新聞活用学習(NIE=Newspaper In Education)について小中高校の先生や学校司書らが学び合う第10回「よみうりNIE交流会」が11月27日、開かれた。読売新聞東京本社に来場した参加者と、オンライン参加者を結ぶハイブリッド方式で行われ、16人が新聞社における編成部の役割についての講演や、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の実践発表に耳を傾けた。
講演「編成記者のシゴト ~伝える 伝わる あなたのニュース~」
▽石橋大祐・読売新聞教育ネットワーク事務局主任
編成部というのは記事を紙面に割り付け、新聞の形に組み上げる部署だ。編成記者として約10年間、さらに人事部の採用担当として大学生たちと接するなかで、「どうすれば伝わるか?」ということを考え続けてきた。
新聞には、読者(社会)への影響を一番に伝えるという役割がある。例えば人気アイドルグループの解散というニュースがあったとして、それを一面に載せるべきだろうか。新聞には歴史を記録するという側面がある。アイドルグループの人気がどんなにすごくても、100年後の読者がびっくりするか、という視点で考えれば、答えは明らかだろう。
(1)ニュースの価値を判断する、(2)紙面をレイアウトする、(3)見出しを考える――のが編成記者の仕事だ。締め切りに追われながら、3つを同時進行でこなさなければならない。見出しを考えるという行為は、ニュースの本質は何か、と考えることだ。「記事を書いた人が見出しをつけるのが一番早くないですか?」と疑問を持つかもしれないが、記事を書いた本人はわかり過ぎていたり、わかったつもりになっていたりしていることが往々にしてある。第三者である読者にわかりやすく伝えるには、主観でなく客観、第三者の目でニュースを理解することが重要だ。そこに編成記者の存在意義がある。
いまはSNSでだれもが情報を発信できる時代だ。そんな中、ニュースを発信する新聞には、社会共通の「常識」を作ることが求められている。大切なのは「何を伝えるか」よりも「誰が伝えるか」だ。たくさんの人に取材をし、チェック作業を重ねてから紙面にする新聞の武器は「信頼」であり、今後もニュースの「発信源」であり続けるだろう。
SDGs実践発表「無理なく楽しい♪SDGs授業」
▽材木優佳・東京都国分寺市立第5小学校主任教諭
5年生の担任を務めており、総合的な学習の時間を使って「共に生き、幸せにくらすために ~優しさや思いやりの輪を広げよう~」という単元名で授業を行った。SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」を意識した。
児童たちは3年生で聴覚障害、4年生で視覚障害について学んだ。しかし、障害者は一方的に助け、支える存在と考えている子が多いのが気になっていた。そこで、まず夏休みに、身近な「手を貸したい人」を見付ける課題を出し、「じぶんごと」として問題意識が持てるよう準備した。
2学期に入り、脳性麻痺のある方を学校に招き、お話をうかがった。「私にとって脳性麻痺のあることは当たり前。『障害者は大変なんだ』という意識を取っ払ってほしい」という発言に、児童たちは衝撃を受けていた。視覚障害のある方のお話もうかがい、ブラインドテニスも体験した。その上で、図書資料や、タブレットを使ってインターネット上の情報も調べ、自分にできることを考えた。週1回のNIEタイムでは、SDGsの17の目標からテーマを決め、新聞の切り抜き作品づくりにも取り組んだ。
子どもたちはトイレの位置を紹介する点字付きポスターを校内に掲示したり、「福祉ってなんだろう」と題したリーフレットを作ったりした。学習のまとめを学校のブログに載せ、地元のスウェーデン留学生との交流を予定している。
障害のある方たちへの児童の意識は変わり、SDGsへの関心も高まった。一方で、校内に収まった活動になってしまったこと、個人情報保護の観点や新型コロナの対策予防対策などで活動が制限されてしまったことが課題として残った。
NIEのねたのたね
▽田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザー
今月も授業で活用できそうな記事を紹介したい。
11月4日の読売新聞都民版に掲載された「保育園で買える夕食」の記事。東京都小平市の認可保育園が、地元スーパーの手作り弁当を園内で保護者向けに販売する取り組みをしているという。夕食を準備する保護者の負担を軽減するだけでなく、店側の食材廃棄の解消にもつながっており、フードロスを考えるSDGsの授業で扱えるのではないか。参考にしてほしい。
※次回の交流会は1月22日(土)に開催します。詳細は後日、このウェブサイトでお知らせします。