大学トップレベルのランナーたちがたすきをつなぐ箱根駅伝。お正月の国民的イベントして親しまれている大会は今年100回目の記念大会を迎えました。コロナも明けた節目の大会。テレビでのんびり見るのもいいものですが、せっかくなので、選手やファンたちの熱気を肌で感じたい。ということで、2日間、選手を電車で追いかけてみることにしました。
(慶應義塾大学・渋谷真由、写真も)
トップランナーを追う、分刻みのスケジュール
1月2日午前8時に東京・大手町をスタートし、芦ノ湖までを駆け抜ける初日。各区秒単位でしのぎをけずる大会だけあって、インターネットでも、各区を見るための移動手段などの情報がファンによって公開されています。
実は昨年も同じ企画にチャレンジしてみたのですが、各交通機関の遅延などもあり、私にとっては、「リベンジ」をかけた100回大会です。
午前7時、スタート地点の読売新聞東京本社前(東京・大手町)に到着。5時起きで駆けつけたのですが、すでに応援の学生たちがあふれ返っています。キャンパス・スコープの会議で普段訪れているときの雰囲気とは違った熱気に驚きながらも、応援の太鼓の音に胸が高まります。午前8時、スタートの号砲と共に選手たちがスタートするのを見届けると、まずは東京駅に移動し、8時19分発の横須賀線に乗りました。
保土ケ谷駅で降り、1-2分ほど歩いて観戦ポイントへ。余裕を持って30分ほど前に着くことができましたが、沿道には多くの人が詰めかけています。「コロナ前よりも人が増えているね」。毎年観戦しているという夫婦が話してくれました。駒澤大学を先頭に、次々と駆け抜けていく選手たち。私も息つく暇もなく藤沢に向かいます。
10時18分、予定通り藤沢駅に着くことができましたが、残念ながらトップには間に合いませんでした。目の前を次々と駆け抜けていく選手たち。テレビで見るのとは違って、長距離ランナーたちの「スピード」を実感できるのは現地観戦ならでは。ファンの「頑張れ~!」の声もひと際大きく感じることができ、選手と観客の距離が近い、アットホームな雰囲気を楽しめました。今度は大磯駅を目指します。
「元気をもらった」「母校への愛」沿道から思いのせ
移動は順調でしたが、少しずつ雨が降り始めました。東海道線も少し遅れ気味です。車内ではスマホで中継を見ている人も多く、レース展開についての会話がそこかしこで交わされます。4区・大磯に着くころには本格的な雨が降り始め、傘を差しての応援となりましたが、駅から徒歩2分と近く、バッチリ選手たちを見ることができました。
いよいよ「リベンジ」の5区。箱根登山鉄道の風祭駅に移動します。去年は間に合いませんでしたが、今年は大磯を少し早めに出たことに加え、移動の車両も改札に近い位置を選ぶなどの工夫が実り、何とか後続の選手たちを見届けることができました。残念だったのは天気。雨も本降りの中、写真を撮るのも一苦労です。そんな中、「1秒しぼれ!」。山登りの5区ということもあり、監督たちの声を直接聞くことができ、私も改めて身が引き締まる思いを感じました。
寒さが強まる中、配られた甘酒も体に染みわたります。小田原中継所の、襷渡しがバッチリ見れる場所で観戦していた夫婦は、長野県からの「遠征組」です。昨日から泊まり込み、朝9時、約3時間前から場所取りをしていたそうです。「母校を応援して毎年元気をもらっています」と、笑顔で話してくれました。
「分刻み」のスケジュールの中、なるべく多くのファンに話を聞こうと心がけました。皆さんが口々に話していたのは、「選手の姿に元気をもらえる」「励まされる」ということ。スポーツ大会にとどまらない、箱根駅伝が持つパワーを実感しました。「駅伝好きが高じてマラソンを始めた」という人や、「運動は得意ではないけれど、箱根駅伝は見たい」という人もいました。月並みかもしれませんが、人々の心を揺さぶる力を感じます。母校愛、絆、目まぐるしい順位変動、美しい景色――。沿道に集まったファンにとっての魅力は様々でした。あいにくの雨というコンディションにも関わらず、多くの人が声援を送っていたのは、その「魅力」のなせる業といえるでしょう。
必死に走る選手の眼差し、額にひかる汗、監督からの檄、沿道の人々の思い。現地でしか味わえない感動は、テレビで見ているだけでは得られないものでした。スタートから小田原までの密着で感じた箱根駅伝の活気。復路はどんな展開が待っているのか。期待に胸を膨らませながら、3日も現地で選手を応援したいと思います。