第71回全国小・中学校作文コンクールの中央審査で各賞が決定しました。文部科学大臣賞3点を要約して紹介します。作品の全文は、要約の下の「全文を読む」をクリックしてご覧いただけます。(敬称略)
<小学校低学年>
「アリにおしえてもらったこと」
兵庫県姫路市立安室東小1年 山下鼓都(やました・こと)
わたしは、生きものにきょうみがあります。あさには、しゅうごうばしょの公えんで虫さがしをします。ある日、小さなアリが自分のあたまくらいのエサをくわえてあるいていました。はんたいからきたアリと出あうと少しのあいだむかいあって立ちどまり、はんたいからきたアリはエサをもったアリがやってきたほうへあるいていきました。
「アリってなかまとなにかしゃべってるで。大きなエサもどこまではこぶんやろ」と、おかあさんにはなすと、「アリはかしこくておもしろいで」と、いっしょにネットでアリについてしらべてくれました。アリがすをつくるようすをかんさつできるキットをみつけ、かってもらいました。
とうめいなケースにちゃいろと白いろの土が2そうに分かれて入っていて、アリがほり出した土がよくわかるようになっていました。ケースの上にはエサおきばがついています。はたらきアリをあつめることにしました。おじいちゃんのいえの石がきでアリのぎょうれつを見つけました。花だんの土のあいたあなに入っていったのです。
「す、はっけん!」。あなのそばにさとうをいれたエサおきばをセットし、まちました。1ぴきが中に入り、さとうにたどりつくと、しばらくあじわったあと、すにもどります。10ぴきくらいが一せいに出てきて、エサおきばへつきすすみました。「さいしょのアリがエサのことをおしえてあげたんだな」と、かんがえました。30ぴきくらいをケースにあつめましたが、5、6ぴきのときには、すをつくらなかったのに、15ひき、20ぴきとふやしていくと、ガンガンほりはじめるアリがあらわれたのです。くっついてほるアリがつづき、さまよっていたアリがはなれたところでチマチマとほり出しました。
「自分からがんばるのが2、3びき、ついていくのが15ひき、『ちょっとはほらなきまずいなぁ』てのが7、8ひき、みんなががんばっててもがんばらないのがのこりやな」「人げんもにてるな」。わたしとおかあさんは大わらいしました。わたしはどのアリといっしょかなと思いました。
20日たったころ、じけんがおきました。しんでしまうアリをくわえてすの中へひきずりこむアリがいたのです。なんびきかのアリがあつまって、しんだアリにかみつきました。しんだなかまのからだもむだにしない。たくましいなとおもいました。あたらしいことにちょうせんするとき、ピンチのとき、おもいだすことにしました。自分にできることを一生けんめいやりつづける。アリは、わたしの小さなせんぱいになりました。(指導・鎌谷紗里教諭)
わたしは、生きものにきょうみがあります。しぜんの生きものがテーマのテレビはいつもろくがして見ていて、がっこうからのかえりみちにトンボやカニ、タニシなどを見つけるとうれしくなります。
あさには、しゅうごうばしょの公えんで虫さがしをします。ある日、小さなアリが自分のあたまくらいのエサをくわえてあるいていました。はんたいからきたアリと出あうと少しのあいだむかいあって立ちどまり、はんたいからきたアリはエサをもったアリがやってきたほうへ早あしであるいていきました。いえにかえってから、
「アリってなかまとなにかしゃべってるで。大きなエサもどこまではこぶんやろ。」
と、おかあさんにはなすと、
「アリはかしこくてなかなかおもしろいで。」
と、いっしょにネットでアリについてしらべてくれました。そこで『アリのすハウス』という自分でつかまえたアリがすをつくるようすをかんさつできるキットをみつけ、わたしは、やってみたいとたのんでかってもらいました。
キットは、うすいとうめいなケースにちゃいろと白いろの土が二そうに分かれて入っていて、アリがほり出した土がよくわかるようになっていました。ケースの上にはとりはずしができるエサおきばがついていて、それをおとりにしてアリをあつめます。早くつかまえにいきたいきもちでしたが、せつめいしょでまずはよしゅうです。たまごをうむまえの女王アリをつかまえることができると、一ぴきから大きなすをつくることができるのだそうですが、これはとてもむずかしいのでコツコツはたらきアリをあつめることにしました。ところがアリのしゅるいもすをつくるものとつくらないものがあったり、おなじすのなかまでないとじょうずにすをつくらないことがわかりました。
「これはたいへんなことになったぞ。」
となりのあきちや公えん、じんじゃでアリをさがしてみましたが、小さすぎたり一ぴきでくらすしゅるいだったりなかなかうまくいきません。ついにおじいちゃんのいえの石がきでアリのぎょうれつを見つけました。それをたどっていくと、花だんの土のあいたあなに入っていったのです。
「す、はっけん!」
わたしは、あなのそばにさとうをいれたおとりのエサおきばをセットし、二十分くらいまちました。まわりをウロウロしていた一ぴきがやっと中に入りさとうにたどりつくと、しばらくあじわったあとすにもどります。すると、すのなかから十ぴきくらいのアリが一せいに出てきてまよわずにエサおきばへつきすすみ、それからはこうたいでいったりきたりしていました。わたしは、
「さいしょのアリが中のアリにエサのことをおしえてあげたんだな。」
と、かんがえました。エサおきばのとをときどきしめて、つかまえたアリを『アリのすキット』のケースにふりおとしていきました。
ぜんぶで三十ぴきくらいのアリをケースにあつめましたが、そのとちゅうでおもしろいことにきづきました。
はじめ五、六ぴきのときには土の上をさまよってばかりですをつくらなかったのに、十五ひき、二十ぴきとふやしていくと、その中にガンガンほりはじめるアリがあらわれたのです。そしたら、そのアリにくっついていっしょにほるアリがつづき、それを見ていままでさまよっていたアリがはなれたところでゆっくりチマチマとほり出しました。
「自分からすごいがんばるアリが二、三びき、ついていくアリが十五ひき、『ついていけんけどちょっとはほらなきまずいなぁ。』てアリが七、八ひき、みんなががんばっててもやっぱりがんばらないアリがあとのこり、やな。」
「人げんもにてるな。」
「これが、しゃかいやなぁ。」
わたしとおかあさんは大わらいしました。いっぱいわらったあと、わたしはどのアリといっしょかなとおもいました。まっすぐつきすすむアリはすごいけど、きまずそうにちょっとだけがんばるアリもこころがあるかんじで、わたしはすきです。
いちどはじめるとすのみちはあみめみたいにのびて、白い土の上に下がわのちゃいろの土がほり出されてどんどんつまれていきます。四日目にはケース全たいにみちがびっしりひろがりました。あいかわらずへやでなまけるアリがいたので、「なんてやつだ。」としらべてみると、ほかのはたらきアリがよわってピンチのときにかつやくするのだそうです。じつはヒーローだったとしっておどろきました。ほかにも、エサを自分のおなかにパンパンにつめこんで、出あったアリに口うつしで分けてあげるおせわがかりがいたり、大きなつぶをアゴでくわえて土をほりつづけるだいくさんがいたり、それぞれのアリにとくいなやくわりがあることがわかりました。
じっけんもしました。しんだハエを土の上へのせておくと、きづけばいつのまにかなくなっていました。みんなでたべたのだとおもいます。えいようのあるほかのどうぶつをたべる、にくしょくでもあるのです。生きたダンゴムシはどうかなと入れてみると、ダンゴムシは、いそいでにげて、土の中にもぐってまるまってしまいました。
二十日たったころ、へいわなアリのすにじけんがおきました。なかまの中でしんでしまうアリがいたのですが、そのアリをくわえてすの中へひきずりこむアリがいたのです。
「おはかをつくるのかな。」
とおもって見ていると、ほかのみちからなんびきかのアリがあつまってきてしんだアリにかみつきました。
「ひえぇ。ともぐいや⋯。」
わたしは、こわくなりました。でも、わたしのよこでおかあさんは、
「生きるってすごい。」
と目をキラキラさせてかんしんしていました。
かんがえてみれば、このアリたちはとつぜんちがうばしょにつれてこられたのに、へこたれずにすぐにあたらしいいばしょをつくりはじめました。女王アリがいなくても、自分のやくめを一生けんめいつづけています。そして、しんだなかまのからだも生きるためにむだにしないのだとおもいました。たくましいな、とおもいました。わたしはこれから、あたらしいことにちょうせんするとき、ピンチのとき、このアリのすがたをおもいだすことにしました。そして、おちついてまわりのみんなと力をあわせ、かっこわるくても自分にできることを一生けんめいやりつづけられる人になりたいです。
アリは、わたしの小さなせんぱいになりました。
◆虫に対する思いの深さ
【講評】山下さんの虫に対する思いの深さに驚かされます。アリを観察し、「アリってなかまとなにかしゃべってるで」とすごい発見をします。そして、アリの生態を調べるために「アリのすハウス」を作ります。その行動力にも驚かされます。これからもたくさんの虫と出会い、大きく成長していく姿が目に浮かびます。(新藤久典)
(2021年12月10日 12:00)