 

「つながり、笑顔に」

 高校生が学校の枠を超えてつながり、思いっ切り楽しむエネルギーで、地域をもっと元気にしたい――バクハルフェスには、こんな思いも込められていた。高校生による、高校生のためのフェスを終えた山本さんに話を聞いた。

 

 「これからも人とつながり、笑顔になってもらえるようなイベントを続けていきたい」

 

 既に次の目標がある。

 

 「小学生や幼稚園の子どもが交流し、音楽を体験できるフェスを開きたい」

 

 開催地は小松市に隣接する能美市を想定する。現地で活動する人ともつながった。「『今年5月ぐらいにできればベストだよね』と話を進めています」

「小松をつなげる30人」の大杉さん(前列左端)らと記念の集合写真を撮影した(3月3日)

 

SDGs

 「Sustainable Development Goals」という英語の頭文字から取った略称。2015年の国連総会で採択された。17の目標を掲げ、全ての国・地域の人々が行動することで「誰ひとり取り残さない」世界の実現を目指す。

 ◆読売新聞教育ネットワークは新聞を通じてSDGs活動を支援していきます◆

(2025年4月 4日 11:00)
TOP