【復路】箱根駅伝を電車で追いかけてみた ~ 人の心を襷がつなぐ

 大学トップレベルのランナーたちがたすきをつなぐ箱根駅伝。お正月の国民的イベントして親しまれている大会は今年100回目の記念大会を迎えました。コロナも明けた節目の大会。テレビでのんびり見るのもいいものですが、せっかくなので、選手やファンたちの熱気を肌で感じたい。ということで、2日間、選手を電車で追いかけてみることにしました。

(慶應義塾大学・渋谷真由、写真も)

 

 【往路】箱根駅伝を電車で追いかけてみた

 

「追っかけ」も体力勝負

 

 雨の往路から一夜明けた復路の6区は、箱根湯本の商店街で観戦です。

 

 「山下り」の勢いそのままに、あっという間に駆け抜けていく選手たち。お店の皆さんもファンと一緒に声援を贈る姿が印象的でした。温泉街ということもあり、泊まり込みでの観戦組が目立ちます。毎年沿道で母校を応援しているという夫婦は、「声を上げることができなかったコロナ禍に比べて、商店街も賑わっている。大学駅伝の集大成だから、盛り上げてあげたい」と話してくれました。

 

 

 大磯に向かう箱根登山鉄道の車窓からも、力走する選手たちの姿が見えます。電車のダイヤ上、7区の滞在時間は15分足らず。「大磯は厳しいかもしれないね」。私と同じように電車で追いかけているファンたちの会話が耳に入ります。今年の目標は「全区間を見届ける」こと。選手を電車で追い越す瞬間、少し申し訳ない気持ちを感じながら、先を急ぎます。

 

 

 9時50分に大磯駅に到着。10時4分には次の電車に乗らなければなりません。駅から観戦ポイントまでの往復は、基本的に小走り。体力勝負であることを痛感します。なんとか先頭で駆け抜けた青山学院大の選手と、猛追する駒澤大の選手の必死な姿を見届け、中継所を後にします。前日は雨で写真を撮るのも一苦労でしたが、2人の姿もカメラに収めることができました。

 

 

 藤沢駅には10時20分に到着。8区の観戦ポイントは、駅徒歩10分程の、15キロ給水地点の近くです。

 

 「頑張れ!」。ゼッケンをつけた給水係の選手がそれぞれに声を掛けながら「力水」を手渡します。箱根駅伝というと、力走する選手たちにスポットが当たりがちです。支える大学生たちも、それぞれに闘っているのだ、と実感します。見ている私の方も、「頑張れ!」と叫びたくなるような風景でした。

 

多くの人に支えられた大舞台

 

 9区に入っても、レースの方は青山学院大の快走が続きます。11時29分に保土ケ谷駅に着きましたが、既に2位の駒澤大まで通過してしまっていました。もちろん、襷をつなぐ各校の選手たちの奮闘や、ファンの熱気は変わりません。

 

 お昼時ということもあり、沿道では往路よりも多くの人が見守ります。商店街のモニターでレース展開をチェックする熱心なファンもいます。そろそろシード権争いも気になる区間。「厳しいね」「もう少しなんだけどな」。母校や注目校の順位について笑顔で言葉を交わします。襷は見知らぬ人の心もつなぐのだ、と感じました。

 

 

 最終10区は大手町でゴールを見届けたいところですが、かなりの人出が予想されるため断念。田町駅付近での観戦を目指します。乗車予定の横須賀線が少し遅れ気味なのに焦りながら、先を急ぎました。

 

 12時45分に田町駅に到着。考えてみれば、スタート以来、ビル街を背に走る選手を見るのは久しぶりでした。駅からの歩道橋や、反対側の道路にも多くの観客が詰めかけています。選手を見せてあげようと、子どもを肩車するお父さんの姿も見えます。「がんばれ!」。国民的イベントに臨む選手たちを間近で見たことは、何よりの思い出になったでしょう。人でごった返す沿道を見ると、やはり大手町のゴールは諦めて正解だったのかもしれません。全大学の通過を見届け、一足先に私の箱根駅伝観戦は幕を閉じました。

 

 

 

 2日間、大きなトラブルもなく全区間を生で見届けることができました。「頑張っている姿に励まされる」「沿道の熱気がたまらない」。2日間で言葉を交わした40人近いファンたちは、口々に「箱根」の魅力を話してくれました。中には、「毎年違う場所で観戦をしている」という人もいました。今回全区間を見届けてみて、場所によって雰囲気や活気が少しずつ異なることを肌で感じることができました。「今度は違う場所で見てみようかな」。早くも来年への楽しみが生まれてきます。

 

 

 

 当然ですが、選手の力だけでは大会は運営できません。多くの人が詰めかける沿道には、事故が起きないように気を配る多くの走路員たちの姿がありました。10区では、多くの観客たちが走路に出ないよう、そっと手を広げて制止する女性の姿が特に心に残りました。改めて、駅伝とは多くの人の思いを乗せた襷をトップランナーたちがつないでいく競技なのだと思います。コロナ明け、100回記念――。沿道に詰めかけた人の思いはそれぞれでしょう。節目の大会に臨み、自分自身とも戦いながら必死に走る選手たちの思いが共鳴し、素晴らしい大会になったのだと思います。準体育会で活動する私自身、多くの人への感謝を忘れずに、打ち込んでいこうと気持ちを新たにしました。

 

 【往路】箱根駅伝を電車で追いかけてみた

 

(2024年1月 3日 22:00)
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