高円宮杯 第76回 全日本中学校英語弁論大会 上位入賞者とスピーチ全文

高円宮杯を受け取る伊藤さん(29日、東京都千代田区で)

 高円宮杯第76回全日本中学校英語弁論大会の決勝大会が2024年11月29日、東京都千代田区の有楽町よみうりホールで開かれ、各賞が決まりました。上位入賞者は以下の方々です。クリックでスピーチ全文をご覧いただけます。

>>大会ウェブサイト

 

上位入賞者

1位 ● 伊藤 香一さん《オーストラリア大使館賞も受賞》

北海道・北海道教育大附属札幌中3年

「Hey! Do You Want My Autograph?(やあ!ぼくのサインほしい?)」

 

2位 ● 樋口 恵奈 さん《アイルランド大使館賞も受賞

佐賀・弘学館中3年

「Achieving Peace(平和の実現)」

 

3位 ● 小西 眞由 さん

岡山・岡山理科大附属中3年

「Beyond the Context(社会的・文化的背景を超えて)」

 

4位 ● 上田 怜奈 さん

宮城・仙台育英学園秀光中2年

「Becoming the "Someone Else"(だれかの「誰か」)」

 

5位 ● 安田 陸 さん

兵庫・芦屋市立山手中3年

「The Unknown Heroes(知られざるヒーローたち)」

 

6位 ● 駒澤 杏梨 さん

山形・天童市立第四中3年

「Identity Crisis(アイデンティティのゆらぎ)」

 

7位 ● 川口 祐寛 さん

山形・山形市立第三中3年

「Stereotypes(ステレオタイプ)」

 

ワールド・ファミリー賞 ● 髙根 唯花 さん

大分・別府市立青山中3年

「Facing a New Path(夢に向かって)」

 

大会1位の伊藤香一さんのスピーチを東進ハイスクール英語科講師の安河内哲也さんが解説

◆統計から突然体験談 見事な構成

 伊藤さんのスピーチは、背伸びをしていない、中学生らしい内容です。常に聴衆を意識しながら、落ち着いた調子で自分の体験、失敗から学んだことを伝えています。

 構成は見事です。冒頭、アメリカの統計を引用し、ゲームやSNSの普及によって、自信を持てず、挑戦を避ける傾向の若者が増えていることに触れます。「難しい話が続くのかな」と思わせたところで、突然、「小学校時代、毎年、演劇に出されるのがいやだった」と自分の体験を語り出します。この対比が素晴らしい。

 6年生の時、プロの演劇を見て感動したのをきっかけに、校内オーディションに挑戦して合格。その後、人前で歌ったり、スピーチコンテストに出たりと、積極的に挑戦をするようになります。その一方で、調子に乗って、合唱の指揮者に選ばれたのに練習不足で失敗した経験も話します。

 使われている英語は平易ですが、ここで「smug(うぬぼれる)」という難しい単語を使います。しかし、スピーチの中では、I was completely smug, which means being overconfident and a bit arrogant,(私は完全にうぬぼれていた、つまり自信過剰で少し尊大だった)と、別の表現で言い換えて聴衆の理解を助けています。

 失敗も含めて自分自身をさらけ出しながら、同時にリアルな体験から学ぶことの大切さを訴えたスピーチは、最後に、So, ... take a chance - choose a role with more lines - sing in front of the class - get off your video game - close your TikTok ... and ... gain confidence.(チャンスをつかめ‐セリフの多い役を選べ‐クラスの前で歌え‐テレビゲームをやめろ‐TikTokを閉じろ...。そして...自信を持て)と命令形でたたみかけます。これはアメリカの大統領なども演説で使う技術です。盛り上げた直後、By the way, do you want my autograph? Oh sorry! I was getting smug!(ところで、僕のサインが欲しい? あ、ごめん! うぬぼれてました!)と、あえて失敗してみせるジョークでオチを付けました。

 私はこれまで多くの英語スピーチの審査をしてきました。AI(人工知能)が普及した現在、素晴らしい英語表現や文章はAIでいくらでも作れます。だからこそ、語り手のパッション(情熱)、それを伝える力が大事になります。伊藤さんのスピーチは、その点からも聴衆に気持ちが伝わる素晴らしいものでした。今回、大会に参加したすべての中学生の皆さん、これからも英語スピーチを続けていってください。

安河内哲也(やすこうち・てつや) 東進ハイスクール・東進ビジネススクール英語科講師。一般財団法人実用英語推進機構代表理事。話せる英語、使える英語を教えることを重視し、予備校や大学のほか、企業や教育委員会の研修でも講師を務める。

【主催】読売新聞社、日本学生協会基金

【後援】外務省、文部科学省、都道府県教育委員会ほか

【特別協賛】東進ハイスクール・東進衛星予備校

【協賛】日本テレビ放送網、ぺんてる、ワールド・ファミリーほか

【協力】帝国ホテルほか

(2024年12月10日 10:30)
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