東京都八王子市の館ヶ丘団地は、住民の6割近くがお年寄りという大規模団地です。ここで近くにキャンパスがある拓殖大学の学生たちが、お年寄りの新型コロナウイルスワクチンの接種予約を代行する地元自治会の活動にボランティアで参加しています。背景には、学生と住民の日常的な交流を通じた"絆"があるようです。(埼玉大学3年・佐藤道隆)
アクリル板越しの「ありがとう」
活動に参加しているのは、同大国際学部3年の岡部優里奈さん、宗形颯人(はやと)さんと2年の松村杏美(あみ)さんの3人です。自治会の集会所にやって来たお年寄りから、アクリル板越しに本人の生年月日、接種を希望する日時や場所などを聞き出し、スマートフォンを操作しながら市のウェブサイトに必要な情報を入力して予約を完了させます。
3人は授業の合間を縫って5月以降これまでに計4日間活動し、約60人の予約を代行しました。予約をしてあげた70歳代の女性は「助かるわ、ありがとう」と、とても喜んでいたそうです。
「私たちにとって当たり前のスマホ操作も、不慣れなお年寄りには想像以上に難しいようだった。少しは役に立ててうれしい」と、岡部さんは話します。「直接感謝の言葉をもらえるのがうれしい」と宗形さん。松村さんは「緊急事態宣言でなかなか人に会えない中、対面での活動にやりがいを感じている」と話してくれました。
ネット予約の「助っ人」に
自治会によると、住民約3000人のうち65歳以上のお年寄りは約1700人を占め、高齢化率は6割近くに達します。独り暮らしのお年寄りも多いとのことです。
4月から市が高齢者を対象に接種の予約受け付けを始めると、お年寄りから自治会に「市に電話をしたけどつながらない」「ネット予約は不安だ」という声が次々と届きました。
自治会有志からなる「ちょこっと生活応援隊」がネット予約の代行を開始したところ、住民から申し込みが殺到し出しました。
驚いた自治会役員の塚田賢一さん(69)は、団地内で社会調査を続けている岡部さんら藍澤淑雄教授のゼミ生たちを思い出し、「助っ人を頼めないだろうか」と連絡。突然の依頼にも関わらず、岡部さんらは「日頃から住民の役に立ちたいと思っていた。是非やらせてください」と、その翌日から活動に参加しました。
高齢化率6割 課題解決に協力
藍澤ゼミでは2019年から団地生活の向上を目的に調査を行い、このコロナ下でも自治会と週に1、2回、オンラインでミーティングを開きながら課題解決に取り組んでいます。ワクチン接種予約も、お年寄りの多い団地ならではの課題。岡部さんは「今回の活動を通してお年寄りが何に困っているか、具体的に実感できた。この経験を今後に生かしたい」と話しています。
ワクチン接種の予約代行で活躍する松村さん、岡部さん、宗形さん(左から) |
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