やあ、こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤク先生だよ。きょうは、親子で一緒に新聞記事から問題を作る「親子ワークシート」作りの取り組みを紹介するね。子どもと家族の会話がはずみ、読み取る力もつくようだよ。
ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。
子どもたちが取り組んだ親子ワークシート(味真野小で) |
●越前市立味真野小(福井県)
クラスで問題にチャレンジ
今回、お邪魔したのは、福井県中部にある越前市立味真野(あじまの)小学校。今年度の4、5年生は、興味のある新聞記事を紙に貼って、その記事から親子で問題を考える「親子ワークシート」作りに月1回ぐらいのペースで取り組んでいるんだ。友達が考えたワークシートも、2週間に1回くらいのペースで先生がピックアップして宿題として出し、子どもたちが解いてくる。昨年12月半ば、5年1組の朝の会に行くと、友達が作り、さらに答えを考えてくるよう宿題で出されたワークシート1枚を、担任の庭本和美先生が紹介していた。3~5人のグループごとに分かれ、みんなはそれぞれ考えてきた答えを発表し合っていたよ。
子どもたちが提出した親子ワークシートの一部を紹介する庭本先生 |
人によって見方が違うことを知る
5年2組では、地元でとれた食材を生かした給食メニューを競う「全国学校給食甲子園」に出場する栄養教諭や調理師の声を取り上げた記事が配られていた。「福井のおいしい食材をPRし、優勝を目指したい」っていう内容で、ワークシートの問題の一つは「あなただったら給食で、福井の何をアピールしますか」。
子どもたちは、「新しくできた福井のお米『いちほまれ』を知ってほしい」「福井では当たり前のすこ(里芋の茎の酢漬け)を全国の人にも食べてほしい」などと、みんな自分の考えをしっかり友達に伝えていたよ。庭本先生は「人によって見方が違うことを感じながら、自分の考えを表現する力が付いてきているようです」と話していたよ。
答えが書かれた親子ワークシート。発表だけでなく、回し読みすることも |
答えが1つじゃない問題
5年生がシートに取り組むようになったのは昨年から。教頭の無量小路(むりょうこうじ)宗洋先生が別の小学校で始めて、味真野小でも行うことになったんだって。シートには工夫があって、1問目は自分で、2問目は親子で問題を作るんだけど、3問目は「答えが一つではない問題」を作るのがルール。特に、この3問目は大人の発想だとなかなか出て来ない問題が見られるんだって。オオハクチョウが飛来した記事を取り上げた子は、「オオハクチョウが私たちの地域にも来てくれるようにするにはどんなことを心がけたらいいでしょう」という問題を作っていた。確かに、子どもならではの柔らかさや広がりのようなものを感じる温かい問題だね。だから、無量小路先生は「親子がどんなコミュニケーションを取ったのか、頭に浮かんでくる」とわくわくしているんだって。家庭のよさが生かされたNIEでもあるんだね。
階段に貼られた5年生の親子ワークシート。いろいろな記事の多くの答えを読み比べできる |
先生の負担が少ない
NIEに取り組んだことがなかった先生にも好評なんだ。だって、基本的に準備はシートを印刷する程度。あとは朝の会で10分ほど発表の時間を作るだけだから、庭本先生も「負担感は少ない」と言ってるよ。先生が忙しすぎることが問題になっているけど、このシートだったら気軽に取り組めそうだね。
親子ワークシートの答えを発表し合う5年2組の子どもたち |
友達の作った問題だから飽きない
みんなが解いたシートは、教室の後ろにクリアファイルにはさんで貼り出されるよ。別のグループの答えを、自分の好きな時に見られるようにするためなんだって。教室以外でも、例えば階段の踊り場には4、5年生のシートが貼られていて、立ち止まってみている子も多いようだよ。友達が作った問題だから、子どもたちは楽しみながら飽きずに関心を持つんだって。
これまでに取り組んだ親子ワークシート。クリアファイルに入れられ、教室の後ろに掲示。だれでも取り出して友達の答えを読める |
無量小路宗洋先生
親子で一緒に問題を考える「親子ワークシート」には、親子で工夫した様子が見て取れ、会話の様子が目に浮かんでくるのが楽しみ。深く読み込む力が付く効果があり、継続すれば、読解力や表現力、思考力も向上していくはずです。シートをきっかけに、子どもたちには社会への視野を広げていってほしいです。
子どもと家族、学校がつながる取り組みだね。好きな子がどんな記事を選んで、どんな問題を作るか、気になるよね
(文と写真 福井支局・有留貴博記者)
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