高円宮杯 第74回 全日本中学校英語弁論大会 上位入賞者とスピーチ全文

高円宮杯を受け取る海野さん(18日、東京都千代田区で)=青山謙太郎撮影

 高円宮杯第74回全日本中学校英語弁論大会の決勝大会が2022年11月18日、東京都千代田区のよみうりホールで開かれ、各賞が決まりました。大会は3年ぶりに生徒を東京の会場に集めて実施しました。上位入賞者は以下の方々です。クリックでスピーチ全文をご覧いただけます。(敬称略)

>>大会ウェブサイト

 

上位入賞者

1位 海野 心愛さん(ワールド・ファミリー賞も受賞)

静岡県・静岡大学教育学部附属静岡中学校

「SOGIE(ソジー)」

 

2位 輪島 サマンサ さん

千葉県・流山市立常盤松中学校

「Be Strong(強くなれ)」

 

3位 松田 慈七 さん

山口県・慶進中学校

「A Language Crisis(言語問題)」

 

4位 家坂 鈴穂 さん

群馬県・高崎市立高松中学校

「You've Got a Friend in Me(友情が与えてくれるもの)」

 

5位 渡辺 悠平 さん

福岡県・敬愛中学校

「Doing What We Like Most(ただ、好きなだけ)」

 

6位 美馬 梨杏 さん

大阪府・大阪教育大学附属天王寺中学校

「The Power Within Us, Beyond Magic(内なる力は魔法をも超える)」

 

7位 堀井 瑠偉 さん

石川県・北陸学院中学校

「Changing Our Attitudes Toward Animals(動物に対する私たちの態度に変革を)」

 

1位の海野さんのスピーチを解説

 聴き手のハートをとらえる弁論は何が違うのか。今大会1位の海野さんのスピーチ英文を、東進ハイスクール・東進衛星予備校講師の武藤一也さんに解説してもらった。


 スピーチの本題に入る際に、「what is masculine or feminine?」(男性的、女性的とは何だろう)、「Are there clear criteria?」(それらは明確な基準なのだろうか)、と問いかけることで、聴衆の興味を喚起しています。

 また、その段落ではcisgenderという単語が出てきますが、その単語になじみがない聴衆のことを考慮し、cisgenderの直後に関係詞のwhichを用いて、cisgenderの内容を説明しています。

 さらにcisgenderの対比としてtransgenderを挙げていますが、こちらも直後で説明されており、聴衆の理解を助けています。

 そしてcisgenderとtransgenderを含む新しい言葉として、このスピーチのテーマであるSOGIEを紹介するという、とても聴きやすい構成となっています。

 また、「So, what I want to say is that ~ 」(私が述べたいことは)という表現を用いて自分の意見を述べることで、聴衆がスピーチの流れをつかみやすくなります。その後ろではSOGIE, which ~と、ここでも関係詞のwhichを用いてSOGIEの考え方を「includes everyone, instead of talking about only LGBTQ+ people」(LGBTQ+の人々だけではなく、皆を含む)と説明しています。

 ここまでで、聴衆は海野さんの意見とSOGIEについて理解が深まっているはずです。

 海野さんはスピーチの中で、「The topic of SOGIE is a sensitive issue」(SOGIEというのは慎重に取り扱うべき問題である)と述べ、扱っているテーマが難しい問題であると認め、さらに「I'm sure that LGBTQ+ people also have different opinions.」(LGBTQ+の人々は異なる意見を持っているだろう)と、考え方の多様性も認めています。

 その上で自身の意見を展開しています。こうすることで、自身の考えだけを押し付けるスピーチにならず、とても思いやりにあふれたスピーチになっています。

 スピーチで使われる英語は分かりやすく、なじみのない単語を使っても、直後で平易な英語で言い換えるなど、参考になる点がたくさんあります。また、内容でもSOGIEという言葉を知らなかった人も、海野さんのスピーチがジェンダーについて改めて考えるきっかけになったと思います。

武藤一也(むとう・かずや) 東進ハイスクール・東進衛星予備校講師。英語の音読量と正確さを可視化する日本初のアプリ「音読メーター」開発者。Cambridge CELTA Pass Grade A(ネイティブスピーカーを含む合格者の上位約5%)。英検1級。TOEIC990点満点。著書に「共通テスト 英語リスニングドリル(東進ブックス)」、「イチから鍛える英語長文シリーズ(学研プラス)」など多数。

 

【主催】読売新聞社、日本学生協会基金

【後援】外務省、文部科学省、都道府県教育委員会ほか

【特別協賛】東進ハイスクール・東進衛星予備校

【協賛】日本テレビ放送網、ぺんてる、ワールド・ファミリーほか

 

(2022年12月15日 13:19)
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